AIが書いたメッセージは、なぜ誠意がないと感じられるのか

AIが書いたメッセージが誠意不足に見える理由は、文章の上手下手だけではありません。受け手は文章から、責任主体、個別性、文脈理解、相手への配慮、そして自分のために手間をかけた形跡を読み取ろうとします。生成AIの利用そのものが悪いのではなく、人間の確認・編集・責任が見えないときに「定型処理された」「軽く扱われた」と受け取られやすくなります。しかも、この受け取り方は場面で大きく変わり、定型連絡では許容されやすくても、謝罪・採用・クレーム対応・弔意・励ましでは慎重さが必要です。 

結論

結論から言うと、AIが書いたから即座に不誠実なのではありません。人はメッセージを読むとき、内容だけでなく、「自分のために考えてくれたのか」「この言葉に誰が責任を持つのか」「状況を正しく理解しているのか」を同時に判断しています。AI生成文は流暢で破綻が少ない一方、相手固有の事情や送信者本人の判断過程が見えにくいため、内容が正しくても自分向けではない定型処理のように感じられることがあります。 

この傾向は、謝罪、クレーム対応、採用・不採用通知、弔意、励まし、重要な依頼のように、情報伝達よりも関係修復や感情負担の調整が中心になる場面で強く出やすいです。実際、AI媒介の謝罪や、AI由来だと開示された謝罪文は、同じ内容でも、人間名義の文書より誠実さ・共感・信頼・許しの意図が低く評価される研究が複数あります。 

逆に言えば、問題の本質はAI使用そのものではなく、人間がどこまで関与し、何を確認し、誰が責任を負うのかが見えないことです。実際、単発で取引的なやり取りでは、AI支援があっても信頼低下がほとんど見られなかった研究もあり、AI利用の評価は文脈依存です。

そもそも誠意とは何を指すのか

ここでいう「誠意」は、きれいな文章や丁寧語の多さではありません。本記事では、研究を踏まえつつ、誠意を「相手への関心」「事実確認」「責任の引き受け」「修正意思」「関係を壊したままにしない姿勢」が文章の中にどれだけ読めるか、と整理します。特に謝罪研究では、謝罪は単なる言葉ではなく、相手にとっての関係価値のシグナルとして働くことが示されています。謝罪が許しを促すのは、気の利いた言い回しだからではなく、相手がこの人は関係を修復する価値を認めていると受け取るからです。 

人は他者やエージェントを評価するとき、主に善意や意図に関わる温かさと、能力や実行力に関わる有能さを手がかりに信頼を判断します。HCI研究でも、コンピュータやAIに対する信頼には、単に正確かどうかだけではなく、温かさと有能さの両面が関わると報告されています。つまり、誠意は文章のうまさだけでなく、この相手は自分をどう扱おうとしているのかという意図の読まれ方でも決まります。 

また、人はしばしばどれだけ手間がかかったかを品質や価値の手がかりとして使います。これは本来、芸術作品などを対象に検証された「努力ヒューリスティック」の研究ですが、質が曖昧な対象ほど、受け手は手間や労力の情報を手がかりにしやすいことが示されています。AIメッセージに違和感が出るとき、「秒で作れそう」「コピペで済ませたのでは」と感じることが誠意判断に響くのは、この手がかりの働きと整合的です。もっとも、これはメッセージそのものを直接調べた研究ではないため、ここでの適用は厳密には解釈です。 

ただし、誠意の感じ方は普遍的ではありません。文化、関係の近さ、上下関係、過去のやり取り、緊急性、受け手の感情状態によって変わります。実際、AI著者開示の影響は、情報的・説明的な文章より、対人的・感情的な文章のほうが強く出る一方、AIリテラシーが高い人はより寛容になる傾向も報告されています。  

AI文章はなぜ冷たい、軽い、テンプレっぽいと感じられるのか

具体性が不足しやすい
生成AIは一般論として整った文章を作るのが得意ですが、個別事情が入力されていなければ、その事情に正確に触れられません。すると、相手の名前、時系列、何に困っているのか、どの点で迷惑をかけたのかが薄いまま、誰にでも送れそうな文章になりがちです。読者側から見ると、それは自分に向けて書いた文ではなく、条件分岐の少ないテンプレートに見えます。 

責任主体が見えにくい
AI媒介コミュニケーション研究では、AIが人間に代わって文面を作ると、受け手が「誰の言葉なのか」「誰が判断したのか」を読み取りにくくなる問題が指摘されています。AI-MCは、人と人の間のメッセージを、AIが修正・拡張・生成する形態だと定義されますが、その分だけ、通常は送信者に帰属していた意図や責任が曖昧になりやすいのです。さらに、会話がうまくいかないときにはAIが道徳的クッションのように責任の一部を引き受けて見える一方、だからといって受け手の不満が消えるわけではありません。 

手間をかけていないように見える
2026年のIUI論文では、AI著者開示後に受け手の信頼・思いやり・好感度が下がる理由として、「人間らしい誠実さの喪失」「著者の努力の減少」「AI利用の文脈的不適切さ」が挙げられました。つまり、文章そのものが悪いというより、この人は自分で向き合って言葉を選ばなかったのではという印象が問題なのです。2019年のAirbnbプロフィール研究でも、AIが書いたと知った参加者から便利だが怠惰にも見えるという反応が出ています。 

過剰に整いすぎる
AI文は、文法的に整い、語調も平均化されやすい一方、人間らしい迷い、ためらい、言い直し、言葉選びの癖が消えやすい傾向があります。2025年の助言研究では、AI助言は非開示条件では高品質・高効果・高い真正性として評価されても、AIだと明示されると同じ内容の評価が落ちました。これは整っていること自体が悪いのではなく、整いすぎた言葉が本人の葛藤や負担の痕跡を見えにくくする可能性を示しています。 

文脈のズレが起きる
OpenAI、Google、Anthropicはいずれも、生成AIが誤情報や不適切な出力を返し得ること、重要情報は必ず確認すべきことを明示しています。つまり、LLMは流暢な文章を作れても、未入力の事情や、会話の裏にある人間関係、社内事情、法務上の含意まで自動で把握するわけではありません。もっともらしいが微妙にズレた表現は、「よくある失礼」よりむしろ「ちゃんと見ていない」印象を強めます。 

感情表現が借り物に見える
「心からお詫び申し上げます」「お気持ちお察しします」「深く反省しております」といった表現は、人間が使っても空疎になり得ます。ですが、AI介在が推測・開示されると、そうした表現は本人の感情の掘り出しではなく、定型句の選択として読まれやすくなります。IUI 2026の質的分析でも、AI著者であると知った途端に、同じ文が誠実ではない、魂がないと感じられた参加者がいました。 

開示と非開示の違和感が生じる
AI利用を明かすと評価が下がることはありますが、隠していたと感じられると、今度はごまかしたという不信につながることもあります。しかも、この効果は場面で変わります。健康メッセージでは開示がやや不利に働いた一方、単発の取引的場面では信頼への影響が小さく、逆に対人的・感情的文章では開示の負担が重く出る研究があります。

生成AIの仕組みから見るもっともらしさと誠意のズレ

生成AI、特に大規模言語モデルは、大量の文章データから言葉の並び方のパターンを学習し、文脈に続きそうな語を予測しながら文章を作ります。OpenAIの説明でも、ChatGPTは学習データ内のパターンにもとづいて応答を生成するとされています。この仕組みのおかげで、一般的に自然で読みやすい文章は作りやすくなります。 

しかし、ここで重要なのは、流暢さと責任は別だという点です。モデルがそれらしい謝罪やそれらしい感謝を生成できても、その言葉に法的・道義的・組織的責任を負うのはAIではありません。少なくとも現在の制度設計でも、責任を持つ主体として扱われるのは、人間や組織の側です。日本のAI事業者ガイドラインも、責任者の明示、責任の所在の明確化、ステークホルダーへの具体的対応を求めています。 

また、AIは入力から推測できる範囲でしか文脈を扱えません。送信者本人の本心、過去の会話の温度感、言ってはいけない地雷、社内の暗黙知、相手が今どれほど傷ついているか、といった未入力の文脈は保証されません。だからこそ、重要なメッセージでは、人間による事実確認、文脈補正、言い換え、責任の明示が必要になります。OpenAI、Google、Anthropicがそろって重要情報の確認を促しているのも、この限界と整合的です。 

このズレを一言で言えば、生成AIはもっともらしさを自動化できても、その人がその場で背負う誠意までは自動化できない、ということです。誠意は文法よりも、関係、責任、確認、修正のプロセスに宿ります。ここが、AIメッセージの評価が文体論だけでは説明できない理由です。 

場面別に見るAIメッセージの許容度

以下は、研究とガイドラインを踏まえた本記事による整理です。
個々の場面で法務・労務・採用ルールが絡む場合は、社内規程や専門家確認が前提です。 

場面AI利用の許容度主な理由最低限必要な人間関与
社内の定型連絡比較的高い情報伝達中心で感情負担が小さい宛先、日時、事実の確認
議事録・要約高い構造化や整理にAIが向く誤記・抜け漏れ確認
営業メール中程度量産に向くが、個別性が弱いと逆効果相手企業・課題・提案理由の具体化
カスタマーサポート中程度一次対応は効率的だが、不満時は人間対応が必要事実確認、エスカレーション、人名責任
謝罪文低い関係修復と責任表明が中心全面見直し、事実確認、責任主体の明示
採用・不採用通知低い相手の権利・評価・感情負担に関わる人間判断、通知方針の整合確認
クレーム対応低い事実・対処・再発防止の具体性が必要人間による個別判断と記録
SNS投稿中程度定型広報は使えるが、炎上・追悼・謝罪は慎重文脈確認、反応監視、修正体制
個人的なお礼中程度から低い関係性が近いほどテンプレ感が不利相手固有の出来事や言葉を入れる
弔意・励まし・深刻な相談返信かなり低い感情調整と関係維持が中心原則として人間が主文を書く

この整理はかなり妥当かと思います。たとえば、単発の信頼ゲームではAI支援の影響が小さかった一方、謝罪や対人的文章ではAI由来の開示が誠実さや信頼を下げやすく、職場の連絡文でもAI支援が強いほど送り手の思いやりや誠実さが疑われやすいと報告されています。さらに、日本のAI事業者ガイドラインは、AI出力を個人評価の参考にする場合には通知と人間の合理的判断を求めています。 

要するに、AIは下書き・整理・圧縮には強いが、感情・責任・関係修復が中心の場面ほど、人間が前面に出る必要があります。ここを誤ると面倒なところだけ自動化したと見られやすいです。 

AIで書いたかより重要な信頼条件

ここが本記事の中心です。
AI使用の有無だけでなく、受け手が自分はどう扱われたかを判断するうえで重要な条件として読むと分かりやすいと思います。 

個別性

相手の名前、日付、依頼内容、トラブルの具体点、過去のやり取りに正確に触れているかは、誠意の土台です。AI文章に違和感が出やすいのは、一般論だけが立派で、相手固有の事情に触れないときです。IUI 2026でも、対人的文脈ではAI著者開示のマイナスが強く、文脈的不適切さが不信の理由として挙がりました。 

責任主体

誰が判断し、誰が責任を持つのかが明確かどうかは、AI時代にむしろ重要性が増しています。日本のAI事業者ガイドラインは責任者の明示、責任分配の明確化、ステークホルダーへの具体的対応を明示的に求めています。採用・評価のような個人に影響する用途では、AIを使っている旨の通知と、人間による合理的判断が推奨されています。 

事実確認

生成AIは、事実に見える誤りやもっともらしい断定を返すことがあります。OpenAI、Google、Anthropicはいずれも、重要事項は確認すべきであり、モデルは誤情報を出しうると案内しています。誠意のあるメッセージは、感情語の量よりもまず、事実が合っていること、誤認があれば修正できることが前提です。 

配慮の具体性

「ご迷惑をおかけしました」「お気持ちお察しします」だけでは、相手は安心しにくいです。謝罪研究では、謝罪の効果は相手が感じる関係価値や今後の関係修復の見込みと結びついています。サービス回復研究でも、オンライン苦情対応では有能さだけを強調するより、温かさ志向の応答のほうが誠実さや好意的反応につながりやすいとされています。重要なのは、共感ワードを増やすことではなく、「何を確認し、どう対応し、どこまで責任を負うのか」を具体化することです。 

人間の最終判断

AIの出力を、そのまま送るのか、自分の言葉として編集し直すのか。この差は大きいです。OpenAIの共有ポリシーは公開前の手動レビューと最終責任の人間帰属を求め、NISTの生成AIプロファイルも、出力の出所、透明性、ラベル理解、真正性に対する利用者の反応まで継続的に測る必要を示しています。受け手が見ているのはAIを使ったかよりも、最後に人間が自分で引き受けたかです。 

AIで書いたメッセージが不誠実に見えやすい表現

ここで注意したいのは、この言い回しを使うとダメと単純化しないことです。問題は表現単体ではなく、文脈・事実・責任・対応が伴っているかです。以下のようなパターンは、AI生成だと特に空疎に見えやすい傾向があります。これは、IUI 2026の質的分析、謝罪研究、助言研究、サービス回復研究の知見をまとめたものです。 

まず、具体的な事情に触れない過剰な謝罪です。謝る対象が曖昧なまま「深くお詫び申し上げます」と続くと、責任を引き受けているというより、無難なトーンだけを選んだように見えます。相手が知りたいのは謝罪語の強さではなく、「何に対して」「何を認め」「どう直すのか」です。 

次に、定型的すぎる共感表現です。「お気持ちお察しします」「ご心痛いかばかりか存じます」は、場面によっては必要ですが、実際の理解や行動が伴わないと、感情の借り物に見えます。AI由来と分かった途端に心がこもっていないと感じられた参加者がいたのは、このズレをよく示しています。 

さらに、誰にでも送れそうな感謝文や、責任を曖昧にする受け身表現も危険です。「共有いただきありがとうございます」「適切に対応させていただきます」といった表現は便利ですが、相手固有の出来事や担当者名、期限、判断主体が抜けると、接客窓口の自動応答のように響きます。AI支援の度合いが高い職場メッセージほど、送り手の思いやりや誠実さが疑われやすいという結果とも重なります。 

また、実際の対応がないのに丁寧な言葉だけが続く文章も不信を呼びます。オンライン苦情対応研究では、温かさ志向の応答が好まれましたが、それは丁寧語を盛ればよいという意味ではありません。相手は温かい言い方がされたかだけでなく、対応の中身があるかを同時に見ています。 

最後に、事実確認が必要な場面で、もっともらしく断定する文章は要注意です。モデルは自信ありげに誤ることがあるため、重要な場面でそのまま送ると、誠意以前に信頼損失になります。これはAI文章の人間味の問題ではなく、単純な品質管理の問題でもあります。 

誤解しやすい論点

AIを使った文章はすべて不誠実である。
これは誤解です。単発で取引的な場面では、AI支援があっても信頼への悪影響が小さい研究がありますし、議事録や要約のような構造化タスクでは、むしろ有用性が高いです。問題は、人間の確認と責任が消えることです。 

人間が書けば必ず誠意がある。
これも誤解です。人間が書いても、事実誤認、責任回避、コピペ的テンプレート、相手固有事情への無理解があれば、誠意は伝わりません。謝罪が効くのは言い回しではなく、相手が感じる関係価値や修復意思を支えるからです。 

AIっぽさを消せば問題は解決する。
文体だけ直しても、責任主体、事実確認、個別事情、対応策が欠けていれば不誠実に見える可能性は残ります。2025年の助言研究では、同じAI文でも「AIだ」と分かると評価が下がりましたが、これは文章の質だけでなく、出所と真正性の問題があることを示しています。 

AI検出ツールで判定すればよい。
これも危険な単純化です。OpenAIは自社のAI文章判定器を低精度のため廃止しており、NAACL 2025の研究でも複数の検出器は実運用条件で感度と誤判定の両立が難しいと報告されています。Stanford HAIが紹介した研究では、非ネイティブ英語話者の作文が高率で誤判定される問題も指摘されました。AI使用の有無だけで誠意を判定するのは、技術的にも社会的にも危ういです。 

長文なら誠意がある。
長い文章は手間のシグナルになり得ますが、内容が一般論ばかりなら逆効果です。IUI 2026でも、対人的文脈ではAIの関与が努力不足や不適切として読まれやすいことが示されました。必要なのは長さではなく、相手に関係する具体性です。 

AI利用は必ず隠すべき、または必ず開示すべき。
これも二択ではありません。健康メッセージ研究では軽いネガティブバイアスが見られ、謝罪では開示がマイナスに働くこともありましたが、単発取引では影響が小さい結果もあります。重要なのは「何をどの程度AIに任せたか」「相手の権利や感情負担に関わるか」「誰が確認し責任を持つか」です。 

AIを使っても誠意を損ないにくくする実務上の考え方

ここでは文章術よりも、信頼を損なわない運用の観点で整理します。以下は一般的なコミュニケーション上の考え方であり、法的・労務的な助言ではありません。採用、ハラスメント、事故対応、クレーム、医療・教育・介護、個人情報を含む連絡は、社内ルールや専門家確認が前提です。 

まず、AIには下書き・要約・論点整理を任せるのが基本です。下書きの高速化は価値がありますが、最終文面をそのまま送ると、誤情報・文脈ズレ・責任曖昧化のリスクが残ります。NIST、OpenAI、Google、Anthropicは、いずれも透明性、確認、利用者側のレビューを重視しています。 

次に、相手固有の事実を必ず入れることです。名前、日付、依頼内容、受けた不利益、こちらの確認事項、今後の対応を具体化すれば、誰にでも当てはまる文章から抜けやすくなります。個別性は、文体の自然さよりも誠意の判断に効きます。 

さらに、感情語より具体的対応を優先するのが有効です。「申し訳ありません」を増やすより、「本日中に事実確認し、何時までに再連絡する」「判断は私が確認したうえで行った」と書くほうが、責任と配慮が伝わりやすいです。日本のAI事業者ガイドラインでも、責任者の明示や具体的対応が重視されています。 

また、AIが作った文章をそのまま送らないことが大切です。過剰に整った丁寧語、誰にでも通じる一般論、借り物の共感語を削り、自分が本当に言う文章まで下ろしてください。職場メッセージ研究では、AI支援が強くなるほど送り手の信頼性や思いやりが損なわれやすいとされます。 

そして、重要場面では開示や人間対応を検討するべきです。採用・不採用、評価、謝罪、クレーム、深刻な相談返信では、相手の権利や心理的負担が大きいからです。日本のガイドラインは、個人評価にAIを使う場合の通知と人間判断を重視し、OECDもAIとの相互作用の周知や、異議申し立て可能性につながる情報提供を求めています。 

最後に、相手の反応を見て修正する視点も欠かせません。完成度の高い文章を作ることと、信頼を維持することは同じではありません。AIリテラシーが高い受け手は寛容な場合がありますが、感情的場面ではなお厳しい反応が起こり得ます。伝わったかどうかで見直す運用が必要です。

AI利用を開示すべきか

AI利用の開示は、隠すか、明かすかの単純な道徳問題ではありません。大事なのは、相手がそのAI利用を想定しているか、そのメッセージが権利・評価・重大な感情負担に関わるか、ルールがあるか、そして人間の確認がどこまで入っているかです。 OECDは、AIとの相互作用であることをステークホルダーに知らせることを含む透明性を掲げ、日本のAI事業者ガイドラインも、AI利用の事実や範囲、適切な使用方法などの情報提供を挙げています。 

ただし、研究を見ると、開示は一律にプラスではありません。AI開示があると、誠実さ・真正性・信頼の評価が下がる研究が複数ありますし、謝罪では自己開示がその低下を打ち消さなかった研究もあります。一方で、単発の取引的場面では、開示があっても信頼に大きな影響が出ないケースもありました。 

そのため、実務的には「AIで作りました」とだけ書くより、「内容は私が確認しました」「この判断は当社として行いました」のように、誰が確認し、誰が責任を持つのかを示すほうが有効な場面があります。逆に、自動応答、AIチャットボット、個人評価に関わる処理、リアルな合成コンテンツのように、相手の判断に直接影響する場合は、透明性の重要度が上がります。EU AI Actは段階適用中で、透明性要件の一部は2026年8月から適用予定です。YouTubeやTikTokでも、一定のリアルなAI生成・改変コンテンツには表示やラベルが求められています。 

結論として、すべてのAI利用を必ず開示すべきとは限りません。しかし、相手の権利、判断、感情負担に関わるほど、透明性と人間の確認を重視すべきです。開示の有無より先に、「その言葉に誰が責任を持つか」を設計してください。 

個人、企業、社会への影響

個人レベルでは、メール、SNS、就職活動、依頼文、謝罪文など、日常的な文章作成の負担は確実に下がっています。米Pew Research Centerでは、2025年時点で米国の就業者の28%が仕事でChatGPTを使ったことがあると答え、別のPew調査では、仕事の少なくとも一部が現在AIで行われていると答えた労働者が16%でした。日本でもIPAの2025年調査で、業務でAIを使う人の間では生成AIが業種・企業規模を超えて広く使われ、主用途は情報収集と文書作成だと整理されています。 

企業レベルでは、カスタマーサポート、採用、広報、営業、社内連絡でAI活用が進むほど、効率化と信頼維持の両立が課題になります。Microsoftの2026年Work Trend Indexの調査対象は、10市場・2万人の「AIを職場で使う知識労働者」であり、もはやAI活用そのものより、人間の役割設計が焦点になっています。一方、日本のガイドラインやNISTの生成AIリスク管理資料は、責任者、文書化、透明性、モニタリング、ステークホルダー対応を明示しています。つまり、企業に必要なのは導入可否より運用設計です。 

社会レベルでは、人が書いた言葉とAIが補助した言葉の境界が曖昧になっています。HancockらのいうAI-MCは、すでにスペル修正や自動返信を超えて、対人印象や関係性そのものを形づくる段階に入っています。だから今後問われるのは、AIを使ったかどうかだけではなく、どう使い、誰が責任を持ち、相手にどう説明するかです。 

今後の見通し

ここからは推測を含む見通しです。確定した未来予測ではなく、研究と制度動向から見える分岐として読んでください。 

楽観シナリオでは、AIが下書き、翻訳、要約、記録整理を肩代わりし、人間は相手の事情確認や難しい説明、謝罪やフォローにより時間を使えるようになります。この方向に進む条件は、企業が人間レビューを前提にし、AIの使いどころを定型・補助中心に設計し、受け手もAI支援を現実的に受け入れていくことです。単発の取引的やり取りでAI支援の悪影響が小さかった研究は、この可能性を支えます。 

中立シナリオでは、AI文章は日常化する一方、重要場面だけは人間の確認・編集・責任表示が強く求められるようになります。これはもっとも現実的なシナリオで、すでに研究でも、情報的文脈と対人的文脈で受容差が出ています。AIリテラシーが上がれば一部の拒否感は薄れますが、謝罪や採用などの高負荷場面では慎重さが残るでしょう。 

慎重シナリオでは、AIによる大量・定型的なメッセージが増え、受け手が「どうせAIだろう」と先回りして疑うようになります。そうなると、本当に丁寧に確認して書いた文章まで一括で信用されにくくなり、信頼コストが上がります。AI検出に頼る実務が広がれば、誤判定や偏りによる新たな不信も増えかねません。 

分岐条件は明確です。透明性が文脈に応じて設計されるか。企業が責任者と確認プロセスを設けるか。AI生成文の品質が上がっても、乱用を抑える規範が育つか。受け手のAIリテラシーが進むか。そして、EUや日本、主要プラットフォームのように、表示や説明責任に関するルールが実装されるかです。 

よくある疑問Q&A

Q.AIが書いたメッセージは本当に誠意がないのですか。
そうとは限りません。問題はAI使用そのものより、人間の確認・責任・個別事情への配慮が見えないことです。取引的な場面では悪影響が小さい研究もあります。 

Q.なぜAI文章は冷たく感じられるのですか。
AI文は整っていても、努力の痕跡、本人の迷い、相手固有事情への触れ方が薄くなりやすいからです。AI開示後に、信頼・思いやり・好感度が落ちる研究もあります。 

Q.ChatGPTで謝罪文を書くのは失礼ですか。
下書きに使うこと自体は一概に失礼ではありませんが、そのまま送るのは慎重であるべきです。謝罪は関係修復と責任表明が中心で、AI由来と分かると誠実さが下がりやすい研究があります。 

Q.AIで書いたメールは相手にバレますか。
必ず見抜かれるわけではありません。ただ、AIっぽさよりも、具体性不足や責任曖昧化、文脈ズレのほうが違和感として伝わりやすいです。検出ツールも万能ではありません。 

Q.AI時代のコミュニケーションはどう変わりますか。
文章力だけでなく、責任の所在、透明性、確認プロセス、相手の権利や負担への配慮がより重視される方向に進む可能性が高いです。政策でも、透明性・説明可能性・人間の監督が共通テーマになっています。 

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