
推し活をすると元気になる人がいます。外出の予定が増え、身だしなみを整える理由ができ、人と話すきっかけも生まれる。その一方で、同じ推し活をしていても、遠征の睡眠不足、食事の乱れ、出費、比較疲れで生活が削られていく人もいます。実際、2025年の民間調査では、推し活で感じるポジティブなことの上位は「癒される・安心」35.6%と「励まし・元気が出る」33.5%でしたが、ネガティブなことの上位には「お金の浪費」17.1%と「時間の浪費」13.5%も挙がっていました。
だから、問いは推し活は健康に良いのか、悪いのかでは足りません。見るべきなのは、推し活によって何が増え、何が削られたかです。外出や交流が増えても、睡眠、食事、生活費、回復時間、自己決定感まで削られていれば、短期的な高揚はあっても中長期では疲弊しやすくなります。反対に、楽しい負荷があっても回復でき、必要な生活費や休養が守られていれば、推し活は生活を整える循環にもなりえます。
本記事では、運動、外出、睡眠、食事、出費、交流、SNS比較、身だしなみ、自己決定感、回復可能性を分野別に見ます。そのうえで、「資源収支」と「調整可能性」という2つの軸から、健康的に続けられている状態、調整が必要な状態、専門機関などへの相談を検討したい危険信号を整理します。
読み終わる頃には、自分の推し活を否定せずに、何を残し、何を減らすかを考えられるはずです。推し活をやめるか続けるかではなく、どう再設計するか。その視点で見ていきます。
推し活の健康性は好きの強さでは決まらない

推し活が健康を支えるか、生活を削るかを分けるのは、まず資源収支です。推し活の結果として、歩く理由、外に出る理由、楽しみ、人との接点、自己表現が増えているのか。それとも、睡眠、食事、家計、回復時間、気持ちの余白が失われているのか。この差は、愛情の深さそのものより、生活の土台が守られているかどうかに近い問題です。
もう一つ大事なのが調整可能性です。行きたいから行く、買いたいから買う、見たいから見るという自発性が残っているのか。それとも、行かなければファン失格、買わなければ支えられない、見逃したら置いていかれる、という感覚が強くなっているのか。自己決定理論では、自律性・有能感・関係性が満たされると、より自発的で健やかな動機づけが生まれるとされます。推し活でも、この観点は役立ちます。
ここで最初の誤解を整理しておきます。楽しいことと健康に良いことは同じではありません。 楽しさがあるからこそ眠気や出費の痛みを後回しにしやすい場面がありますし、逆にイベント後にどっと疲れても、十分に眠れて生活が戻るなら、それは危険信号ではなく一時的な負荷で済むこともあります。睡眠ガイドでも、見るべきなのは睡眠時間の長短だけでなく、睡眠休養感と日中の生活への影響です。
推し活で健康になったという回答は、何を示しているのか

推し活に関する民間調査を見ると、元気が出る、癒やされる、毎日が楽しいといった回答は確かに多く見られます。株式会社ロイヤリティ マーケティングの2025年8月調査は、インターネット調査で国内在住15〜89歳9,904人を対象に行われ、推し活をしている人は36.1%でした。推し活経験者が直近1カ月に実感したポジティブなことの1位は「癒される・安心」35.6%、2位は「励まし・元気が出る」33.5%でした。一方、ネガティブなことの1位は「お金の浪費」17.1%、2位は「時間の浪費」13.5%です。しかも同調査の独自ウェルビーイング指標では、推し活実践者の総合値49.8点は全体平均50.1点と大差がなく、精神面だけが一方向に高いという単純な図でもありません。
ビデオリサーチの2025年調査でも、全国15〜69歳13,786人のスクリーニングで「推しがいる」と答えた人は38.9%でした。推しは若年層だけの文化ではなく、中高年にも広がっています。
ただし、ここで二つ目の誤解があります。推し活をしている人の健康感が高いことと、推し活が健康を改善したことは同じではありません。 こうした調査の多くはインターネットパネルによる自己申告で、生活習慣病の発症率や睡眠計測のような客観指標を見ているわけではありません。言えるのは、推し活経験者がある種のポジティブさや負担をどう感じているか、という傾向です。因果関係までは原則として言えません。
その点で、この記事では三段階に分けて考えます。
第一に、推し活調査から確認できる自己申告や行動傾向。
第二に、一般の健康研究や公的ガイドから確認できる、睡眠、身体活動、食行動、ストレス管理の知見。
第三に、その両者をつなぐ推論です。
この順序を崩すと、元気になった気がするから、健康効果が証明されたと早合点しやすくなります。
運動と外出は、似ているようで違う

推し活は、確かに身体を動かす理由を増やします。ライブ、展示会、聖地巡礼、グッズ探し、ポップアップ巡りは、家の外へ出る理由になりやすいからです。一般論としても、趣味やレジャー活動は幸福感や自己評価の向上と関連しうることが報告されています。
ただし三つ目の誤解として、外出が増えたことと、必要な身体活動量を満たしたことは同じではありません。 厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に対し、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上、目安として約8,000歩以上、さらに息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨しています。同時に、座位行動、つまり座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意を促しています。
推し活の外出は、この基準に近づくきっかけにはなりますが、それだけで自動的に達成されるわけではありません。行列待機、開演前後の長時間座位、往復の長距離移動は、身体活動と疲労を同時に生みます。1日だけよく歩いた後に何日も寝込むようなら、それは運動習慣がついたというより、大きな負荷を単発でかけた状態に近いはずです。ここでも大事なのは総量ではなく、回復できる範囲で続いているかです。
また、外出しやすさには個人差があります。持病、障害、年齢、服薬、体力差がある人には、同じ現場参加でも負荷の大きさは違います。身体活動ガイドは、個人差を踏まえ、可能なものから取り組み、慢性疾患がある場合は必要に応じて専門家に相談することを勧めています。ですから、現場参加が少ない、遠征が難しいからといって、その人の推し活を不健康や本気ではないとみなす必要はありません。
睡眠と食事は、特別な高揚ほど削られやすい

睡眠は、推し活の利益と負担が最も分かれやすい分野です。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、睡眠不足が日中の眠気や疲労、情動不安定、注意力や判断力の低下、仕事効率や学業成績の低下と関係し、慢性化すると肥満、高血圧、2型糖尿病、心血管疾患などのリスク上昇とも関連すると整理しています。成人向けの簡易ガイドでは、6時間以上を目安に十分な睡眠時間を確保することが示されています。
推し活で起こりやすいのは、深夜配信、終演後の情報追跡、早朝移動、SNSチェックによる少しずつの削れです。単発の夜更かし自体がすぐ危険というわけではありません。しかし睡眠ガイドは、休日の長時間睡眠が必要な場合は平日の睡眠不足のサインであり、休日の寝だめだけでは体内時計が乱れて健康を損なう危険があるとしています。一回の特別な寝不足と、平日の不足を休日で埋め続ける常態は分けて考える必要があります。
睡眠に関して本当に見たいのは、何時間寝たかだけではなく、朝に休まった感覚があるか、日中の眠気が強いか、遅刻や集中低下が出ていないかです。生活習慣を整えても、十分な時間眠れない、睡眠で回復した感覚が得られない、日中の眠気が強くて日常生活に影響がある場合は、医師への相談が勧められています。
食事も似ています。農林水産省の食生活指針は、1日の食事リズムから健やかな生活リズムを作ること、朝食で1日を始めること、主食・主菜・副菜を基本にすること、そして無理な減量をしないことを示しています。特に若年女性のやせに注意を促しています。
ここで四つ目の誤解を明示します。身だしなみへの関心が高まることと、身体的・精神的に健康になることは同じではありません。 推しに会うから服を整える、ヘアケアやメイクを楽しむ、料理に関心が出る、といった変化は生活を整える方向に働くことがあります。しかし、体形への焦りから欠食や極端な食事制限が増えるなら話は別です。令和5年国民健康・栄養調査の結果概要では、やせの者の割合は女性全体で12.0%、20〜30歳代女性では20.2%でした。推し活が直接の原因だとは言えませんが、容姿圧力と結びつきやすい層に、もともと痩せすぎのリスクがあることは押さえておくべきです。
出費の問題は、金額そのものより家計への食い込み方にある

五つ目の誤解は、推し活に多く支出することと、家計が破綻していることは同じではないという点です。収入、家族構成、固定費、医療費、学費、介護負担によって耐えられる額は変わります。一律の適正比率は出せません。金融経済教育推進機構J-FLECは、家計管理を「収入と支出のバランスを管理すること」と定義し、支出を「使う」「貯める」「増やす・備える」に分け、支出を収入の範囲内に収める重要性を示しています。
だから見るべきなのは、推し活費の多寡よりも、必要支出を先に守れているかです。家賃、食費、水道光熱費、医療費、通信費、学費などを削らなければ成立しないのか。支払いを先送りし、後払い、リボ、借入れ、滞納が増えていないか。国民生活センターによれば、後払い決済サービスに関する相談件数は2021年度14,555件から2024年度43,964件へ増えています。推し活だけの問題ではありませんが、今は払わずに済む仕組みが支出感覚を鈍らせるリスクは軽視できません。
さらに、選択環境の影響もあります。限定販売、抽選、ランダム商品、複数購入、ランキング施策は、今動かなければ失うという焦りを生みやすい。マーケティング研究でも、希少性は購買行動に影響しうることが整理されていますし、FoMO研究では、他者の楽しそうな経験から取り残される不安が、より高いソーシャルメディア関与と結びついていました。ここで原因を個人の自制心だけに還元すると、問題の半分しか見えません。
なお、総務省の家計調査は「推し活」という独立費目を持っていません。家計統計には教養娯楽など広い区分はありますが、それをそのまま推し活支出とみなすことはできません。公的統計は家計の基礎を知る参考にはなりますが、推し活の適正額を決めるものではありません。
交流は支えになりうるが、比較が混ざると疲れやすい

推し活の価値を説明するとき、人との交流が増えるから良いと言われがちです。確かに、共通の話題、所属感、情報交換、現場での助け合いは大きな支えになります。2023年の研究では、オンラインのファンコミュニティでの交流とパラソーシャル関係が、ウェルビーイングとコミュニティ感覚の双方を高める結果が示されました。
しかし六つ目の誤解として、ファン仲間が多いことと、支援的な人間関係があることは同じではありません。 内閣府の令和7年調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」4.5%、「時々ある」13.7%、「たまにある」19.5%で、約4割が何らかの孤独感があると回答しました。人は、同じ出発点から推し活を始めているわけではありません。もともと孤立感が強い人にとって、ファンダムは大切な接点になりえますが、その交流が監視や同調圧力の場になることもあります。
日本のアイドルファン550人を対象にした研究では、心理的所有感のうち「心理的一体感」は同担仲間意識を高め、「心理的責任感」は同担競争意識を高めました。興味深いのは、仲間意識も競争意識もウェルビーイングとは正に関連した一方で、推し活継続性には仲間意識が正、競争意識が負に働いたことです。つまり、比較や競争は一時的な高揚を生んでも、長く続ける土台としては摩耗を起こしうる、ということです。
SNS比較は、交流の負担を大きくしやすい要素です。所持数、現場数、座席、認知、支出額、フォロワー数、容姿は、数字や写真で可視化しやすいからです。2025年のシステマティックレビューとメタ分析では、83研究・55,440人を対象に、オンライン上の社会的比較傾向が高いほど、身体イメージの不安が強く、摂食障害症状も高く、ポジティブな身体イメージは低いという中程度の関連が示されました。これは日本の推し活そのものを調べた研究ではありませんが、ファン活動が外見比較の場にもなることを考えるうえで重要です。
パラソーシャル関係についても、曖昧に恐れない方がよいと思います。パラソーシャル関係は、著名人やキャラクターとの非相互的な社会情緒的つながりを指す概念で、それ自体が異常という意味ではありません。むしろ、安心感や一体感、心理的支えとして働く場面もあります。ただし、それは相互的な実生活の支援ネットワークと同じではありません。困ったときに現実の生活を支えるのは、やはり人間関係、制度、相談先です。
健康になる人と疲弊する人を分けるのは、資源収支と調整可能性である

ここまでをまとめると、推し活が健康を支える循環になるのは、得る資源が失う資源を上回り、しかも自分で活動量を調整できるときです。資源保存理論は、ストレスを「資源の脅威」「資源の実際の損失」「資源を投入したのに十分な回復や獲得が得られないこと」から捉えます。この考え方を推し活に当てはめると、とても見通しがよくなります。
たとえば、ライブや遠征で体力は使っても、数日で回復し、次の一週間を前向きに過ごせるなら、それは負荷が資源獲得につながっている状態です。反対に、数回のイベントで睡眠負債が蓄積し、食事が乱れ、生活費が苦しくなり、比較不安でSNSを閉じられないなら、損失が次の損失を呼ぶ状態です。ここでは推し活の量より回復と自己調整が重要です。
分かりやすく整理すると、次のようになります。
| 資源収支 | 調整可能性が高い | 調整可能性が中程度 | 調整可能性が低い |
|---|---|---|---|
| 増えている | 外出や交流が増え、睡眠・家計も守れている。行かない回も選べる | 基本は保てるが、罪悪感や取り残され不安が強い | 一見楽しいが、やめどきが自分で決めにくい |
| ほぼ均衡 | 特別なイベント後に回復日を取れば保てる | 楽しいが疲れが残りやすい。SNSや課金の戻し方が課題 | 均衡に見えても、休めずじわじわ苦しくなる |
| 失っている | 一時的な見直しで戻せる可能性がある | 黄信号。削っているものが増えている | 赤信号。生活の土台や安全が脅かされている |
この整理は、本記事の解釈モデルです。実証研究がそのままこの表を検証したわけではありません。例外もあります。高額を使っても生活基盤が安定している人もいますし、活動量が少なくても比較不安だけが強い人もいます。一人で楽しむことが孤立ではなく、むしろ快適な人もいます。だからこそ、量で測るより、何が減ったかと自分で減らせるかを点検した方が、現実に近いのです。
健康的な推し活と危険信号の境界は、診断ではなく目安で見る

最後に、生活を振り返るための三段階の目安を示します。これは診断表ではなく、調整や相談の要否を考えるための目安です。睡眠ガイド、公的な家計管理の考え方、消費者トラブルの相談動向を踏まえると、境界は次のように考えられます。
緑:おおむね持続可能
推し活が外出や交流のきっかけになっている。睡眠、食事、必要支出が保たれている。イベント後に回復日を確保できる。行かない・買わない・見ない選択もできる。他人の活動量と自分の価値を切り離せる。推し活以外の仕事、学業、家事、治療も維持できる。
黄:調整を検討したい
寝不足や欠食が繰り返されている。予定や出費を隠すことが増えた。SNSを見るたびに焦りや自己否定が強い。生活費を削らないと活動費が出せない。休むと強い罪悪感がある。イベント後の疲れが数日以上抜けにくい。ビデオリサーチの調査でも、若い世代ほど「お金」や「時間」を費やす苦労を感じる割合が高く、自由回答には睡眠時間を削って時間を捻出する声が見られました。これはすぐに危険という意味ではありませんが、見直しのタイミングではあります。
赤:専門的な相談も検討したい
家賃、食費、光熱費、医療費など必要支出を継続的に削っている。後払い、借入れ、滞納が増えている。睡眠不足や食事制限によって日常生活に明確な支障がある。強い体調不良、失神、極端な体重変化がある。学業、仕事、家事、対人関係を維持できない。減らそうとしても止められず強い苦痛がある。自傷や自殺に関する考えがある。ストーカー行為や脅迫など、自分や他人の安全に関わる行動が出ている。睡眠ガイドは、生活習慣を見直しても眠れない、休養感が得られない、日中の眠気で生活に支障がある場合は速やかな受診を勧めています。
緊急性がある場合の公式窓口も確認しておきます。自傷や自殺に関する切迫した危険がある場合は、まず119番や110番です。精神的な危機や強い希死念慮があるときは、厚生労働省の自殺対策ページ経由で相談先を確認でき、こころの健康相談統一ダイヤルは0570-064-556です。よりそいホットラインは0120-279-338で、外国語相談の案内も公式に出ています。金銭トラブルは消費者ホットライン188、安全上の不安やストーカー・脅迫など緊急でない警察相談は#9110です。受付時間や接続先は自治体・窓口で変わるため、利用時点の公式案内を確認してください。
推し活をやめずに、負担だけを減らす再設計はできる

ここまで読んで、結局は減らせと言われていると感じたら、それは本意ではありません。目指したいのは縮小そのものではなく、回復を先に組み込むことです。遠征や現場の翌日に予定を詰めない。深夜配信を追う日と追わない日を分ける。食事の確保が難しい日は、会場前に食べやすいものと飲み物を先に準備する。これは熱量を下げる工夫ではなく、熱量が生活を壊さないようにする工夫です。
お金については、推し活費を最後に考えるのではなく、必要支出を先に残してから決める方が罪悪感も減ります。J-FLECが示すように、家計管理は収入と支出のバランスを見ることであり、「使う」「貯める」「備える」を分ける発想です。ランダム商品や複数購入には上限を先に決める。後払いを使うなら、支払日まで含めてすでに使ったお金として把握する。抽選や限定への焦りを完全に消すことは難しくても、意思決定の前にワンクッションを入れるだけで変わります。
SNS比較には、量を減らすだけでなく、比較しやすい接点を変える方法があります。ミュート、閲覧時間制限、通知オフ、非公開の日記、スクショではなくメモで記録する。SNSは情報収集に便利ですが、ビデオリサーチの調査では、推しがいる人はXやInstagramの利用時間の約半分を推し活目的で使っていました。使い方を変えない限り、比較の接触面は自然には減りません。
そして、応援量と愛情を切り離すことです。行かなかった回があっても、買わなかったグッズがあっても、推しへの気持ちがただちに薄くなるわけではありません。むしろ、自分で調整してもつながりが保てる形を見つけた方が、長く続けやすい。無料視聴、過去作品の鑑賞、創作、感想を書く、現場の間隔を空ける、推し以外の生活も守る。推し活をしたあと、自分の生活に何が残るか。その問いに前向きに答えられる形が、いちばん続けやすい推し活です。
よくある疑問Q&A
Q. 推し活は健康に良いのですか。
一律に良いとも悪いとも言えません。外出の理由、楽しみ、人とのつながり、身だしなみへの関心が増えることはありますが、睡眠、食事、生活費、回復時間、自己決定感まで削られていれば、同じ推し活でも疲弊につながります。判断の鍵は、何が増えたかだけでなく、何が削られているかです。
Q. 推し活で疲れるのは普通ですか。
特別なイベント後に一時的に疲れるのは珍しくありません。ただし、休日の寝だめが必要になる、日中の眠気や集中低下が続く、数日以上回復しない、生活に支障が出るなら「普通の疲れ」で片づけず、調整や相談を考えた方が安全です。
Q. いくら使うと使いすぎですか。
万人共通の適正割合はありません。見るべきなのは、必要支出を守れているか、後払い・借入れ・滞納が増えていないか、使ったあとに家計を戻せるかです。金額そのものより、生活を圧迫しているかどうかが重要です。
Q. 推し活を休むと愛情が薄いのでしょうか。
薄いとは言えません。活動量と愛情は同じではありません。休む、減らす、別の応援方法に変えることができる方が、むしろ自分で推し活を選べている状態に近いです。
Q. 推し活への依存はどう判断しますか。
「疲れる」「お金を使いすぎた気がする」だけで医学的な依存とは言えません。むしろ、減らそうとしても止められない、生活や安全に明確な支障が出ている、必要支出や睡眠・食事を継続的に削る、といった赤信号があるかを見ます。診断は記事ではできないため、必要時は医療や相談機関につなぐのが適切です。
Q. 外出が増えれば運動不足は解消しますか。
必ずしもそうではありません。身体活動ガイドは、成人で歩行など1日60分以上、約8,000歩以上を目安に示しつつ、座りっぱなしの時間を減らすよう勧めています。現場参加はきっかけにはなりますが、長時間の待機や移動負担もあるため、外出増加と運動習慣の確立は同じではありません。
Q. 推し活をやめずに負担を減らせますか。
減らせます。翌日を回復日にする、睡眠を削らない視聴ルールを作る、必要支出を先に確保する、ランダム購入の上限を決める、SNS通知を切る、参加しない回を意図的に作るなど、応援の構造を変える方法があります。大事なのは熱量を否定することではなく、回復と生活の土台を先に組み込むことです。
Q. 家族や友人の推し活が心配なとき、どう見ればよいですか。
「いくら使ったか」だけで判断しない方がよいです。睡眠、食事、必要支出、仕事や学業、対人関係、安全が保たれているかを見ると、単なる趣味の濃さと危険信号を区別しやすくなります。
参考
厚生労働省(2023)「健康づくりのための睡眠ガイド2023」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
厚生労働省(2024)「成人のためのGood Sleepガイド 2023」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001288005.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
厚生労働省(2023)「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
厚生労働省(2024)「アクティブガイド2023」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001222159.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
厚生労働省(2025)「令和5年国民健康・栄養調査報告」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r5-houkoku_00001.html、閲覧日:2026年7月20日。
農林水産省(最新版確認日2026年7月20日)「食事バランスガイド」農林水産省、URL: https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/、閲覧日:2026年7月20日。
文部省・厚生省・農林水産省(2016一部改正)「食生活指針」農林水産省、URL: https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/shishinn-9.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
総務省統計局(2022公表)「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の要約」総務省統計局、URL: https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/youyakua.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
内閣府孤独・孤立対策推進室(2026公表)「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年実施)調査結果のポイント」内閣府、URL: https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r7/pdf/tyosakekka_point.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
総務省統計局(最新版確認日2026年7月20日)「家計調査 収支項目分類」総務省統計局、URL: https://www.stat.go.jp/data/kakei/9.html、閲覧日:2026年7月20日。
金融経済教育推進機構 J-FLEC(最新版確認日2026年7月20日)「家計管理:かけいかんり」J-FLEC、URL: https://www.j-flec.go.jp/public/learn/glossary/k_kakei_kanri/、閲覧日:2026年7月20日。
金融経済教育推進機構 J-FLEC(2025)「生活設計・家計管理」J-FLEC、URL: https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/60min_model_1-1.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
独立行政法人国民生活センター(2025年7月2日)「増加し続ける後払い決済サービスが関連する消費者トラブル」国民生活センター、URL: https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250702_1.html、閲覧日:2026年7月20日。
株式会社ビデオリサーチ(2026年3月18日)「1万4千人に聞いた!<推し>がいる人の割合は?ファンエンゲージメント研究調査から」VR Digest plus、URL: https://www.videor.co.jp/digestplus/article/consumer250304.html、閲覧日:2026年7月20日。
株式会社ビデオリサーチ(2025年2月12日)「推しがいる人は1日のSNS利用の約半分の時間を<推し活>に費やしている」VR Digest plus、URL: https://www.videor.co.jp/digestplus/article/consumer250212.html、閲覧日:2026年7月20日。
株式会社ビデオリサーチ(2025年2月28日)「若い世代ほど苦労を感じてでも推し活に“お金”と“時間”を捻出」VR Digest plus、URL: https://www.videor.co.jp/digestplus/article/consumer250228.html、閲覧日:2026年7月20日。
株式会社ロイヤリティ マーケティング(2026年1月26日)「推し活と幸福度・ウェルビーイングに関する調査結果」公開レポート、URL: https://biz.loyalty.co.jp/report/181/、閲覧日:2026年7月20日。
井上淳子(2023)「アイドルに対するファンの心理的所有感とその影響について」『マーケティングジャーナル』、URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/43/1/43_2023.034/_html/-char/ja、閲覧日:2026年7月20日。
Hobfoll, S. E.(1989)“Conservation of resources. A new attempt at conceptualizing stress.” American Psychologist, DOI: 10.1037/0003-066X.44.3.513、閲覧日:2026年7月20日。
Ryan, R. M., & Deci, E. L.(2000)“Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being.” American Psychologist, URL: https://selfdeterminationtheory.org/SDT/documents/2000_RyanDeci_SDT.pdf、閲覧日:2026年7月20日。
Bonfanti, R. C. et al.(2025)“The association between social comparison in social media, body image concerns and eating disorder symptoms: A systematic review and meta-analysis.” Body Image, URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1740144524001633、閲覧日:2026年7月20日。
Przybylski, A. K. et al.(2013)“Motivational, emotional, and behavioral correlates of fear of missing out.” Computers in Human Behavior, DOI: 10.1016/j.chb.2013.02.014、閲覧日:2026年7月20日。
Kim, M. S., Wang, X., & Chu, S.-C.(2023)“Effects of Online Fan Community Interactions on Well-Being and Sense of Virtual Community.” Psychology Research and Behavior Management, URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37998644/、閲覧日:2026年7月20日。
Hoffner, C. A. et al.(2022)“Parasocial relationships, social media, & well-being.” Current Opinion in Psychology, URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35219157/、閲覧日:2026年7月20日。
厚生労働省(最新版確認日2026年7月20日)「自殺対策」厚生労働省、URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/index.html、閲覧日:2026年7月20日。
社会的包摂サポートセンター(最新版確認日2026年7月20日)「よりそいホットライン」URL: https://www.since2011.net/yorisoi/、閲覧日:2026年7月20日。
消費者庁(最新版確認日2026年7月20日)「消費者ホットライン」URL: https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/、閲覧日:2026年7月20日。
警察庁(最新版確認日2026年7月20日)「ご意見、各種相談・情報提供等」URL: https://www.npa.go.jp/goiken_index.html、閲覧日:2026年7月20日。
消防庁(最新版確認日2026年7月20日)「消防救急無線・119番緊急通報」URL: https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/119.html、閲覧日:2026年7月20日。

コメント