大人のシール帳ブームはなぜ起きたのか

大人のシール帳を店頭やSNSで目にする機会は、ここ1〜2年ではっきり増えました。メーカー取材では、2024年夏ごろからSNS経由で浸透し、2025年に入ってシール帳の披露やシール交換の動画が一気に増えたとされ、2026年には販売見合わせや入場予約制のイベントまで出ています。つまり、少なくとも一部のシール文化は、単なる思い出話ではなく、現在進行形の消費現象として可視化されています。

ただ、この現象を平成レトロだから流行ったとだけ説明すると、なぜ今の大人が買い、なぜ交換会が成立し、なぜ収納やバインダーまで売れ、なぜSNSで広がる一方で手で触れる行為が大事にされているのかが薄くなります。現行商品を見ると、シールは330〜605円前後、バインダーは770〜1320円前後が多く、百円ショップには収納リフィルまでそろっています。参加のしやすさと、ページ単位で区切れる小さな収集が、生活のなかに入り込みやすいのです。

本記事の結論はこうです。大人のシール帳ブームは、懐かしさだけで起きたのではありません。低価格で始めやすいこと、集める範囲を小さく管理できること、貼る・並べる・眺める・交換する楽しみが重なっていること、そしてそのアナログな遊びがSNSによって発見・展示・共有されていることが、現在の生活条件と噛み合っています。公開情報からは、それが小さな自己決定や扱い切れる所有を回復する器として機能している可能性が読み取れます。

大人のシール帳ブームは、懐かしさだけでは説明できない

大人のシール帳ブームは、平成女児文化の再燃という入口を持ちながら、それだけでは説明しきれない複合現象です。2024年3月発売のボンボンドロップシールは、2025年末時点で累計出荷1500万枚、月200万枚出荷でも需要に追いつかないと報じられました。販売の中心は子ども向け想定だった一方、需要を押し上げたのはかつてシール集めに熱中した大人たちだと、製造元への取材で説明されています。

ブームの存在を示す根拠は、SNS投稿だけではありません。ロフトは2026年2月、全国的な品薄と混雑防止を理由に、関連3シリーズの販売見合わせを発表しました。また、マリモクラフトは2026年1月に大丸梅田店でシールフェスを開催し、全日程を事前予約制にしています。これは、市場全体の規模を示す統計ではないものの、少なくとも複数の小売・イベント現場で需要対応が必要になっていたことを示します。

売場の広がりも無視できません。2026年7月時点で、ロフトネットストアの「シール・ステッカー・シール帳」カテゴリには2703件が掲載され、「大人のシール帳」や各種バインダーが並んでいます。カミオジャパンの公式ショップでも、シール・スタンプ・デコのカテゴリに269件があり、「大人のシール帳リング」「大人のシール収納」「平成ファンシー」関連商品が並列しています。売場は子ども向け文具の一角だけでなく、収納・見せ方・復刻感を含むジャンルに拡張しています。

検索面でも、補助的な指標は上向きです。LINEヤフーのDS.INSIGHTを用いた分析では、「シール」「シール帳」への検索は2024年後半から2025年にかけて伸び、「シール帳」は2025年7月に前月比約3.7倍に達したと報告されています。VALUESの行動ログ分析でも、2025年10月に「シール帳」「シール交換」関連の検索人数が前月比で大きく増えたとされています。これらは全国推計市場ではありませんが、少なくとも関心の可視化は進んでいました。

ここで重要なのは、SNSで頻繁に見かけることと、社会全体で多数派になっていることは同じではない、という点です。また、平成女児文化への懐かしさと、過去への単純な回帰は同じではない、商品の単価が低いことと、趣味全体の支出が少ないことは同じではない、デジタル疲れと、SNSを使わなくなることは同じではない、行動から推測できる意味と、本人が実際に語っている動機は同じではない、という五つの整理も必要です。以下では、その区別を保ったまま理由を見ていきます。

ブームを支える要素確認すべき行動・データ考えられる意味解釈上の限界
平成文化への懐かしさ復刻商品の発売、当時経験者の購入、検索増加過去の感覚への再接続懐かしさだけで買うとは限らない
参加しやすい価格330〜605円前後のシール、770〜1320円前後のバインダー、100円収納始める心理的ハードルが低い継続購入で累積支出は増える
小さな収集単位ページ・テーマ・色別に管理できる範囲を自分で決めやすいコンプリート志向になると終わらない
配置による自己表現バインダー、リフィル、構図へのこだわり所有より編集の楽しみが生まれる非公開で楽しむ人もいる
交換・見せ合い交換会、SNS投稿、親子・夫婦・友人での交換物を介した緩い関係調整負担、競争、転売も起こりうる
手触りのある操作貼る・剥がす・並べる・眺める触覚的で有限な行為になる効果を一般化・医療化できない
SNSによる拡散検索急増、動画増加、予約制イベント発見・展示・共有が加速する可視化された話題が全体需要とは限らない

平成のシール帳文化から、何が受け継がれ、何が変わったのか

現在のブームは、1990年代後半〜2000年代初頭のシール交換文化を土台にしています。当時を牽引してきたメーカー担当者は、シール交換を友だちとの絆を深めるコミュニケーションの場と説明し、シール帳を見れば相手の趣味嗜好やセンスがわかるものでもあったと振り返っています。さらに、交換という行為そのものが、レート感覚や交渉、等価交換の感覚を学ぶ遊びでもあったとされています。

受け継がれているのは、希少性だけではありません。ぷっくりしたシール、水入り・樹脂入り・立体感のあるシールの触感や、レート高めと見なされる独特の価値づけも、令和の人気商品に引き継がれています。実際、現在の人気商品でも、透明感や立体感が中核訴求になっており、メーカーは想定外だった大人層の支持を認めています。

ただし、令和の大人のシール帳は平成の再現ではありません。最も大きい違いは、購入主体と選択権です。当時は子どもが欲しがり、支払いは親や限られたお小遣いが中心でしたが、現在は自分の所得で選び、収納用品やバインダーまで含めて編成できます。メーカー取材でも、今は母親世代が自分のためにも子どものためにも買う姿が目立つと語られています。ここで起きているのは、過去への単純な回帰というより、大人の判断で好きだった形式を選び直す行為だと読むほうが近いです。

また、平成女児という呼び方自体も、当時の自然語というより、後年に再編されたラベルとして扱うのが妥当です。2025年の報道では、平成女児は「1990年代後半から2000年代初頭に小学生だった世代の女性」を指す言葉として説明され、マーケティング記事ではネットスラングから広まった近年のカルチャー用語と整理されています。つまり、現在私たちが見ているのは当時の文化そのものではなく、当時の文化を2020年代がどう読み替えているかでもあります。

比較軸平成期のシール帳文化現在の大人のシール帳
主な購入者子ども、とくに女子小学生が中心子どもに加え、当時経験者の大人、親子、男性参加者も確認される
支払う主体親・お小遣いが中心自分の可処分所得で選べる
情報源友だち同士のやり取り、店頭での発見が中心SNS、動画、小売EC、イベント、店頭が並立
交換相手学校や近い友人関係が中心友人、家族、夫婦、カップル、イベント参加者まで拡張
見せる範囲身近な相手中心身近な相手に加え、SNSで公開される
商品の選び方触感、レート、キャラクター性が重要それに加え、復刻感、収納のしやすさ、ページ構成も重要
収集の意味交換・交渉・友人関係の遊び交換に加え、所有・配置・撮影・共有まで広がる

この比較から見えるのは、同じ遊びが戻ったのではなく、交換文化のコアが残りつつ、購入権・情報経路・見せる範囲が拡張したという変化です。したがって、平成女児文化は入口として強い説明力を持ちますが、それだけを原因にすると、現在のバインダー文化やオンライン共有、親子・男性参加を取りこぼします。

「小さく集められる」ことが、現在の生活に合っている

現在のシール文化の強みは、比較的少額から始められ、しかも自分で範囲を切りやすいことです。カミオジャパンの公式通販では、シールは330円前後から、平成ファンシー関連の立体シールは385〜550円前後、バインダーは715〜1100円前後、収納用品は770〜2420円前後で販売されています。ロフトでも「大人のシール帳リングタイプ」が770円、「大人のシール帳」は990円、シールバインダーは990〜1320円前後です。100円ショップでもシート収納ケースやコレクション用リフィルが110円で販売されています。

この価格帯は、いきなり高額な趣味道具をそろえるより心理的に参加しやすいと言えます。しかも、シール帳は一気に全部集める必要がなく、ページ、色、モチーフ、ブランド、キャラクター、サイズで範囲を自分で決められます。最新の収集研究では、コレクションは関連する要素をひとまとまりの構造として把握できるため、統制感や完結感と結びつきやすいと説明されています。シール帳にそれをそのまま当てはめることはできませんが、ページ単位で完了を感じやすい形式であることは、公開されている商品設計ともよく合います。

ここで大切なのは、1点あたりの価格が低いことと、趣味全体の支出が小さいことは別問題だということです。人気商品の過熱は、むしろこの点をはっきり見せています。SPINNSは2026年7月時点でシール商品への多数の注文を受け、購入制限を設けています。ロフトは混雑防止と品薄を理由に販売見合わせを発表し、オリンピアの交換会では1回の参加につき各種1枚・合計5枚までという購入制限が設けられていました。低単価ゆえに枚数が増えやすく、イベントや限定品が重なると累積支出は小さくありません。

では、こうした趣味は現在の生活条件とどうつながるのでしょうか。統計的に言えるのは、日本の家計が物価上昇を経験し続けていること、そして2025年平均では勤労者世帯の実収入が実質で減少していることです。内閣府の消費動向調査も、暮らし向きや物価見通しをとらえる目的で継続されています。こうした状況では、大きな買い物より数百円単位の楽しみが組み込みやすい、という仮説は立てられます。ですが、物価高だからシールが流行したとまでは言えません。ここは因果ではなく、生活への組み込みやすさという条件面です。

むしろ重要なのは、シール帳が終わりのない消費になりにくい設計も持っていることです。SNSのフィードは無限ですが、シール帳の1ページは有限です。ページが埋まれば、ひとまず区切りがつく。この小さな完了は、巨大なコレクションや終わりのない閲覧と異なる感覚を与えます。公開情報から直接その心理を測定することはできませんが、ページ、リフィル、収納BOXといった商品構成を見る限り、扱い切れる単位を作りやすい趣味であることは確かです。

シール帳は、集める物から「編集する媒体」へ変わる

シール帳の面白さは、所有だけで完結しない点にあります。シールを持つことと、シールをどう並べるかは別の行為です。メーカー取材では、男性参加者の楽しみ方として、シール帳にきれいに整列させて貼る構図へのこだわりや、貼ったり剥がしたりする身体感覚、自分ならではのこだわりでシール帳が埋まっていく感覚が語られています。ここでは、収集はすでに編集へと半歩ずれています。

このずれを考えるうえで有効なのが、所有物が自己の延長になるという消費研究です。Belkの古典的研究は、所有物がアイデンティティの一部として働くことを論じています。さらに、個人アーカイブ論では、個人の記録物は単なる保管ではなく、何を残しどう構成するかを通じて自己表現や自己構成を帯びると考えられてきました。もちろん、シール帳を公的なアーカイブそのものとして扱うのは行き過ぎです。しかし、何を残し、何を並べ、何を見せるかを選ぶ小規模な媒体として読むことは、過度な比喩ではないと思います。

現行の売場も、この編集性を支えています。バインダー、リフィル、収納BOX、リングノート型の大人のシール帳、カラー別の収納リフィルなどが増えているのは、シールを消費して終わるのではなく、整理し、見せ、入れ替えることを前提にしているからです。商品名に「収納」「バインダー」「リフィル」が多いこと自体が、文化が保存・再配置に寄っている証拠です。

ただし、配置があるからといって、本人が自己表現を目的にしているとは限りません。単にきれいに並べたい人、コレクションを傷めず保管したい人、交換用に分類したい人もいます。実際、メーカー証言にも、交換には参加せず所有と配置を楽しむ人が出てきます。したがって、ここで言う自己表現は、あくまで観察可能な行動から見える一つの読みです。

また、SNS公開はこの編集性を後押ししながら、同時に評価軸も持ち込みます。メーカーはシール帳の披露や交換の様子の動画が増えたと語っています。公開が増えれば、構図の上手さやレア度、完成度が比較されやすくなるのも自然です。したがって、シール帳は自己編集の媒体である一方、公開の場に出た瞬間に、趣味の自由さが評価や競争へ変わる可能性も持っています。これは価値ではなく、可視化に伴う構造上のリスクとして見ておく必要があります。

交換は、物の移動だけでなく関係を調整する

シール交換は、物品交換であると同時に、相手との距離や気遣いを調整する行為でもあります。平成期について、メーカー担当者は、交換が相互理解や交渉の場であり、レート感覚や等価交換の概念を学ぶ遊びでもあったと説明しています。交換の楽しさは欲しいものを手に入れることだけではなく、どの条件なら出せるかを相手とすり合わせることにありました。

現在、大人向け交換文化が実在するかという点については、限定的ながら確認できます。2026年には、マリモクラフトが大丸梅田店で「シールフェスティバル」を開催し、事前予約制で多種のシールとシールバインダーを販売しました。オリンピアも「シール交換会&販売会」を開催し、開始15分の販売後に交換会を行う形式を案内しています。さらに、東京では「愛しのシール交換展2026」が開かれ、お客さん同士で・クリエイターと・どこかの誰かと交換できると告知されていました。浅草ROXまつり湯でも「シール交換会開催」のイベントが実施されています。全国代表性はありませんが、少なくとも大人も参加しうる交換の場は複数存在します。

ただ、交換は参加者全員の中心行動ではありません。メーカー取材でも、シール帳を3冊目まで埋めていても交換には参加していない例が紹介されています。つまり、シール文化には、交換、譲渡、見せ合い、共同購入、鑑賞、保管が並列しており、交換だけを本質と見なすのは狭すぎます。ここは、収集、交換、装飾、鑑賞という行為を分けて考える必要があります。

また、交換には魅力だけでなく負担もあります。希少性が高まると、混雑、購入制限、転売、模倣品といった問題が出ます。ロフトは販売見合わせを行い、サンスター文具はボンボンドロップシールについて模倣品は交換対応できないと案内しています。交換会でも人数制限や購入上限が設けられていました。こうした管理は、人気の裏返しであると同時に、交換文化が自動的にやさしいコミュニティになるわけではないことの証拠です。

したがって、交換を贈与論の大きな枠で読み解くことは可能でも、本記事ではあくまで比喩的接続にとどめます。確認できるのは、交換が言葉だけに頼らないコミュニケーションになりうること、そして同時に、価値づけ・レア度・気遣い・疲れも伴いうることです。

デジタルに疲れたからではなく、デジタルの中に触覚を戻している

スマホに疲れたから、みんなシール帳に戻ったという説明は、わかりやすい反面、単純すぎると思います。まず、公的には、総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」は2012年度から毎年、インターネットやSNSを含むメディア利用時間や利用率を継続的に調べています。つまり、インターネット利用は一時的な背景ではなく、すでに生活インフラです。

そのうえで、研究側では、技術利用に伴う疲労やストレスが、少なくとも一部の場面で問題化していることは確かです。医療分野のスコーピングレビューでは、テクノロジー関連の疲労がワークフローや疲労感に関わるテーマとして整理され、広い意味でのテクノストレス研究も、技術への適応負荷が心理的なストレスや不快と結びつくことを整理しています。ただし、これらは主に仕事・医療・テクノロジー使用全般の研究であり、シール帳への移行を直接説明するものではありません。

シール帳の魅力を説明するうえで、むしろ重要なのは身体を使う具体的操作です。剥がす、貼る、位置を決める、ページをめくる、光沢や厚みを見る。こうした手作業は、テキスト入力やスクロールとは違うテンポを持ちます。クラフト研究では、自分で選んだ手作業が達成感、自己管理感、身体と感情のコントロール感に結びついたと報告されています。これもシール帳を直接調べた研究ではありませんが、少なくとも手を使って小さく完成させる行為の意味を考える補助線にはなります。

とはいえ、ここからアナログだから心に良いと一般化することはできません。シール帳に心理的効果や治療効果を直接結びつける研究は、今回確認した範囲では見つかっていません。言えるのは、デジタル環境の中で、触覚的で有限な時間を挿入する形式としてシール帳が選ばれやすい、ということまでです。実際、メーカーはこの現象をデジタルからの離脱ではなく、シール帳の公開や交換動画など、デジタルとアナログの融合として見ています。

ここが大事です。大人のシール帳は、SNSの反対側にあるのではありません。SNSで商品を知り、ECで買い、イベントを予約し、完成したページを撮って共有し、交換相手を探す。その循環のなかで、シール帳は画面の外にあるものとして機能しています。つまり、デジタル疲れがもし背景にあるとしても、それはデジタル否定ではなく、デジタル生活の内部に、手で扱える小さな時間を差し込む試みとして読むほうが正確です。

大人のシール帳が映しているのは、過去よりも現在かもしれない

ここまでの調査から見ると、大人のシール帳ブームは、平成女児文化への懐かしさを起点にしつつ、それだけでは成立していません。支持されているのは、懐かしい意匠そのものだけでなく、数百円単位で始められること、ページ単位で収集範囲を切れること、配置で自分の一冊を作れること、交換にも鑑賞にも開かれていること、そしてSNS時代にこのアナログな行為がむしろ見つけられやすくなっていることです。企業証言、現行価格、交換イベント、検索指標、学術的補助線を合わせると、中心仮説はかなりの範囲で支持されます。

ただし、一つの原因で説明できる現象ではありません。懐かしさが強い人もいれば、いま初めてデザインや触感に惹かれる人もいます。交換が中心の人もいれば、所有と配置だけで十分な人もいます。親子で楽しむ人もいれば、単独で静かに集める人もいます。したがって、この記事で示したいのは統一した本音ではなく、公開情報から見える行動の重なりです。

この文化が一時的なブームで終わる条件と、残る条件も分けて考える必要があります。一時的な品薄やバズだけなら冷えやすいでしょう。反対に、収納用品、リフィル、交換会、復刻系商品、キャラクター横断の展開が続くなら、シール帳は単発商品ではなくやり方として残りやすくなります。現時点では、売場・イベント・商品名のレベルでその基盤は見えていますが、全国市場規模の長期統計は確認できません。ゆえに、結論は文化として残る可能性があるが、規模の一般化はまだ慎重であるです。

大人のシール帳が映しているのは、過去そのものより、むしろ現在の生活の輪郭かもしれません。選択肢が多すぎる日常、終わりのないフィード、細切れの可処分時間のなかで、数百円で買えて、一冊の中で管理できて、自分の手で完結できるもの。そこに懐かしさが重なるから強いのであって、懐かしさだけではここまで続きません。集めたいのは懐かしい物なのか、それとも自分で選び、並べ、残せる小さな時間なのか。その問いを引き受けられる形式の一つが、いまのシール帳なのだと思います。

よくある疑問

Q.大人のシール帳は本当に流行しているのですか。
少なくとも一部商品群と文化実践については、流行の兆候を複数確認できます。2024年発売のボンボンドロップシールは2025年末時点で累計出荷1500万枚、2026年にはロフトが品薄と混雑防止のため販売見合わせを発表し、事前予約制のシールフェスや交換会も複数開催されました。ただし、全国民レベルの市場規模が急拡大したとまで言える統計は確認できていません。

Q.なぜ平成女児文化が注目されるのですか。
1990年代後半〜2000年代初頭のシール交換文化が、現在の大人にとって共通の記憶として再利用しやすいからです。ただし、「平成女児」という語自体は近年の再編ラベルとして使われており、当時そのままの言葉というより、後年の視点からまとめられた呼称と考えるほうが自然です。

Q.大人がシールを集めるのは子どもっぽいのでしょうか。
年齢だけでそう判断する根拠はありません。現在は大人向けのシール帳、収納、リフィル、交換会が成立しており、楽しみ方も交換だけでなく、配置・保管・鑑賞・撮影まで広がっています。文化の形式が子ども時代に由来していても、現在の実践は大人の選択と編集を含んでいます。

Q.デジタル疲れと本当に関係があるのですか。
直接の因果を示す研究は確認できません。ただ、技術利用が疲労やストレスと関わる研究はあり、手作業やクラフトに達成感や自己管理感が伴う研究もあります。その意味で、デジタル生活のなかに触覚的で有限な時間を差し込む形として理解することは可能です。けれども「疲れたから必ずシール帳に向かう」とは言えません。

Q.シール交換をしなくても楽しめますか。
はい。交換会は実在しますが、メーカー証言にも、交換には参加せずシール帳を埋めること自体を楽しんでいる例があります。収集、配置、収納、鑑賞、SNSへの公開は、それぞれ独立した楽しみ方です。

Q.低価格な趣味と言い切れますか。
「始めやすい」とは言えますが、「総額が安い」とまでは言えません。1点は数百円台中心でも、人気商品は購入制限がかかるほどで、累積すると支出は膨らみます。低単価と低総額は分けて考える必要があります。

Q.ブームは一時的なのでしょうか。
一時的な品薄や話題は存在しますが、売場、収納用品、交換会、復刻系商品が同時に広がっているため、単純な瞬間風速だけとも言い切れません。とはいえ、長期統計が不足している以上、「文化として定着した」と断定するのは早いです。

Q.若い世代にも広がっていますか。
はい。メーカー取材では、リアル小学生に加えて、当時の経験者の大人、親子、男性参加者まで広がっていると語られています。ただし、どの層がどれだけ多いかを示す全国統計は確認できません。

参考

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oricon ME(2025年10月23日)「あの頃のワクワクを、もう一度…性別も世代も超えて再燃中、“シール交換”が教えてくれる社会性と相互理解」ORICON NEWS、https://www.oricon.co.jp/special/72856/、閲覧日:2026年07月19日。 

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