情報リークが引き金となる政治激動 – 世界と日本の現状と課題

最近、録音データや内部文書などの情報が一つ表に出ただけで、政治の世界が大きく揺れ動き、閣僚の辞任や高官の更迭、さらには政権の連立再編にまで発展するケースが増えています。例えば、2023年11月にはウルグアイの外相が、自身の音声メッセージ流出を受けて即座に辞任しました。こうした出来事は世界各国で相次いでおり、日本でも他人事ではありません。本記事では、この情報リークが引き金となる政治的激動の概況と原因、世界と日本における最新動向、そして経済への影響や今後の課題について、できるだけ丁寧に解説します。

情報リークが引き起こす政治スキャンダルの概要

政治家や官僚の不正・失言・汚職を裏付ける録音テープ、内部文書、電子データなどが漏洩(リーク)し、それをメディアが報じることで、大臣の辞任や更迭、政権崩壊に直結する事態が頻発しています。歴史的に見れば、アメリカのウォーターゲート事件が典型例で、内部情報のリークをきっかけにニクソン大統領が辞任に追い込まれました。近年はデジタル技術の発達により大量の記録やデータが漏洩しやすく、国際調査報道も活発化したため、世界各地で同様の政治スキャンダルが続出しています。特に注目すべきはタックスヘイブン(租税回避地)に関する一連の大規模リークで、パナマ文書(2016年)・パラダイス文書(2017年)・パンドラ文書(2021年)では各国首脳の不正取引が暴かれ、その結果アイスランド首相の辞任やパキスタン首相の失職、チェコ首相の落選、チリ大統領の弾劾などに至りました。このように内部告発型の情報流出だけでなく、対立する政治勢力による意図的なリーク合戦も起きています。選挙期間中に政敵に不利な情報をメディアへ流す政治家や陣営も現れており、実際アメリカ・イギリス・スペインなど主要国で確認されています。つまり現在の政治は情報一つで一夜にして地殻変動を起こし得る時代なのです。

なぜ情報リークで辞任・更迭が相次ぐのか

情報リークが政治を揺るがす背景には、技術環境と社会風潮の変化があります。まず、スマートフォンや小型録音機器の普及で、政治家の発言や行動が密かに記録されるリスクが格段に高まりました。かつては密室の会話で済んでいた失言も、今や音声データとして暴露されかねません。また電子メールや内部資料のコピーが瞬時に拡散できるため、不正の証拠となる文書データも漏洩しやすくなりました。

次に、SNSやネット報道の発達で暴露情報の伝播が非常に速いことが挙げられます。SNS上ではセンセーショナルな内部情報が一度出回れば瞬く間に拡散し、テレビ・新聞を介さずとも世論の注目を集めます。メディア環境が変わり、重大な疑惑が表沙汰になった際の世論の高まりがかつてよりも迅速で強力になりました。その結果、問題の渦中にいる政治家に対して一気に辞任圧力が高まります。説明責任を果たせという声がネット上で拡散し、支持率低下を恐れた与党幹部が早期の更迭を決断する──そうした連鎖が起こりやすくなっているのです。

さらに、リーク合戦とも言える政治抗争の激化も一因です。与党内での派閥争いや政権 vs 野党の攻防において、互いに相手のスキャンダル情報を探り合い、暴露し合うケースが増えています。特に選挙前は、対立陣営に痛手を与えるため秘密情報を意図的に流す戦術が用いられることがあります。これは諸刃の剣で、自陣営にもリーク報復が返ってくるリスクがありますが、背に腹は代えられないほど政治闘争が苛烈化しているとも言えます。結果として、リーク情報が次々と飛び交い、スキャンダルの連鎖が起きているのです。このような状況下では、一件の疑惑発覚が別の疑惑暴露を誘発し、芋づる式に複数の大臣更迭や政権の動揺につながることもしばしばです。

世界における主な事例と動向

情報リークによる政治スキャンダルは、先進国から新興国まで世界各地で見られます。そのいくつかの具体例を挙げながら、世界の動向を概観します。

アメリカ合衆国

1970年代のウォーターゲート事件では、FBI副長官による内部リークを基に報道が展開し、ニクソン大統領辞任という結末を迎えました。21世紀に入ってからも、ホワイトハウス内部や情報機関からのリークが度々政権を揺るがしています。例えばトランプ大統領(当時)は在任中、ウクライナ大統領との電話内容が告発者(ホイッスルブロワー)によって暴露され、これが下院による弾劾訴追の決め手となりました(※最終的に上院で無罪)。また2021年の議会襲撃事件後には、政権高官の証言や内部文書の公開によって調査委員会が設置され、大統領経験者への史上初のFBI家宅捜索(機密文書持ち出し疑惑)にまで発展しています。米国では情報漏洩そのものを厳しく取り締まる一方で、報道の自由も強いため、政権内の対立や不満がリークとして表面化しやすい土壌があります。実際、トランプ政権では大統領の意に沿わない官僚らがマスコミに内部情報を流し、政権を困惑させた例も多々ありました(トランプ氏自身がリーク魔たちと度々非難したことでも知られます)。このように米国はリークと調査の応酬が常態化しており、特別検察官や議会公聴会など調査委員会の乱立もしばしば起こっています。

イギリス

政治倫理に厳格な英国でも、近年リーク情報が政局を激変させました。「パーティーゲート」と呼ばれる2020年〜21年の事件では、新型コロナ禍のロックダウン中に官邸で行われた飲み会の写真・映像が内部から流出し、公表されました。ボリス・ジョンソン首相(当時)は規則は常に遵守していたと国会で答弁していましたが、流出写真には酒杯を手にスピーチする首相の姿が収められており、虚偽答弁の疑いから与党内でも批判が噴出。閣僚や補佐官ら約50名もの大量辞任・解任劇を招き、ジョンソン氏自身も最終的に首相辞任に追い込まれました(引き金は別件の不祥事でしたが、パーティーゲートでの信頼失墜が背景にあります)。英国では他にも「議員経費スキャンダル」(2009年)という事件で、議員たちの経費不正請求に関する内部資料が新聞社に漏洩し、多数の議員が辞職・落選し議会改革につながった例があります。これらは民主主義の自己浄化作用とも言えますが、一方で誰が情報を流したのかが大きな政治的争点となる側面もあります。ジョンソン氏は自身に不利な証拠写真を流出させた人物を探ろうとしましたし、2009年の経費スキャンダルでもリーク元の動機が議論を呼びました。英国では高官が機密を漏らした場合の処罰規定(官職秘密法など)がありますが、公益通報との兼ね合いが難しい課題として残っています。

ヨーロッパ大陸

欧州各国でも類似の事件が相次ぎました。ポーランドでは2014年、高級レストランで閣僚らの秘密会話を盗聴したテープが雑誌にリークされ、大臣3人と下院議長が引責辞任に追い込まれました。録音には汚職的な談合や公的ポストの密談などが含まれており、国民に大きな衝撃を与えたのです。このスキャンダルで与党の信用は失墜し、翌年の選挙で保守系野党に政権を明け渡す転機ともなりました(盗聴の背後にロシア情報機関の影を指摘する声もあり、情報戦の側面も取り沙汰されました)。フランスでは2017年、大統領選の有力候補だったフランソワ・フィヨン元首相が妻に対する給与の不正支出疑惑(いわゆる「ペネロペゲート」)を暴露され支持率が急落、選挙敗北につながりました。韓国では2016年、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の親友による国政介入を示すタブレットPC内部資料が報道で暴かれ、大規模な抗議デモと弾劾訴追を経て大統領失職に至っています。マレーシアでも、1MDB政府系ファンドを巡る巨額汚職疑惑が内部リークで発覚し、ナジブ首相が2018年の総選挙で敗北・起訴される結果となりました。南アフリカでは「グプタゲート」と呼ばれる汚職メールの大量リークが決定打となり、2018年にズマ大統領が辞任、その後汚職罪で訴追されています。このように世界各国でリーク → 政治スキャンダル → 政治家の辞任/政権交代というパターンが繰り返されています。さらに、こうした事件に対し各国では調査委員会の設置や司法捜査が相次ぐ傾向も共通しています。汚職疑惑なら独立委員会や検察捜査、違法な情報収集なら議会調査委員会、といった具合に同時多発的に複数の調査機関が動き出すケースも珍しくありません。これは真相解明に資する一方、政治の停滞や党派間の対立激化を招くとの指摘もあります。

ロシア・中国など権威主義国

一方で、ロシアや中国のような権威主義体制では、内部情報のリークに対する統制が極めて厳しく、政治指導者の辞任につながる例はほとんど見られません。これらの国では機密漏洩は国家反逆に準じる重罪とされ、メディア統制も徹底しているため、たとえ汚職情報が海外報道などで明るみに出ても、国内では封殺されてしまいます。例えば中国ではパナマ文書で習近平国家主席の親族が関与する企業が指摘されましたが、国内SNSで「パナマ文書」の語が即座に検閲・削除され、関係者の処分や辞任には一切至りませんでした。またロシアでも要人の不正疑惑が国営メディアで報じられることはなく、逆に告発者や独立系記者が逮捕される事態すら起きています。こうした国々では、情報リークが政治変動を起こすどころか、むしろ当局による言論・報道規制の強化に直結しています(後述のように各国でSNSや報道への規制強化が進む一因にもなっています)。

以上のように、民主主義国を中心に情報リークが政治的インパクトを与える事例が頻発している一方、非民主的な国ではリークを契機とした健全な政治責任追及は起こりにくいという対比が見られます。しかし、そのような国々でもリークそのものは存在し(例えばロシアでは2022年にウクライナ侵攻計画が米情報機関からメディアに漏洩し事前報道されたり、中国でも内部文書が海外に流出する例があります)、それらが国家による情報統制やサイバー監視の強化につながっている点は注意すべき動向です。

日本における状況

日本でも、情報リークが大臣辞任など大きな政治的波紋を呼ぶケースが増えています。近年の具体例をいくつか見てみましょう。

  • 録音テープ暴露による議員辞職
    2017年には、衆院議員が秘書に暴言・暴行を加えていた現場音声が週刊誌により公開され、大炎上しました。録音テープには秘書への罵倒が克明に記録されており、その議員は党を離党、次の総選挙でも落選して政界を去る結果となりました。これは秘書がICレコーダーで証拠を握っていたもので、録音リークが直接政治家のキャリアを終わらせた一例です。
  • 内部文書の漏洩と大臣更迭
    2017年の南スーダンPKO日報隠蔽問題では、陸上自衛隊が現地の活動日報を保管していながら公表せず隠蔽していた事実が、内部リークにより明らかになりました。当時の防衛大臣は国会で事実と異なる説明をしていた責任を問われ、日報問題への対応の混乱も重なって引責辞任に追い込まれました。このケースでは防衛省内の関係者が良心に基づき情報を明かしたとされ、結果的に組織の隠蔽体質改善につながった面もあります。
  • 写真流出による更迭
    ごく最近では2023年、当時の首相の長男(首相秘書官でもあった)が、公邸で親族と忘年会を開き公的な場所で不適切な記念写真撮影をしていた問題が週刊誌報道で発覚し、更迭されました。流出した写真には公邸階段で横たわる様子など公私混同ぶりが写っており、当時の首相は公的スペースで不適切な行為はないと釈明しましたが、内部の人間が撮影画像を持ち出した可能性も指摘され情報管理の問題だと批判されました。このように政治家本人でなくとも、その家族や秘書の行動が写真・映像として漏洩し、結果的に更迭に至るケースも増えています。
  • その他の事例
    2022年以降、以前の政権時代の様々な疑惑でも内部資料の存在が明るみに出ました。森友学園問題では財務省が決裁文書を書き換えていたことが発覚し(元職員の告発メモなどが公表された)、行政不信を招きました。また「桜を見る会」問題でも招待者名簿が一部流出して追及材料となりました。さらに旧統一教会と政治家の癒着問題では、関係団体の内部名簿や写真がネット上に出回り、関係を否定していた議員の嘘が暴かれて辞任する例もありました。日本では幸い民主主義国ですので、リーク情報があればメディアや野党が追及し、一定の説明責任が問われます。ただし、与党が安定多数を占める国会では、政権中枢への直接の打撃(首相辞任や連立崩壊)に至るケースは少なく、主に個別閣僚や議員の辞職で幕引きとなる傾向があります。これには日本の政治文化ではトップ自ら辞めずに関係者を更迭して乗り切る慣行が影響していますが、一方でリークした側(告発者)が不利益を被る懸念もあり、内部告発を保護・奨励する仕組みの強化が課題となっています。

規制強化の動き:選挙制度・報道・SNSへの影響

相次ぐ情報リーク合戦とそれに伴う混乱を受けて、各国では選挙制度や報道・SNSに関する情報規制の強化にも乗り出しています。偽情報(フェイクニュース)対策や機密保護の観点から、法整備が急ピッチで進む傾向が見られます。

  • 選挙とSNSの規制
    インターネット上で真偽不明の情報が選挙に影響を及ぼすことへの懸念から、多くの国がSNS規制を強めています。例えばフランスは2018年、大統領選挙期間中に悪質な偽情報を拡散した場合、裁判所が迅速に削除命令を出せる法律を制定しました。ドイツも2018年施行のネットワーク執行法(通称NetzDG)で、ヘイトや違法投稿への速やかな削除をSNS事業者に義務付けています。シンガポールでは2019年に「オンライン上の虚偽情報と操作防止法」を成立させ、当局が虚偽と見なしたコンテンツを削除・訂正させる強権的な仕組みを導入しました。この法律では政府が公益に反する故意の偽情報と判断すれば投稿の削除やサイト遮断を命令でき、違反すれば巨額の罰金や最長10年の禁錮刑が科され得るため、ビッグテック企業も表現の自由が侵害されかねないと懸念を表明しています。欧州連合(EU)も2022年にデジタルサービス法(DSA)を制定し、大規模SNSに対し有害情報拡散防止の義務を課すなど規制を強化しました。各国とも民主主義を守るためとして法整備を急いでいますが、同時に政府による情報統制が強まりすぎるリスクも指摘されています。
  • 日本の対応
    日本でも、ネット上のデマ対策が議論されています。2024年の選挙を経て、有権者の58%が選挙時にSNSで拡散する真偽不明情報は法律で規制すべきと答えた世論調査結果も出ました。これを受け、2025年4月にはプロバイダ責任制限法の改正により「情報流通プラットフォーム対処法」が施行され、大規模SNS事業者に対し違法・有害情報の迅速な削除対応や受付窓口設置を義務付けています。具体的には、ユーザーから削除要請があった場合7日以内に対応を判断し通知することや、削除基準と実績を公表することなどが求められます。もっとも、この新法は主に違法情報への対処を促すもので、明確に虚偽とは断定できない噂や憶測には対応が及ばない課題もあります。加えて公職選挙法では昔から虚偽事項の公表が禁じられていますが、現行制度ではSNS上で次々出てくる情報を網羅的にチェックするのは難しく、実効性に限界があります。このため、民間のファクトチェック団体の活動支援や、プラットフォーム各社による自主的な誤情報対策(例えばTwitterのコミュニティノート機能の活用など)も併せて進める必要があるでしょう。
  • 報道の在り方
    情報リークが横行する中、報道機関側にも自己検証と規制の圧力がかかっています。特にプライバシーや機密漏洩との兼ね合いで、メディアの報道倫理が問われる場面が増えました。例えば日本では政治家のプライベートな会話の盗聴データを報じる是非について議論がありますし、欧米でも国家安全保障絡みのリーク報道には当局から報じれば捜査妨害だと圧力がかかる場合があります。各国政府は情報源秘匿の原則を尊重しつつも、重大リーク事件の後にはしばしば秘密保護法制の強化を図ります。英国では近年Official Secrets Act(国家機密法)の改正で内部告発者への罰則強化が検討され、米国でも機密漏洩に対する司法省の摘発姿勢が厳しさを増しています。一方で、こうした動きに対しては不正を暴く正当な内部告発まで萎縮させ、報道の自由を損なうとジャーナリスト団体や人権団体が懸念を表明しています。各国で模索が続くポイントは、真実を暴露するリークと偽情報・不法な漏洩の線引きをどうするかです。健全な民主主義には前者が不可欠ですが、後者を野放しにすれば世論の混乱や無実の人権侵害につながるため、法律・制度面で慎重なバランス調整が迫られています。

経済への影響

情報リークが引き起こす政治スキャンダルの多発は、経済にも無視できない影響を及ぼします。まず、政治不安による経済の停滞・市場の変動が挙げられます。政権中枢の人事が次々と入れ替わったり、閣僚辞任が相次いだりすると、政策の継続性に対する不信感から企業は将来予測を立てにくくなります。経済学では不確実性の高まりは企業の投資や雇用を手控えさせ、マクロ経済を停滞させると指摘されています。実際、政治リスクが高まると企業は「様子見(Wait-and-see)」に転じ、新規投資や採用を延期する傾向があります。また金融市場でも、株価の乱高下や国債利回りの上昇(価格下落)といった形で即座に反応が現れます。政治的な不透明感が強まると株式市場の変動性が増し、債券市場ではリスクプレミアム(上乗せ金利)が上昇することが統計的にも確認されています。例えば、ある研究によれば政治リスクが高まった局面では投資家が安全資産に逃避し、株価が下落・市場のボラティリティが増大する傾向があります。これは政治スキャンダル頻発国ほど資金コストが上昇しやすく、経済成長にもブレーキがかかりやすいことを意味します。実際、腐敗が蔓延する国では長期的な経済成長率が低迷するとの研究もあり、ある推計では汚職認識度が1%悪化すると経済成長率が約0.7ポイント低下するという結果も報告されています。このように、政治の不安定化は経済の不安定化と表裏一体なのです。

もっとも、情報リークによるスキャンダルは短期的な混乱を招く一方で、長期的には経済の健全化に資する側面もあります。不正が暴かれ責任者が処罰されれば、腐敗による資源配分のゆがみが是正され、公金の無駄遣いが減る効果が期待できます。例えばパナマ文書の公開後、各国政府は租税回避への監視を強化し、一部では富裕層からの徴税が増えて財政改善につながりました。また企業不祥事のリークによってガバナンス改革が進み、株主利益が守られるようになった例もあります(世界的にESG投資の観点からも、企業の情報開示と説明責任が重視されるようになりました)。重要なのは、リークによって判明した問題にきちんと対処し制度改善へ結びつけることです。それができれば、透明性の高いクリーンな政治・経済は国内外の信頼を高め、長期的な成長基盤を強化します。逆に問題が解決されず放置されれば、不信感だけが残りビジネス環境の悪化や優秀な人材・企業の国外流出を招きかねません。日本でも、例えば森友・加計問題で指摘された行政の不透明さを改善しないままでは、長期的に見て行政への信頼低下が投資意欲の減退や海外からの評価低下につながる恐れがあります。経済界からも政治の安定とクリーンさを求める声が上がるのは、まさに経済的利害と結びついているのです。

今後の課題

情報リークが引き金となる政治激動の時代にあって、今後いくつかの課題に対処していく必要があります。

  • 健全な内部告発の保護と、不正確な情報拡散の防止
    社会正義のために内部情報を暴露する告発者(ホイッスルブロワー)は民主主義の番人として保護すべき存在です。しかし同時に、意図的なデマや偽造された情報(例えばフェイク音声・フェイク映像:ディープフェイク技術による捏造)によって無実の人が失脚するリスクにも備えなければなりません。近年、音声や映像の精巧な偽造が技術的に可能となりつつあり、悪意ある勢力が偽のリーク情報を仕掛ける恐れも指摘されています。このため、今後はリーク情報の真偽を迅速に検証する仕組みや、悪質な虚偽リークに対する罰則整備が課題となるでしょう。一方で、権力側が都合の悪い真実のリークを偽物だと決めつけて握り潰す可能性もあるため、独立した調査機関やジャーナリズムによるチェックアンドバランスも不可欠です。
  • リーク情報への対応と危機管理
    政府・企業は、自らの不祥事が露呈した場合の危機管理体制を整えておく必要があります。リークが出た際に説明責任を果たさず隠蔽しようとすれば、後で全て明るみに出た際に世論の反発が一層激しくなります。逆に迅速な認証と謝罪、再発防止策の表明ができれば、ダメージを最小限に抑え信頼回復につなげることも可能です。現代では隠そうとしてもいずれバレるという前提でリスク管理を行うべきでしょう。情報管理の徹底はもちろんですが、万一漏洩しても組織が崩壊しないようガバナンスを強化し、公正さを内部で確保しておくことが肝心です。
  • 情報統制と民主主義のバランス
    各国で進むSNS規制や機密保護強化は、一歩間違えば権力側による情報隠しの手段にもなり得ます。国民が政治的意思決定を行うには正確な情報へのアクセスが不可欠であり、リーク情報もそれが真実であれば公益に資する場合があります。したがって、偽情報対策や機密保護の名の下に正当な報道・言論まで萎縮させないことが重要です。例えばシンガポールのフェイクニュース禁止法は表現の自由を損ねる恐れが指摘されていますし、日本でも特定秘密保護法の運用如何では内部告発の萎縮につながるとの懸念がかねてあります。今後の課題は、国家安全や公正な選挙を守りつつも、市民社会が権力を監視できる情報開示を確保するという綱渡りの調整です。これは一朝一夕に正解が出るものではありませんが、不断の世論喚起と制度見直しによってバランスを取る努力が求められます。
  • スキャンダル後の本質的改革
    最後に強調すべきは、リーク報道で問題が露呈した後、それを本当の改革につなげることの難しさです。情報が暴かれて政治家が辞めても、同種の不正が繰り返されれば意味がありません。GNVの分析によれば重大な不正がリークで明るみに出ても、必ずしも問題解決や事態改善に直結するとは限らないとされています。実際、南アフリカではズマ大統領辞任後も腐敗文化は根深く、政権交代だけで全てが解決したわけではありません。日本でも幾度も汚職事件が報じられ、その都度関係者は処分されますが、抜本的な政治風土の改善には至っていないとの指摘があります。今後の課題は、リークで表面化した問題を糾弾して終わりにするのではなく、制度的な穴を塞ぎ再発を防ぐ改革を断行することです。例えば政治資金の透明化ルールを厳格化する、公文書管理を徹底する、公益通報者保護制度を拡充する、といった対応が考えられます。それによってはじめて、情報リークによる告発が建設的な社会変革につながり、経済にとってもプラスに転じるでしょう。

まとめ

情報(録音・文書・データ)のリークがきっかけで政治が激震する現象は、テクノロジーと社会意識の変化がもたらした現代的課題です。それ自体は不正追及という健全な作用である一方、副作用として情報戦の過熱や政治不安、規制強化のジレンマも生んでいます。経済面でも、短期的には不安定要因となり得ますが、長期的にはガバナンス向上による恩恵も期待できます。重要なのは、私たち市民がこの新たな時代の情報との向き合い方を学び、真実を見極め、公正と自由を両立させる道を模索することです。情報リークそのものは良くも悪くも権力を揺さぶる劇薬です。その劇薬を民主主義の健全化に役立て、副作用を抑える知恵と制度を備えることこそ、これからの社会の大きな課題と言えるでしょう。

参考

<Uruguay’s foreign minister resigns following leak of audios related to a passport scandal>
https://ny1.com/nyc/all-boroughs/ap-top-news/2023/11/02/uruguays-foreign-minister-resigns-following-leak-of-audios-related-to-a-passport-scandal
<情報のリークとジャーナリズム | GNV>
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<Latest Boris Johnson photos bring Partygate scandal back into focus | Boris Johnson | The Guardian>
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<Polish ministers resign over wire tap scandal | News | Al Jazeera>
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<Russia linked to 2014 wiretapping scandal in Poland | Poland | The Guardian>
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<自民:「死ねば…」の暴言も 豊田真由子衆院議員が離党届 | 毎日新聞>
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<“PKO日報問題”稲田大臣が辞任会見 ノーカット2(17/07/28)>
https://www.youtube.com/watch?v=39S-ebz5TQg
<岸田首相「公邸忘年会」で釈明=野党、写真流出を問題視|ARAB NEWS>
https://www.arabnews.jp/article/japan/article_92581/
<テック企業、取り締まり範囲の広いフェイクニュース禁止法に懸念 | ニュース | Campaign Japan 日本>
https://www.campaignjapan.com/article/%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BC%81%E6%A5%AD-%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B7%A0%E3%81%BE%E3%82%8A%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%AE%E5%BA%83%E3%81%84%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%B3%95%E3%81%AB%E6%87%B8%E5%BF%B5/451650
<コラム第875号:「公職選挙と情報流通プラットフォーム対処法」 | NPO Institute of Digital Forensics.>
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https://firstamendmentwatch.org/deep-dive/states-move-to-protect-journalist-sources/
<EU laws to protect press freedom in jeopardy, campaigners claim | Press freedom | The Guardian>
https://www.theguardian.com/media/2023/nov/22/eu-laws-to-protect-press-freedom-in-jeopardy-campaigners-claim
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<How Government Corruption Hurts Economic Growth>
https://www.forbes.com/sites/adammillsap/2025/07/25/how-government-corruption-hurts-economic-growth/
<Measuring ESG Risk: ESG Controversies Lead to a 2% to 5% Stock Underperformance after Six Months | Clarity AI>
https://clarity.ai/research-and-insights/esg-risk/measuring-esg-risk-esg-controversies-lead-to-a-2-to-5-stock-underperformance-after-six-months/

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