こちらの記事で紹介したパフューム・レイヤリングについて、関連銘柄を探してみました。
香りの重ね着(Scent Stacking)とは?世界トレンド・日本の現状と経済インパクト | ブルの道、馬の蹄跡
この会社も!というのがあれば是非コメント欄にお願いします。
高砂香料工業(4914)
会社HP:https://www.takasago.com/ja
どんな会社?
- 香料のグローバルB2Bメーカーで、主力はフレーバー(食品の香り・味)、フレグランス(香水・日用品の香り)、アロマイングリディエンツ(香料原料)、ファインケミカルの4部門。
- フレグランス領域では、香水・化粧品・シャンプー・洗剤・芳香剤・入浴剤などに使われる香りを、残香性や拡散性、安定性も踏まえて設計して提供する立ち位置。
- アロマイングリディエンツ領域は、フレグランスやフレーバーの原料そのものを開発・供給する川上で、同業他社(他の香料会社)にも販売される、と明記されています。
- B2Bが基本で、最終消費者に直接販売する事業形態ではない(最終ブランドの動きが需要を決める)。
- 会社概要として、設立(1920年)、従業員数、28の国と地域に拠点、製造拠点25などを開示しています。
なぜ関連銘柄?
香りの重ね着は、ざっくり言うと香りを1本で完結させず、組み合わせて自分仕様にする文化です。これが広がると、完成品ブランド側で起きやすい変化は (1) 香りの選択肢が増える(SKU増)、(2) 既存香水だけでなくボディ/ヘア/ランドリー等の香りアイテムを合わせる、(3) 香りの拡散・持続・肌や衣類への残り方の品質要求が上がる——この3つ。
高砂香料工業は、この変化のど真ん中にいます。
- 完成品(香水・日用品)向けに香りを設計して供給している=レイヤリング文化で香りアイテムが増えるほど案件が増えやすい。
- さらに強いのが、香料原料(アロマイングリディエンツ)も自社で持つ点。重ね着は組み合わせの自由度が価値なので、ブランド側は新しい香りのパーツ(香料原料)を欲しがる。高砂はそこも供給できる。
つまりこの会社は、香りの重ね着=最終商品の流行を、川中(香り設計)と川上(原料)で受け止められるタイプの関連銘柄です。
注目ポイント
- 原料開発×サステナを前面に出したアロマイングリディエンツ
アロマイングリディエンツ部門について、創造(creation)とサステナビリティの両立を意識した香料原料を開発・供給と明確に書いています。流行が量だけでなくストーリー(自然由来・環境配慮・トレーサビリティ等)を要求する局面で効いてくるタイプの強みです。 - 規制・安全性への専門組織運用(B2Bの生命線)
香料は、アレルゲン、各国の化学物質規制、業界基準の改定が頻繁です。高砂はグローバル法規センターが、規制・顧客要求に加えて
FEMA、IFRA、RIFM、IOFI
などの基準改定も含め継続的に情報収集し、グローバルでコンプライアンス対応すると説明しています。
レイヤリングが広がるほど肌に付けるもの+髪+衣類+室内みたいに接触機会が増え、安全性・規制対応ができる香りの重要度が上がります。 - 香りのデリバリー技術を持っている(香りを長く・狙って残す)
サステナビリティ報告書では、衣料用洗剤・柔軟剤で使われるカプセル香料の説明と、欧州でのマイクロプラスチック規制の流れ、そして自社の生分解性フレグランスカプセル(TAKAPS® 5G)を開発し欧州で商業展開を開始したことが記載されています。
ここが面白いのは、レイヤリングが香水だけでなく衣類・生活空間の香りまで広がるほど、香りを届ける技術(持続・タイミング・拡散制御)が差別化要因になりやすい点です。 - 天然原料の供給リスクを経営課題として明示
天然原料の喪失・入手可能性低下、価格上昇、規制強化、市場のサステナ志向変化などを自然関連リスクとして整理しています。
レイヤリング文化は香りの選択肢の増加だけでなく自然由来っぽさも同時に求めがちなので、川上の原料リスク管理はテーマ連動で見ておく価値があります。
注意点
- B2Bゆえに、流行の恩恵は間接的&タイムラグ
最終ブランド(化粧品・日用品メーカー)が新商品を出し、採用が決まって初めて業績に反映される構造です。 - 規制リスクは追い風にも逆風にもなる
生分解性カプセルのように技術が当たれば追い風ですが、香料アレルゲン表示強化などで処方変更・コスト増も起こり得ます。規制・業界基準の継続ウォッチ自体は会社も重視しています。 - 香りは社会的反発(香害)と隣り合わせ
重ね着が広がるほど、強い残香への反発も増えやすい。すると市場が強さから心地よさ・低刺激・マイクロドーズへ振れる可能性があり、製品設計の要求が変わります(技術力が問われる局面)。
銘柄分析
高砂香料工業(4914)は、飲料・食品向けのフレーバー(香料)と、日用品(洗剤・柔軟剤)や化粧品・芳香剤向けのフレグランスを主力に、香料の原料にあたるアロマイングリディエンツ、医薬品中間体などのファインケミカル、そして不動産賃貸なども手がける香料メーカーです(決算期は3月で、4/1〜3/31が通期)。
直近の2025年3月期(通期)の連結業績は、売上高 229,207百万円/営業利益 15,341百万円/経常利益 15,311百万円/親会社株主に帰属する当期純利益 13,325百万円で、前年差で大幅な増益になっています(特別利益として投資有価証券売却益 2,709百万円の計上もあり)。 また会社側も、2025年3月期は売上・営業利益ともに過去最高になった旨を述べています。
一方で、足元のどこで稼いでいて、どこが詰まっているかは、2026年3月期 上期(4〜9月)の部門別内訳を見ると掴みやすいです。上期の売上高は114,467百万円で、部門別には フレーバー 63,394百万円/フレグランス 36,295百万円/アロマイングリディエンツ 8,154百万円/ファインケミカル 5,918百万円/その他不動産 703百万円という構成。利益面ではフレーバーが堅調な一方、ファインケミカルが営業損失(▲602百万円)になっており、主要得意先との品質管理体制の強化対応で、一部製品の出荷を延期している点が減速要因として明記されています。
会社計画(2026年3月期の通期予想)は、売上高 230,000百万円/営業利益 12,500百万円/経常利益 13,000百万円/純利益 11,700百万円。上期時点の進捗率は、売上が約49.8%、営業利益が約49.7%、経常利益が約51.8%と、ざっくり後半も取り切って達成型です(ただし利益率は上期で前年差悪化)。 なので、大事な論点はシンプルで、ファインケミカルの出荷延期がいつ・どれだけ戻るか(品質対応の進捗)と、逆にフレーバー/フレグランスが価格転嫁+ミックス改善でどこまで利益率を支えられるかの綱引きになります。
財務面は、2025年3月期末で現金及び預金 35,590百万円まで積み上がっています。 ただし借入もそれなりにあり、同時点で短期借入金 31,978百万円/1年内返済予定 6,535百万円/長期借入金 19,554百万円に加え、リース債務 2,640百万円(退職給付負債も 9,911百万円)なので、構造としてはネットで借入超過です。 とはいえキャッシュ創出力は改善しており、2025年3月期の営業CFは 18,922百万円、投資CFは▲9,127百万円で、ざっくりフリーCF(営業CF+投資CF)は約9,795百万円のプラスでした(現金同等物は前年差 +17,251百万円)。
株主還元は、2026年3月期上期で中間配当 120円(分割前換算)を実施し、期末配当予想は修正のうえ28円(分割後ベース)が示されています(会社注記上、分割を考慮しない場合の年間配当は260円)。また、2025年10月1日付で1株→5株の株式分割を実施しています。 決算説明資料では、配当性向やDOEも意識した説明(期末増配、DOE目線など)を前面に出しており、このあたりは市場評価(PBR)を上げにいく文脈です。 参考までに、2026/2/6終値ベースの予想配当利回りは概ね3%台です(株価・利回りは日々変動します)。
まとめると、高砂香料工業はフレーバー/フレグランスの安定需要+グローバル展開に、利益のブレ要因としてファインケミカル(医薬品中間体)の案件・品質対応が乗る構造で、見るべきポイントは以下の通りです。
① ファインケミカル(医薬品中間体)の出荷延期がいつ正常化するか(品質管理体制強化の進捗)
② フレーバー(飲料など)とフレグランス(ファブリックケア等)の需要と利益率(価格転嫁・製品ミックス)
③ 上期は利益率が落ちているので、下期での利益の戻し方(通期計画に対する進捗の質)
④ 在庫・運転資本とキャッシュ創出(在庫増が続くとCFが痩せる)
⑤ 株主還元(増配・分割後の配当水準)とPBRを意識した経営の継続度
長谷川香料(4958)
会社HP:https://www.t-hasegawa.co.jp/
どんな会社?
- 香料メーカー(B2B)で、香料を大きくフレーバー(食品向け)とフレグランス(香水・化粧品・日用品向け)に分け、用途ごとに専門人材が調香する、と自社で明記しています。
- 事業の実態としてはフレーバー比率が大きく、フレグランスは第2の柱。サステナビリティレポートでは売上構成をフレーバー88%/フレグランス12%と示しています。
- フレグランス領域の用途は、同レポート上で香水/スキンケア/ヘアケア/ボディケア/入浴剤/洗剤/柔軟剤/芳香剤などが列挙されています(香りの重ね着が起きやすい生活導線ど真ん中)。
- 海外売上比率が46.5%とされ、国内だけでなく海外需要(嗜好・規制)も織り込む会社像です。
なぜ関連銘柄?
香りの重ね着が広がると、消費者行動は香水1本よりも、
肌(ボディ)+髪+服(ランドリー)+部屋(ホーム)のように香り接点が増え、組み合わせ前提の香り設計が必要になります。長谷川香料のフレグランス用途がまさにこの領域をカバーします。
さらに、同社は香料はすべてオリジナル、テーラーメイドで最適な香りを創る方針を打ち出しています。重ね着文化は同じ香りでも自分の最適解を求めがちなので、B2Bでブランドごとの香り設計を請け負う会社ほど、流行の波を受けやすい構造です。
注目ポイント
- 重ね着を成立させる香りの挙動設計に言及(持続・拡散)
サステナビリティレポートのフレグランス部門説明で、同社は調香・分析・合成などを活用し、持続性・拡散性などを意識した香料開発や新規提案に取り組む旨を述べています。重ね着が一般化すると混ぜたときの残り方/立ち方が重要になります。 - マーケ×官能評価データ統合=香りを言語化・可視化する武器
同レポート内のカスタマーサクセス事例が面白くて、マーケティングデータと官能評価データの統合、さらに香りを色で表現する Aroma RainbowやAroma Value Visualizerといった独自コミュニケーションツールで香りの価値を可視化すると書いています。
重ね着トレンドでは説明可能な香り、組み合わせ提案(レシピ化)が強くなるので、香りを伝える技術を持つB2Bは強い、という見立てが立ちます。 - 生活導線の全方位にいる(香水だけの会社ではない)
香りの重ね着は、香水だけでなく、ボディケアやランドリー、入浴、ホームフレグランスへ広がりやすい。長谷川香料はフレグランス用途としてこれらを明確に掲げています。
つまり香水ブームよりも、生活全体の香り設計ブームに相性が良いタイプです。 - 規制・サステナ対応を業界標準と接続している
同社は日本香料工業会経由を含め、International Fragrance Association や International Organization of the Flavor Industry の活動に寄与すること、そしてIFRA-IOFIサステナビリティ憲章への署名を示しています。
重ね着が広がるほど肌接触の機会も増えるため、安全性・透明性・規制順守はブランド側の要求が上がりやすく、ここを型として持っている点は評価軸になります。 - フレグランス市場の成熟・競争を前提に国内シェア拡大を明言
レポート上で、国内市場は成熟で競争が厳しく、資源環境の変化による原材料高騰にも直面、としつつ、安全・品質・環境を優先しながら研究開発を強化し、採用を積み上げる方針が書かれています。流行に乗るだけでなく勝ち筋を作りに行く姿勢が読み取れます。
注意点
- 売上構成的に、重ね着トレンドの直撃度は限定的
フレグランスは売上の12%と示されています。よって香水ブーム=即業績ではなく、寄与しても部分的になりがちです。 - B2Bゆえのタイムラグ
流行 → ブランドの企画 → 採用決定 → 量産、の順なので、話題の熱量と実需がズレることがあります(同社のテーラーメイド方針は強みでも、時間軸は避けられない)。 - 強い香りへの反発(いわゆる香害)・規制強化の可能性
重ね着が一般化すると、逆に強すぎる香りへの社会的反発が増え、ブランドが微香・低刺激・配慮設計へ舵を切る局面もあり得ます。安全・品質・環境を優先する姿勢は示されていますが、市場の空気次第で要求仕様が変化します。 - 競争と原材料コストの圧力
フレグランス市場の競争激化・原材料高騰に言及があり、流行があってもマージンの取り合いになる可能性は残ります。
銘柄分析
長谷川香料(4958)は、飲料・乳業・菓子など向けの食品香料(フレーバー)と、日用品・化粧品など向けの香粧品香料(フレグランス)を主力とする香料メーカーです(決算期は9月で、10/1〜9/30が通期)。多品種の調合香料に強く、年間約12,000品目を販売しているのが特徴です。
直近の2025年9月期(2024/10/1〜2025/9/30)の連結売上高は73,495百万円で、内訳は食品(フレーバー中心)65,828百万円/フレグランス7,666百万円と、食品が約9割を占めます。地域別(顧客所在地ベース)では日本37,075百万円、中国12,493百万円、アジア7,850百万円、米国14,829百万円などで、海外比率もそれなりに大きい構図です。営業利益は8,515百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は6,921百万円でした。
会社は2026年9月期の計画として「売上 76,500百万円/営業利益 9,430百万円/経常利益 10,050百万円/純利益 7,320百万円」を掲げています。配当は年間100円(中間50円+期末50円)予定で、従来の配当性向40%程度から、DOE(株主資本配当率)3%以上を基準とする方針へ変更しています(業績のブレに左右されにくい安定配当を前面に出した形)。
一方で足元の進捗を見ると、2026年9月期の第1四半期(10〜12月)は「売上 17,793百万円/営業利益 1,568百万円」と、売上は前年同期比で微増(+0.8%)ながら、利益は減少しました。会社説明では、売上原価率の上昇に加え、11月に実施したベトナム子会社買収に伴う一過性の買収費用の計上が減益要因とされています。通期計画は据え置きなので、ざっくり言うと1Qは(費用も出て)弱め、以降で取り戻す絵です。進捗率で見ると、売上は約23%(17,793/76,500)、営業利益は約17%(1,568/9,430)なので、利益面はここからのマージン回復が重要になりやすいです。
財務面はかなり堅く、2025年9月末で現金及び預金34,854百万円+有価証券2,000百万円、自己資本比率83.5%という高水準です(負債の中では退職給付に係る負債6,578百万円が目立つ項目)。2025年9月期の営業CFは11,247百万円と太く、投資CFは△6,914百万円、財務CFは△5,489百万円で、投資と還元を回しながら現金水準を保っているイメージです。
株主還元は、2025年9月期は年間74円(中間37円+期末37円)で、2026年9月期は100円へ増配予定。自己株式取得(2025年9月期に2,238百万円)も実施しています。
2026/02/09時点で会社予想配当利回り3.65%、PER(会社予想)15.14倍、PBR(実績)0.87倍といった水準です(市場データは日々変動します)。
まとめると、長谷川香料は食品(フレーバー)中心+海外展開の香料会社で、見るべきポイントは以下の通りです。
① 2026年9月期は1Qで営業減益:一過性費用の剥落と、原価率(プロダクトミックス含む)の改善で計画マージン(通期)に戻せるか
② 海外の濃淡(米国は増収、中国は減収など):地域別の伸びが連結のブレ要因になりやすい
③ M&Aの統合・収益化(ベトナム買収など):短期コスト→中期シナジーに転換できるか
④ 設備投資とキャッシュのバランス:営業CFの厚みを、成長投資と還元にどう配分するか
⑤ DOE 3%以上の安定配当を継続できる利益体質(原料高・為替の揺れに耐える設計)
資生堂(4911)
会社HP:https://corp.shiseido.com/jp/
どんな会社?
- 日本発のグローバル化粧品グループで、スキンケア/メイクに加えて、フレグランス(香水)も事業として持つのが特徴です。とくに欧州・中東・アフリカ(EMEA)では、フレグランス事業をまとめて担う体制を明示しています。
- EMEAはフレグランスのセンター・オブ・エクセレンス(CoE)拠点とされ、香りの研究はフランス(オルレアン近郊)の欧州イノベーションセンターで進め、フレグランス製品の多くをフランスの2工場で生産する、と説明しています。
- グローバルで展開するフレグランスブランドとして、
ISSEY MIYAKE PARFUMS/narciso rodriguez/Serge Lutens/SHISEIDOフレグランス/Tory Burch Beauty/ZADIG&VOLTAIRE
を挙げています(香水そのものを複数ブランドで扱う企業)。 - 自社(SHISEIDO)でもフレグランスを出しており、たとえばフレグランスシリーズ「GINZA」を2025年4月発売として告知しています。
- さらに、フレグランスの長期ライセンスを取りに行く動きもあり、2024年にMax Maraとのフレグランス・パートナーシップ(資生堂が独占的に開発・製造・販売するライセンス)を発表しています。
なぜ関連銘柄?
香りの重ね着は香水を1本で完結させず、複数の香りを組み合わせて自分仕様にする文化です。これが広がると、ブランド側では下記の変化が起きやすい。
- 香りの選択肢(SKU)が増える
- 香水+ボディ+ヘア+ホームなど複数カテゴリーの香りがセットで売れる
- 混ぜても破綻しないように香り設計の精度(持続・拡散・バランス)が重要になる
資生堂は、まさにその受け皿を複数持っています。
- IR資料で、2025年の欧州戦略としてフレグランスは毎年の柱商品を出す戦略を継続し、2025年はZadig&Voltaireの新商品が欧州成長を牽引する、と明記しています(香水を継続的な成長ドライバーとして扱っている)。
- 同じスライドで、アジア太平洋でもフレグランスの成長加速を掲げています。
- つまり重ね着トレンドで香水需要が伸びるだけでなく、企業側が香水を伸ばす前提で商品投入している点が、関連度を上げます。
注目ポイント
- 香水の開発・生産拠点を欧州に持つ(CoE+工場)
EMEAをフレグランスCoEとして位置づけ、香り研究・生産基盤まで説明しているのは、資生堂のフレグランス事業が付け足しではなく、一定の自立性をもつことのサインです。 - フレグランスの多ブランド運用ができる
ISSEY MIYAKE PARFUMS、narciso rodriguez、Serge Lutens、ZADIG&VOLTAIRE等の複数ブランドを並行運用しているので、重ね着トレンドで起きる香水コレクション化(複数本所有)の波をブランド分散で受け止めやすい構造です。 - 毎年柱商品を置く戦略(話題化と棚確保の型)
欧州で毎年1つの柱となる商品を出す方針は、SNS起点で熱量が生まれやすい香水市場と相性がいい(話題の核が毎年供給される)。 - ライセンス拡張で次の弾を増やしている(Max Maraなど)
香水市場ではファッションブランドのライセンスが重要で、Max Maraの長期ライセンスを取りに行っているのは香水を伸ばす意思の読み取り材料になります。 - 自社ブランドの香水も継続投入(SHISEIDO GINZA)
自社の顔としての香水を持つのは、重ね着文化が広がる局面で入口(認知)商品を作りやすい利点があります。
注意点
- 会社全体の業績は香水だけで決まらない
資生堂自身、アクションプランで中国・トラベルリテールの事業基盤再構築などを最優先課題として掲げています。香水が好調でも、全社の重心は地域・ポートフォリオ課題に左右され得ます。 - 香水はライセンス事業の比重が高く、入れ替わりリスクがある
香水の世界は契約更新・回収が普通に起きます。実例として、Dolce & Gabbanaが美容事業を自社回帰させる文脈で、香水ライセンスを資生堂から回収した(という業界報道)もあります。こうした構造は、香水が成長ドライバーであるほど重要なリスクになります。 - 香りが強すぎる反発や規制強化で、求められる設計が変わる可能性
重ね着が広がるほど、社会的には強い残香への反発も出やすく、ブランド側は心地よさ・配慮設計・低刺激へ仕様転換することがあります。香水を伸ばす局面ほど、R&Dと規制対応力が問われます(資生堂はCoE体制を置いているので、ここは実行力の見せ所でもあります)。
銘柄分析
資生堂(4911)は、化粧品・スキンケアを中心とするグローバル大手で、決算期は12月(1/1〜12/31)です。事業の見え方は地域(日本・中国・米州・欧州・トラベルリテール等)が基本で、需要の山谷(中国需要、免税店、北米のブランド動向)に業績が引っ張られやすい構造です。
直近の2024年12月期(通期)売上高は9,906億円(=990,600百万円)で、セグメント別には(概数)日本 283,800百万円/中国 250,000百万円/アジアパシフィック 71,700百万円/米州 118,500百万円/欧州 132,700百万円/トラベルリテール 107,800百万円/その他 26,200百万円と、日本・中国・免税(トラベルリテール)の比重が大きい構成です(※億円表示の丸めのため合計はズレる場合あり)。
一方で会社側は、2025年12月期(通期)予想として、売上高 965,000百万円/コア営業利益 36,500百万円/営業利益 △42,000百万円/親会社所有者帰属当期利益 △52,000百万円を掲げています(2025-11-10時点で修正あり)。ここで重要なのがコア営業利益は、構造改革費用や減損等の非経常を除いた社内管理指標で、会計上の営業利益(IFRS)とはズレる点です(稼ぐ力はコア、最終結果はIFRS、という二重帳簿を頭に入れる必要あり)。
進捗を見ると、2025年1〜9月(第3四半期累計)は、売上高 693,817百万円(前年差△4.0%)/コア営業利益 30,080百万円(+9.7%)と、コアでは改善している一方、営業利益は△33,350百万円と赤字です。差を作っている最大要因のひとつがのれん減損 46,818百万円(主に米州サイドの買収プレミアムの目減りのイメージ)で、ここは会計上の痛みがしっかり出ています。
地域別の温度感(2025年1〜9月、会社開示ベース)では、日本は219.1bn円でほぼ横ばい(+0.1%)だがコアOPは改善、一方でChina & Travel Retail は240.0bn円(△7.6%)、Americas は78.2bn円(△10.3%)と弱め。対してEMEA は96.1bn円(+5.0%)と相対的に底堅い、という並びです(※2025年はセグメント区分の見直しが入っており、比較は注記込みで読むのが安全)。
財務面は、2025/9末時点で現金及び現金同等物 78,160百万円。一方、社債及び借入金(短長)219,705百万円に加えて、IFRS16のリース負債(短長)112,051百万円があり、リースも含めた広義の有利子負債は厚めです(※IFRS16は負債に含める前提)。自己資本比率に相当する指標(親会社所有者帰属持分比率)は46.8%。また、営業CFは1〜9月で 61,537百万円とプラスで、足元のキャッシュ創出は確保しています。
(参考:試算)ネット有利子負債(=社債借入+リース−現金)≒ (219,705+112,051−78,160)=253,596百万円。
株主還元は、決算短信上の会社予想として年間配当40円(中間20円+期末20円)が示されています。
2026-02-09終値(2,858円)ベースの配当利回りは約1.40%(=40/2,858)で、利回り狙いというより業績正常化+バリュエーション修復の色が強い銘柄です(株価・利回りは日々変動)。
見るべきポイントは下記のとおりです。
① China & Travel Retail の底打ち:売上の塊。減速が続くと通期の絵が崩れやすい。
② 米州の立て直し(特に収益性):売上の弱さに加え、のれん減損が出ている=買収の期待値調整が進行中。
③ 「コアの改善」がIFRS利益に着地するか:コアは改善でも、非経常が続くと株価は傷の深さを見に行きがち。
④ キャッシュと負債(借入+リース)のバランス:営業CFは出ているが、負債サイドも厚い。
⑤ イベント:2026-02-10に2025年12月期の通期決算発表予定。ここで通期実績と2026見通しが更新され、評価軸がガラッと変わり得ます。

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