秘密計算関連銘柄を見る際は、暗号化技術を研究している会社と、顧客が利用できるサービスを提供している会社を分けることが重要です。日本株では、MPCとTEEを提供するNEC、秘密分散型MPC・秘密計算AI・標準化を進めるNTT、PETsを組み込んだデータクリーンルームを運営するKDDIが、テーマとの事業上の直接性が比較的高い企業です。日立製作所も秘匿AI創薬基盤を具体化していますが、調査基準日時点ではサービス提供前の段階を含むため、商用開始と受注の確認が必要です。
サプライチェーンでは、準同型暗号の三菱電機、データスペースと連合学習の富士通、SIを担うTISI、プライバシー保護連合学習のGMOインターネットグループが関係します。ただし、研究・実証から売上への距離は企業ごとに異なります。TOPPANホールディングスは秘密計算を使うID技術との接点がありますが、商用実績の裏付けが限定的で、思惑先行に注意したい位置づけです。
今後は、技術発表の件数よりも、正式提供、導入顧客、有償契約、受注額、継続利用、関連売上の開示を確認したいところです。AI規制や個人情報保護の強化はPETs需要を支える可能性がありますが、政策や技術の普及が、そのまま個別企業の業績拡大を意味するわけではありません。
本ブログに掲載している情報は、筆者の個人的な見解および情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や銘柄の売買を推奨するものではありません。掲載内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報に基づいて生じたいかなる損失についても責任を負いかねます。投資判断はご自身の責任において行ってください。
秘密計算・コンフィデンシャルコンピューティング関連テーマの整理
テーマの概要
秘密計算は、データの内容を利用者やシステム運用者に見せないまま、集計、照合、機械学習、AI推論などを行う技術群です。保存中と通信中だけでなく、通常は復号が必要になる計算中のデータを守ることが中心となります。コンフィデンシャルコンピューティングは、一般にはハードウェアで隔離・検証されたTEE内で計算中のデータを保護する考え方を指します。CCCも、保存・通信の暗号化で残る利用中のデータの保護を主な役割と定義しています。
本記事では、狭義のTEEだけでなく、秘密分散、MPC、準同型暗号、プライバシー保護連合学習、匿名化、差分プライバシーを含むPETs全体を扱います。主な顧客は、金融、医療、創薬、製造、通信、小売、広告、公共機関などです。サプライチェーンは、暗号アルゴリズムや半導体から、クラウド基盤、ミドルウェア、システム構築、データクリーンルーム、業界別アプリケーション、監査・運用へつながります。
初心者が誤解しやすいのは、暗号化して保存することと、暗号化・秘匿したまま計算することが別である点です。また、連合学習はデータを中央に集めませんが、学習パラメータから情報が推測される可能性があるため、それだけで完全なプライバシー保護になるとは限りません。
主な方式の違い
| 方式 | 仕組み | 主な長所 | 主な制約・注意点 |
|---|---|---|---|
| 秘密分散 | データを単独では意味を持たない複数の断片に分け、異なるサーバーなどへ保管する | 一部の断片が漏れても元データを復元しにくい | 秘密分散だけでは複雑な計算を行えず、MPCと組み合わせることが多い |
| MPC・マルチパーティ計算 | 複数の参加者やサーバーが、それぞれの入力を開示せず共同計算する | 企業横断の照合・集計・AI分析に向く | 通信回数、参加者数、演算内容によって処理負荷が大きくなる |
| TEE・信頼実行環境 | CPUやGPU内に隔離された実行領域を設け、コードとデータを保護する | 既存アプリを移行しやすく、比較的幅広い処理に対応できる | 半導体、ファームウェア、構成証明を信頼する必要があり、サイドチャネル対策も必要 |
| 準同型暗号 | 暗号文を復号せず、暗号化された状態で演算する | 管理者やクラウド事業者にも平文を見せず処理できる | 演算の種類とデータ量によっては計算負荷が大きい |
| 連合学習 | データを各組織・端末に残し、モデル更新情報を集約して学習する | 生データの中央集中を避けられる | 更新情報からの漏えい対策として、暗号化、秘密集約、差分プライバシーなどを併用する場合がある |
| 匿名化・差分プライバシー | 識別子を削除・加工したり、統計結果へノイズを加えたりする | 統計公開や大規模分析で活用しやすい | 匿名化の不備による再識別や、ノイズによる精度低下とのバランスが課題 |
NECはMPCとTEEの双方を提供し、用途や処理速度に応じた選択を示しています。NTTはISO標準準拠の秘密分散とMPCを採用し、KDDIはデータクリーンルームで秘密計算を含むPETsを利用しています。方式名が同じでも、信頼する主体、脅威モデル、処理性能、利用可能な演算、既存システムへの組み込みやすさが異なるため、単純な優劣では比較できません。
なぜ今注目されているのか
生成AIや機械学習の精度を高めるには、企業内外に分散した大量のデータが必要です。しかし、患者情報、取引情報、製造条件、研究データ、顧客行動などは、個人情報保護、営業秘密、契約上の制約により、そのまま共有できません。AI利用が広がるほど、データを集める価値と、集めるリスクの衝突が大きくなり、データを中央へ移さず、平文を見せずに分析する技術の必要性が高まります。日立のAI創薬基盤や、富士通のデータスペース向けAI研究も、組織間に分散するデータやAIモデルを安全に連携させることを目的としています。
政策・規制面では、経済産業省と総務省が2026年3月に「AI事業者ガイドライン第1.2版」を公表し、AIの安全・安心な活用に向けたガバナンスを更新しました。個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する公開資料でも、秘密計算などのPETsを前提とした企業間データ結合が論点として取り上げられています。ただし、PETs導入が法的義務になったわけではなく、技術を使えば同意や目的制限などの法的要件が自動的に不要になるわけでもありません。
海外ではEU Data Actが、機密性を維持しながらデータ保有者と利用者の間のデータ移転を促進する枠組みを整えています。CCCではTEEを用いたコンフィデンシャルコンピューティングの普及・標準化が進められ、主要クラウドやCPU・GPUメーカーも対応基盤を提供しています。国内企業にとっては、海外製ハードウェアやクラウドを利用しながら、業界知識、暗号技術、システム構築、ガバナンスを組み合わせる競争になります。
日本株で関連銘柄を見る視点
中核事業型は、秘密計算、データクリーンルーム、秘匿AIなどを顧客へ直接提供する企業です。ただし、大手IT企業では関連サービスが全社売上の一部にとどまり、テーマへの直接性が高くても業績影響が大きいとは限りません。
重要サプライチェーン型は、準同型暗号、連合学習、データスペース、セキュリティ設計、システムインテグレーションなど、秘密計算の実装に必要な技術・基盤を提供する企業です。研究成果がサービス受注へ移行するかが確認点になります。
周辺恩恵型は、クラウド運用、監査、認証、データガバナンス、顧客産業などを通じて需要を取り込む企業です。ただし、一般的なクラウドやセキュリティ事業を行っているだけでは、秘密計算関連銘柄とは判断できません。
思惑先行注意型は、技術開発や実証への接点は確認できても、サービス開始、顧客採用、受注、売上規模が確認できない企業です。テーマに関係していることと、企業業績への影響が大きいことは同じではありません。企業を見る際は、技術発表の有無よりも、利用料金、導入顧客、継続契約、受注額、関連売上の開示へ進んでいるかを確認する必要があります。
関連銘柄一覧
| 表示順 | 関連度 | 位置づけ | 証券コード | 会社名 | 市場区分 | 関連する理由 | 注目ポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | A | 中核事業型 | 6701 | 日本電気 | 東証プライム | MPC方式とTEE方式の秘密計算を顧客向けに提供 | 複数方式、SI、金融・医療・製造用途 | 関連売上、導入社数は非開示 |
| 2 | A | 中核事業型 | 9432 | NTT | 東証プライム | 秘密分散型MPC、秘密計算AI、標準化をグループで展開 | ISO標準、特許、通信基盤との統合 | 研究成果と親会社業績の距離 |
| 3 | A | 中核事業型 | 9433 | KDDI | 東証プライム | 秘密計算を含むPETsを用いたDCRを提供 | 保有データ、提携企業、マーケティング用途 | DCR単独売上非開示、内部管理問題 |
| 4 | A | 中核事業型 | 6501 | 日立製作所 | 東証プライム | 秘匿AI創薬基盤を開発し、2026年度のサービス提供を目指す | AI創薬、検索可能暗号、Lumadaとの接続 | 提供前段階、売上・受注未確認 |
| 5 | B | 重要サプライチェーン型 | 6503 | 三菱電機 | 東証プライム | 準同型暗号による秘匿分析技術を研究開発 | 製造、サプライチェーン、暗号研究 | 商用製品・受注の開示が限定的 |
| 6 | B | 重要サプライチェーン型 | 6702 | 富士通 | 東証プライム | データスペース向け分散型連合学習とAI Spacesを研究 | 欧州連携、標準化、製造・医療用途 | 研究・実証段階が中心 |
| 7 | B | 重要サプライチェーン型 | 3626 | TISI | 東証プライム | EAGLYSと秘密計算・量子暗号通信の連携環境を構築 | SI力、金融顧客、外部技術との統合 | 発表が古く、継続的な商用実績が不明 |
| 8 | B | 重要サプライチェーン型 | 9449 | GMOインターネットグループ | 東証プライム | 子会社がNICTのプライバシー保護連合学習技術を承継 | 暗号・AI・セキュリティの実装支援 | 子会社事業で親会社への影響不明 |
| 9 | C | 思惑先行注意型 | 7911 | TOPPANホールディングス | 東証プライム | 子会社が秘密計算を用いた分散型ID技術を共同開発 | 本人確認、VC、鍵管理との組み合わせ | 試験提供後の商用実績を確認できない |
銘柄別解説
日本電気(6701)|関連度A・中核事業型
会社概要
日本電気は、官公庁、通信、金融、製造、流通、医療などを対象に、ITサービス、ネットワーク、サーバー、AI、サイバーセキュリティを提供する総合IT企業です。秘密計算は独立した報告セグメントではなく、ITサービスやセキュリティ関連ソリューションの一部に位置づけられます。企業全体では大規模システム、通信、防衛・航空宇宙など幅広い事業を持つため、秘密計算単独の業績寄与は公開情報から分離できません。調査基準日時点で東証プライムへの上場が確認されています。
テーマとの関連性
NECは、秘密分散を利用するMPC方式と、Intel SGXなどの隔離実行領域を利用するTEE方式の双方を顧客向けに提供しています。安全性、処理速度、アプリケーションの自由度に応じて方式を選択し、構想策定からシステム開発、実運用まで支援すると説明しています。
MPC方式では、データを複数サーバーに分散し、各サーバーを協調させて元データを開示せずに計算します。TEE方式では、セキュアなメモリ領域内でPythonアプリケーションなどを実行し、既存の統計解析・機械学習を移行しやすくしています。金融、医療、マーケティング、産業機器の予兆保全、個人与信、サプライチェーン最適化などを想定用途として挙げています。
2025年11月には、研究データの安全な流通を支援するオープンサイエンス関連ソリューションを発表し、秘密計算を含むデータ利活用技術を組み込んでいます。ただし、同発表で示された売上目標は複数のオープンサイエンス関連ソリューション全体の目標であり、秘密計算単独の売上目標ではありません。
関連事業の売上高、受注額、導入企業数は開示されていません。公式ページに掲載されている一部の利用場面は想定ユースケースであり、すべてが実際の納入事例を示すものではありません。
関連度Aの判定理由: MPCとTEEを実際の顧客向けソリューションとして提供し、コンサルティングから実装までの接続構造が明確です。直接性と一次情報の強さは高い一方、全社業績への寄与は確認できません。
注目ポイント
- MPCとTEEを一社で扱い、顧客の脅威モデルや処理性能に応じて選択できる点
- 官公庁、金融、医療、製造など、機密データを持つ既存顧客基盤への横展開
- AIや機械学習を秘密計算環境で実行する案件が、PoCから継続利用へ移行するか
- オープンサイエンス、医療データ連携、サプライチェーン分析での導入事例の開示
- ソフトウェア利用料、クラウド利用料、運用保守など、継続収益への接続が今後の確認点
注意点
- 秘密計算関連の売上、利益、受注残、契約社数は開示されていない
- 公式ページのユースケースには想定例が含まれ、実納入と区別する必要がある
- TEEは海外半導体やソフトウェア企業の技術基盤に依存する部分がある
- MPCは演算内容やデータ量によって処理速度・通信コストが増える
- NEC全体では幅広い事業を持つため、秘密計算市場の拡大がそのまま全社業績を大きく変えるとは限らない
参考情報
- 日本電気|NEC 秘密計算|2026年8月4日確認|MPC方式、TEE方式、用途、実装支援の内容を確認。
URL:https://jpn.nec.com/secure-computation/index.html - 日本電気|オープンサイエンスを支援するソリューション群の提供開始|2025年11月14日|秘密計算を含む研究データ流通支援と、複数サービス全体の事業目標を確認。
URL:https://jpn.nec.com/press/202511/20251114_01.html - 日本電気|有価証券報告書・半期報告書|2026年6月18日更新|最新の事業構成とリスク情報の確認先。
URL:https://jpn.nec.com/ir/library/securities.html - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・日本電気|2026年8月4日確認|証券コード6701、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=67010
NTT(9432)|関連度A・中核事業型
会社概要
NTTは、通信、データセンター、法人IT、研究開発、モバイル、グローバルITサービスなどを展開するNTTグループの中核会社です。秘密計算は、NTTの研究所で基礎技術を開発し、グループ会社が法人向けサービスやシステムへ実装する構造です。2025年9月にNTTデータグループが上場廃止となったため、調査基準日時点では同社を独立銘柄として重複掲載せず、NTTグループ内の関連事業として扱います。
テーマとの関連性
NTTは、ISO標準準拠の秘密分散を基盤とするMPCを研究開発しています。複数のサーバーが暗号化された断片を交換しながら計算することで、処理中も元データを平文に戻さない設計です。NTTの公式R&Dページによると、2000年頃から研究を続け、100件を超える特許技術を保有し、グループ会社による「析秘」サービスとして実用化した実績があります。
NTTは、学習データだけでなくAIモデルも秘匿できる秘密計算AIを開発しています。2024年6月には、IOWNオールフォトニクス・ネットワークの低遅延通信を利用し、分散データセンター間で秘密計算AIを動作させる実証を発表しました。MPCはサーバー間通信が性能を左右するため、低遅延ネットワークと組み合わせる構造には技術的な合理性があります。
標準化では、秘密分散に関するISO/IEC 4922シリーズへの関与を公表しています。標準化は、企業間で安全性の評価方法や用語をそろえ、調達時の比較をしやすくする可能性があります。ただし、国際標準への採用が直ちに受注や売上を保証するものではありません。
秘密計算関連の売上高、契約件数、親会社への利益寄与は開示されていません。また、グループ再編・商号変更が続いているため、過去のサービス名や提供主体が現在も同じ名称・体制で継続しているかは、個別案件ごとに確認が必要です。
関連度Aの判定理由: 長期の研究蓄積、MPCの実用化、秘密計算AI、国際標準化、ネットワークとの統合を一次情報で確認できます。事業上の直接性は高いものの、NTT連結業績への寄与は分離開示されていません。
注目ポイント
- ISO/IEC 4922シリーズを含む秘密分散・MPC標準化への継続的な関与
- 秘密計算AIで、学習データとAIモデルの双方を秘匿できる点
- IOWNやデータセンター間ネットワークの低遅延化が、MPCの処理性能改善につながるか
- 金融、医療、通信、不正検知、組織横断分析などでの商用導入件数
- NTTデータグループの完全子会社化後、法人ITと研究成果の事業化が加速するか
注意点
- 研究開発成果、特許数、国際標準化と売上規模は別に判断する必要がある
- サービス提供主体がグループ会社に分散し、親会社への収益接続が見えにくい
- 過去の「析秘」実用化実績について、現行の契約数や売上は確認できない
- MPCの性能は、計算内容、サーバー数、通信距離によって大きく異なる
- NTTグループ全体の事業規模に対し、秘密計算単独の影響は現時点で不明
参考情報
- NTT社会情報研究所|秘密計算|2026年8月4日確認|ISO標準準拠の秘密分散、MPC、秘密計算AI、実用化実績を確認。
URL:https://www.rd.ntt/sil/project/sc/secure_computation.html - NTT|秘密分散技術の国際標準ISO/IEC 4922-1発行に関する発表|2023年9月15日|秘密分散の国際標準化への関与を確認。
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/09/15/230915a.html - NTT|秘密計算技術の国際標準化に関する発表|2024年3月21日|NTT技術のISO標準への反映を確認。
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/03/21/240321b.html - NTT|IOWN APNによる秘密計算AI分析環境の実証|2024年6月12日|分散データセンターと低遅延通信の組み合わせを確認。
URL:https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/06/12/240612b.html - 東京証券取引所|株式会社NTTデータグループの上場廃止決定|2025年8月29日|2025年9月26日の上場廃止を確認。
URL:https://www.jpx.co.jp/news/1023/20250829-12.html
KDDI(9433)|関連度A・中核事業型
会社概要
KDDIは、携帯通信、固定通信、法人向けネットワーク、クラウド、IoT、金融、エネルギー、データ活用などを展開する総合通信会社です。秘密計算との主な接点は、通信契約や顧客接点から得られるデータと、提携企業のデータを安全に分析するデータクリーンルームです。2026年3月末時点で約40万社の法人顧客を持つと公表しており、法人基盤への展開余地はありますが、DCRの売上規模は開示されていません。
テーマとの関連性
KDDIは、企業が保有する個人情報を外部へ提供せず、KDDIの情報と組み合わせて分析するDCRを提供しています。特許取得済みの加工技術を使い、秘密計算などのPETsを活用して不可逆的な加工を施し、各社データを専用環境で管理すると説明しています。提携先としてJR東日本とアダストリアを掲載しています。
用途は、顧客理解、新商品開発、需要予測、キャンペーン企画などです。KDDIの場合、秘密計算ソフトウェアを単体販売するというより、通信会社が持つデータ、プライバシーガバナンス、分析環境を一体化したデータ連携サービスとして提供している点が特徴です。
売上への接続は、DCRの利用料金、データ分析支援、広告・マーケティング支援、法人契約などが考えられます。ただし、料金体系、契約社数、DCR単独の売上高、利益率は開示されていません。提携企業が掲載されているため、単なる研究発表より商用段階に近いと判断できますが、全社業績への重要度は不明です。
なお、KDDIでは連結子会社の不適切取引などを受けて過年度決算が訂正され、JPXは2026年4月30日に改善報告書の提出と上場契約違約金9,120万円を求めました。秘密計算事業そのものの問題ではありませんが、内部統制、開示の信頼性、子会社管理を評価する上で無視できない事項です。
関連度Aの判定理由: 秘密計算を含むPETsを現行のDCRで利用し、提携企業と具体的な用途を公開しています。テーマとの直接性は高い一方、DCRの事業規模と全社利益への寄与は確認できません。
注目ポイント
- JR東日本、アダストリアに続くDCR提携企業の増加
- 通信データ、位置情報、購買データなどを組み合わせた新用途の開示
- DCRが単発分析から継続利用型サービスへ移行するか
- 法人顧客基盤を利用し、金融、小売、交通、自治体へ展開できるか
- プライバシー保護とデータ利用に関する説明・同意・ガバナンス体制
注意点
- DCRの利用料金、契約数、売上高、利益率は開示されていない
- 「個人を特定できない加工」と、個人情報保護法上の匿名加工情報などの法的区分は同義とは限らない
- 秘密計算を利用しても、利用目的、同意、第三者提供、安全管理措置の検討が不要になるわけではない
- 大手クラウド、広告プラットフォーム、他社DCRとの競争がある
- 2026年の過年度訂正とJPX措置を踏まえ、内部統制改善の進捗を確認する必要がある
参考情報
- KDDI|DCR(データクリーンルーム)|2026年8月4日確認|秘密計算を含むPETs、安全管理措置、提携先企業を確認。
URL:https://www.kddi.com/corporate/public/privacy-portal/dcr/ - KDDI|IRライブラリ|2026年5月12日・6月更新|2026年3月期決算、最新有価証券報告書、訂正資料の確認先。
URL:https://www.kddi.com/corporate/ir/ir-library/ - 東京証券取引所|改善報告書の徴求及び上場契約違約金の徴求:KDDI|2026年4月30日|開示違反と内部管理上の問題を確認。
URL:https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260430-15.html - 東京証券取引所|改善報告書の公衆の縦覧:KDDI|2026年6月2日|改善報告書提出後の手続きを確認。
URL:https://www.jpx.co.jp/news/1023/20260602-12.html - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・KDDI|2026年8月4日確認|証券コード9433、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=94330
日立製作所(6501)|関連度A・中核事業型
会社概要
日立製作所は、デジタルシステム、エネルギー、鉄道、産業機器、ビルシステムなどを展開し、Lumadaを軸にデータと現場知識を組み合わせる事業構造を持ちます。秘密計算との接点は、検索可能暗号などの秘匿情報管理技術、プライバシー保護データ分析、バイオ医薬・AI創薬向け基盤です。関連技術は全社のデジタル事業や研究開発の一部であり、単独の売上・受注は開示されていません。
テーマとの関連性
日立は2026年4月、製薬会社や大学が持つ研究データと、AI創薬スタートアップのAIモデルを互いに開示せず連携させる「秘匿AI基盤」の開発を発表しました。MOLCUREとのPoCでは、学習データとAIモデルを秘匿したまま学習・推論できることを確認し、2026年度から「OI創薬基盤サービス」として提供を開始することを目指しています。
同基盤では、日立の秘匿情報管理技術を利用し、創薬データとAIモデルの双方を保護します。初期対象は抗体で、将来的には核酸、ペプチドなどへの拡張を想定しています。製薬会社、AI創薬企業、CRO、バイオ企業、大学などが主要顧客候補です。
一方、調査基準日時点で確認できる公式発表は「開発」「提供開始を目指す」という段階です。PoCの成功は確認されていますが、有償提供の開始、受注額、利用企業数、売上計上は確認できません。したがって、テーマとの直接性は高いものの、収益化段階については慎重に判断する必要があります。
日立は検索可能暗号や生体情報を保護するPBIなど、データを秘匿しながら照合・検索する技術を継続的に開発してきました。これらの技術蓄積は秘匿AI基盤の裏付けになりますが、各技術の売上規模は分離開示されていません。
関連度Aの判定理由: 秘匿AIを具体的な創薬サービスへ接続する計画とPoC結果が公表され、顧客、用途、提供時期の方向性が明確です。ただし、調査基準日時点では商用売上を確認できないため、Aランク内でも収益化前の企業として見る必要があります。
注目ポイント
- 2026年度中にOI創薬基盤サービスの提供が実際に開始されるか
- MOLCURE以外のAI創薬企業、製薬会社、大学の参加
- 抗体から核酸・ペプチドなどへの対象拡大
- LumadaやHMAX Industryとの組み合わせによる継続契約化
- PoCから有償契約、受注、売上計上へ移行したことを示す開示
注意点
- 調査基準日時点では「提供開始を目指す」段階であり、商用開始を断定できない
- 具体的な受注額、利用料金、顧客名、売上高は公表されていない
- AI創薬は研究期間が長く、基盤導入と医薬品の成功は別のリスクを持つ
- 製薬企業が機密データを外部基盤へ接続するまでに、法務・セキュリティ審査が必要
- 日立全体の事業規模に対し、初期の業績寄与は限定的となる可能性がある
参考情報
- 日立製作所・MOLCURE|AI創薬を加速する「秘匿AI基盤」を開発へ|2026年4月16日|PoC結果、対象顧客、2026年度のサービス提供方針を確認。
URL:https://www.hitachi.com/ja-jp/press/articles/2026/04/0416/ - 日立製作所研究開発グループ|量子計算機でも解読が困難な検索可能暗号技術|2025年2月18日|秘匿したデータを検索する暗号技術の研究を確認。
URL:https://rd.hitachi.co.jp/_ct/17750027 - 日立製作所|生体情報を安全に利用するPBIの事業展開|2021年3月12日|生体情報を暗号鍵として扱わない秘匿認証技術の商用展開を確認。
URL:https://www.hitachi.com/ja-jp/press/articles/2021/03/0312/ - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・日立製作所|2026年8月4日確認|証券コード6501、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=65010
三菱電機(6503)|関連度B・重要サプライチェーン型
会社概要
三菱電機は、ファクトリーオートメーション、電力、鉄道、ビル、空調、宇宙・防衛、半導体、情報通信などを展開する総合電機メーカーです。秘密計算との接点は、情報技術総合研究所などで進める準同型暗号、秘匿AI分析、ブロックチェーンを組み合わせたサプライチェーンデータ連携です。関連技術は研究開発ポートフォリオの一部であり、独立した事業セグメントや売上項目ではありません。
テーマとの関連性
三菱電機は、準同型暗号を、機微データを秘匿したまま分析処理を外部委託するための技術として公式研究開発ページで説明しています。さらに、量子コンピューター上の計算を秘匿化する量子完全準同型暗号など、将来技術の研究も進めています。
同社の技報では、複数の倉庫が持つ在庫データを暗号化した状態で集計し、全体在庫など開示可能な情報だけを算出する技術が示されています。サプライチェーン参加企業は、在庫、原価、製造能力などを競合企業へ直接開示したくないため、準同型暗号とブロックチェーンの組み合わせは、共同最適化と営業秘密保護の両立を狙うものです。
ただし、公開資料の中心は研究開発成果です。調査基準日時点で、準同型暗号単独の製品名、利用料金、継続的な顧客契約、受注額を十分に確認できませんでした。製造業向けシステムへ組み込まれれば既存顧客基盤との接続可能性がありますが、公開情報だけでは収益化時期を判断できません。
関連度Bの判定理由: 準同型暗号と具体的な製造・サプライチェーン用途を一次情報で確認できます。一方、商用サービスと売上への接続が明確でないため、中核事業型ではなく重要技術型としてB判定としました。
注目ポイント
- 準同型暗号が研究成果から法人向け製品・サービスへ移行するか
- FA、製造実行システム、サプライチェーン管理との統合
- 在庫、CO₂排出量、品質、設備稼働データなどへの用途拡大
- ブロックチェーンやデータスペース標準との相互運用
- 顧客実証、有償導入、受注を示す開示が今後の確認点
注意点
- 公開情報の中心が研究開発で、商用化状況が明確でない
- 関連売上、受注、顧客名、導入件数が開示されていない
- 準同型暗号は計算負荷が大きく、利用可能な演算や応答時間に制約がある
- 製造データ連携では、暗号方式だけでなくデータ標準化と契約設計が必要
- 企業全体への業績寄与は現時点では不明
参考情報
- 三菱電機|量子セキュリティ|2026年8月4日確認|準同型暗号による秘匿分析と量子完全準同型暗号の研究を確認。
URL:https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/quantum/security/index.html - 三菱電機|サプライチェーン強靱化に向けたブロックチェーン技術と準同型暗号技術を組み合わせた秘匿データ開示技術|2024年|暗号化在庫データの集計用途を確認。
URL:https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2024/2401101.pdf - 三菱電機|情報技術総合研究所紹介パンフレット|2026年|秘匿データ開示技術を含む研究開発分野を確認。
URL:https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/laboratory/information_technology/pdf/information_technology_brochure.pdf - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・三菱電機|2026年8月4日確認|証券コード6503、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=65030
富士通(6702)|関連度B・重要サプライチェーン型
会社概要
富士通は、企業・官公庁向けITサービス、クラウド、ネットワーク、コンピューティング、AI、コンサルティングを展開する総合IT企業です。秘密計算との接点は、企業がデータの主権を維持したまま連携するデータスペース、分散型連合学習、AIモデル共有、プライバシー保護技術です。関連研究はFujitsu Researchが中心となり、欧州研究機関や大学との共同開発を進めています。
テーマとの関連性
富士通はFraunhofer ISSTなどと、機密性、データ主権、規制を考慮しながら、企業間のAIを連携させる「AI Spaces」を提案しています。製造の製品開発、サプライチェーンの需要対応、医療診断支援、スマートビル運用など、単一企業ではデータが不足する用途を想定しています。
2025年には、データスペース内でプライバシーに配慮した主権型連合学習を行う分散アーキテクチャを公表しました。2026年には、共同学習済みモデルから特定参加者のデータ寄与を除去する「連合アンラーニング」の研究成果も発表されています。データ提供者が後から参加を取り消す場合などに、モデルを一から再学習せず影響を除去することを狙う技術です。
富士通は、実験と標準化団体への提案を進める方針を示しています。一方、AI Spacesや分散型連合学習について、調査基準日時点で一般提供サービスの利用料金、顧客数、受注、売上を確認できません。研究・標準化段階が中心であるため、テーマとの技術的な関連性と業績寄与を分ける必要があります。
関連度Bの判定理由: データスペース、分散型連合学習、プライバシーを保護した組織間AIという重要な中流技術を開発しています。ただし、現時点では研究・実証・標準化が中心で、商用売上への接続は不明です。
注目ポイント
- AI SpacesがFujitsu UvanceやFujitsu Kozuchiの商用サービスへ組み込まれるか
- 欧州のデータスペース政策・標準との連携
- 製造、医療、サプライチェーンでの実証参加企業
- 連合アンラーニングを含むデータ削除・同意撤回機能の実用化
- 標準化提案が調達要件や商用案件へつながるか
注意点
- 研究成果やホワイトペーパーが中心で、一般提供開始を確認できない
- 関連売上、受注額、契約企業数は開示されていない
- 連合学習だけでは更新情報からの漏えいを完全に防げない
- 複数国・複数企業をまたぐデータ連携では、法制度と契約の調整が必要
- 富士通全体への利益寄与は現時点では不明
参考情報
- 富士通|White Paper on AI Spaces with Fraunhofer ISST and the University of Tokyo|2026年4月21日|企業間AI連携、機密性、データ主権、標準化方針を確認。
URL:https://global.fujitsu/en-global/technology/research/article/topics/202604-ai-spaces - 富士通|Decentralized and Collaborative AI for Data Spaces|2025年7月10日|データスペース向け分散型・主権型連合学習の研究を確認。
URL:https://global.fujitsu/en-global/technology/research/article/topics/202507-decentralised-ai-for-dataspaces - Fraunhofer ISST|Removing Corporate Data from AI Models|2026年4月1日|富士通との連合アンラーニング研究を確認。
URL:https://www.isst.fraunhofer.de/en/publications/press_releases/2026/research-news_removing-corporate-data-from-ai-models.html - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・富士通|2026年8月4日確認|証券コード6702、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=6702
TISI(3626)|関連度B・重要サプライチェーン型
会社概要
TISIは、金融、決済、製造、流通、公共などのシステム開発、クラウド、データセンター、業務サービスを展開するITサービス企業です。過去の公式発表はTIS名義ですが、調査基準日時点では公式サイトとJPXの上場会社表示がTISI株式会社となっています。秘密計算との接点は、非上場の秘密計算企業EAGLYSとの技術連携、量子暗号通信との組み合わせ、法人システムへの実装検討です。
テーマとの関連性
旧TISとEAGLYSは2022年、秘密計算と量子暗号通信を組み合わせ、高いセキュリティ水準のデータ連携環境と暗号鍵管理を構築したと発表しました。金融機関などが持つ機密データを安全に連携することを想定し、秘密計算による処理と、量子鍵配送を利用した通信・鍵管理を組み合わせています。
TISIの強みは、秘密計算アルゴリズムを自社単独で提供することより、金融・決済などの基幹系システムへ外部技術を組み込み、設計、開発、運用まで担当できる点にあります。秘密計算市場が拡大した場合、導入コンサルティング、システム開発、クラウド環境構築、保守運用への接続が考えられます。
一方、確認できた主要発表は2022年であり、その後の正式なサービス名、利用料金、導入企業、受注額、売上計上を十分に確認できませんでした。技術連携の成功と、継続的な商用事業の確立は分けて判断する必要があります。
関連度Bの判定理由: 秘密計算と量子暗号通信を組み合わせた具体的な環境構築を一次情報で確認でき、SI企業として実装上の役割があります。ただし、継続的な商用実績の開示が限定的なためB判定です。
注目ポイント
- EAGLYSとの協業が現在も継続し、正式サービスへ展開しているか
- 金融、決済、不正検知、医療などでの導入案件
- 秘密計算基盤の構築後に、保守・運用収益へつながるか
- 量子鍵配送と秘密計算を併用する必要性がある顧客層
- 商号変更後の中期戦略で、データセキュリティがどのように位置づけられるか
注意点
- 主要な公式発表が2022年で、情報の新しさが他の採用企業より弱い
- 実証・技術連携後の有償導入件数や受注額を確認できない
- 秘密計算技術の中核部分は外部パートナーへの依存度が高い
- 量子暗号通信を含む構成は、導入費用や運用の複雑性が増す可能性がある
- TISI全体への業績寄与は不明
参考情報
- TIS・EAGLYS|秘密計算と量子暗号通信の技術連携によりデータ連携環境及び暗号鍵管理を構築|2022年5月16日|秘密計算と量子鍵配送を組み合わせた実証内容を確認。
URL:https://www.tisi.jp/news/2022/tis_news/20220517_1.html - TISI|2022年度ニュース一覧|2026年8月4日確認|当該発表の掲載と、現在の社名・公式ドメインを確認。
URL:https://www.tisi.jp/news/2022/ - EAGLYS|ALCHEMISTA|2026年8月4日確認|協業先が秘密計算による企業間データ連携を現在も事業として扱っていることを確認。
URL:https://eaglys.co.jp/solution/alchemista/ - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・TISI|2026年8月4日確認|証券コード3626、東証プライムへの上場と現在の銘柄名を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=topsearch&topSearchStr=3626
GMOインターネットグループ(9449)|関連度B・重要サプライチェーン型
会社概要
GMOインターネットグループは、インターネットインフラ、セキュリティ、広告、金融、暗号資産関連などを展開する持株会社型の企業グループです。秘密計算との主な接点は、連結子会社GMOサイバーセキュリティ byイエラエが、NICTからプライバシー保護連合学習技術「DeepProtect」の技術移転を受けたことです。親会社の主力事業に比べると小規模な技術領域とみられますが、暗号、AI、セキュリティ実装を横断する接点があります。
テーマとの関連性
DeepProtectは、複数組織が生データを外部へ送らず、各組織で計算した学習パラメータを暗号化して集約するプライバシー保護連合学習技術です。NICTは2022年、同技術に関する知的財産権を当時のイエラエセキュリティへライセンスし、環境構築や技術支援を通じた事業化を進めると発表しました。医療、マーケティング、金融の不正送金検知などが想定用途です。
GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、2025年に秘密計算システムの開発・運用に関するガイドライン策定にも関与しています。これにより、技術実装だけでなく、安全な開発・運用方法の整理にも接点があることを確認できます。
ただし、DeepProtectの現在の導入企業、契約件数、利用料金、売上高は確認できません。子会社の技術事業であり、親会社GMOインターネットグループの連結業績に与える影響も不明です。技術移転は商用化の準備を示しますが、商用売上の発生を示すものではありません。
関連度Bの判定理由: NICTから技術移転を受け、プライバシー保護連合学習の事業化主体となった具体的な接点があります。一方、導入実績と親会社への業績寄与が確認できないためB判定です。
注目ポイント
- DeepProtectの導入企業、実案件、サービス料金の開示
- 金融不正検知、医療、マーケティング以外への用途拡大
- GMOグループのクラウド、セキュリティ、認証事業との連携
- 秘密計算システムの開発・運用ガイドラインを利用した監査・支援サービス
- 技術支援が単発案件から継続契約へ移行するか
注意点
- 技術移転後の具体的な売上・受注が開示されていない
- 関連事業は子会社の一部で、親会社の事業規模に対して小さい可能性がある
- 連合学習は暗号化や秘密集約の設計が不十分だと情報漏えいリスクが残る
- 金融・医療案件では、技術以外に規制、監査、責任分界の設計が必要
- 現在のサービス一覧でDeepProtectの位置づけが明確に示されていない点も確認事項
参考情報
- GMOインターネットグループ・NICT|プライバシー保護連合学習技術「DeepProtect」を技術移転|2022年3月17日|技術内容、ライセンス、事業化方針を確認。
URL:https://group.gmo/news/article/7699/ - GMOサイバーセキュリティ byイエラエ|秘密計算システム開発・運用ガイドライン策定への参画|2025年3月26日|安全な開発・運用基準への関与を確認。
URL:https://gmo-cybersecurity.com/news/20250326/ - GMOサイバーセキュリティ byイエラエ|公式サービスサイト|2026年8月4日確認|現在のサイバーセキュリティ事業とサービス構成を確認。
URL:https://gmo-cybersecurity.com/ - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・GMOインターネットグループ|2026年8月4日確認|証券コード9449、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=9449
TOPPANホールディングス(7911)|関連度C・思惑先行注意型
会社概要
TOPPANホールディングスは、情報コミュニケーション、セキュア関連、デジタル、半導体・ディスプレイ関連、生活・産業資材などを展開する持株会社です。秘密計算との接点は、事業子会社TOPPANデジタルが非上場企業Acompanyと共同開発した、秘密計算を使う分散型ID・デジタル証明書向け鍵管理技術です。本人確認、資格証明、デジタル証明書の漏えい対策という周辺用途であり、持株会社全体への重要度は確認できません。
テーマとの関連性
TOPPANデジタルとAcompanyは2024年5月、秘密計算を利用して、分散型IDに使われるVerifiable Credentialsの秘密鍵を安全に管理する技術を開発したと発表しました。秘密鍵を複数の断片に分け、単独では利用できない状態にすることで、鍵の漏えいや不正利用リスクを抑えることを目的としています。
用途は、本人確認、資格証明、属性証明などです。TOPPANグループが持つ認証、ID、セキュア情報処理と、秘密計算・秘密分散を組み合わせる点には事業上の合理性があります。
一方、発表時点では2025年度中の試験提供を目指す段階でした。調査基準日時点で確認できた公開情報では、本件の正式な一般提供開始、採用企業、受注額、売上規模を確認できませんでした。そのため、技術的な接点は明確ですが、商用化と業績寄与の裏付けが弱く、思惑先行に注意したい位置づけです。
関連度Cの判定理由: 秘密計算を用いた具体的技術は一次情報で確認できますが、発表時点では試験提供前であり、その後の商用実績と売上寄与を確認できません。親会社の事業規模に対する重要度も不明です。
注目ポイント
- 2025年度に予定されていた試験提供の実施結果
- Verifiable Credentials、デジタルID、本人確認サービスへの正式組み込み
- 行政、金融、教育、医療、雇用資格などでの採用
- TOPPANの認証・セキュア事業との一体販売
- 顧客名、契約件数、受注、継続利用を示す追加開示
注意点
- 確認できた主要発表は共同開発と試験提供予定の段階
- 調査基準日時点で正式提供後の導入実績を確認できない
- 関連事業の売上高、受注額、利益は開示されていない
- 技術開発には非上場パートナーAcompanyの技術が関与する
- TOPPANホールディングス全体への業績影響は限定的または不明で、テーマ名だけで評価すると接点を過大に見積もりやすい
参考情報
- TOPPANホールディングス・Acompany|秘密計算を用いてプライバシー配慮と情報漏洩リスク極小化を両立する技術を開発|2024年5月22日|分散型ID、VC、秘密鍵管理、試験提供方針を確認。
URL:https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/05/newsrelease240522_1.html - TOPPANホールディングス|株主・投資家情報|2026年8月4日確認|持株会社の事業構造と最新IR資料の確認先。
URL:https://www.holdings.toppan.com/ja/ir/ - 東京証券取引所|東証上場会社情報サービス・TOPPANホールディングス|2026年8月4日確認|証券コード7911、東証プライムへの上場を確認。
URL:https://www2.jpx.co.jp/tseHpFront/StockSearch.do?method=&topSearchStr=7911
今回は除外・参考扱いとした銘柄
| 証券コード | 会社名 | 判定 | 除外・参考扱いとした理由 |
|---|---|---|---|
| 9613 | NTTデータグループ | 上場廃止 | 秘密計算の解説・実装実績を持つ重要企業だが、2025年9月26日に上場廃止となったため、2026年8月4日時点の関連銘柄一覧には掲載しない。現在はNTTグループの関連事業として扱う |
| 4307 | 野村総合研究所 | 参考 | PETsに関する解説やグループ会社のガイドライン策定関与は確認できるが、調査基準日時点で、秘密計算の自社商用サービス、受注、売上への直接的な接続を十分に確認できなかった |
| 3778 | さくらインターネット | 除外 | 国産クラウド・GPU基盤として周辺接点は考えられるが、確認できた一次情報では、秘密計算またはコンフィデンシャルコンピューティングの専用サービスとの直接的な関係を確認できなかった |
| — | EAGLYS | 非上場 | 秘密計算、AI、企業間データ連携で重要な事業者だが、日本の証券取引所に上場していないため一覧から除外 |
| — | Acompany | 非上場 | 秘密計算、プライバシーテック、データクリーンルームで重要な事業者だが、非上場企業のため一覧には含めない |
| — | Intel、AMD、NVIDIA、Microsoft、Googleなど | 海外企業 | TEE対応CPU・GPUやコンフィデンシャルクラウドの上流を担うが、日本株の対象外。国内企業はこれらの基盤を利用する立場になる場合が多い |

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