この記事で紹介したバッテリーパスポートとデジタル製品パスポートの関連銘柄を探してみた。
【2027年EU義務化】バッテリーパスポートとは?DPPの先行例と日本・企業への影響 | ブルの道、馬の蹄跡
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NTT(9432)
どんな会社?
通信(ドコモ/東西地域会社)に加えて、法人向けICT・SI(システム構築)・データセンター等を束ねる巨大なインフラ、IT連合体を統括しています。
今回のテーマに絡む文脈での独自性は、単なる「SI屋」ではなく企業間で安全にデータを流通させる仕組み(データスペース/データ連携基盤)をグループとして推進している点です。NTT自身が企業間データ連携のホワイトペーパーを出し、コネクタ等でデータ主権を確保しつつ交換する設計思想を整理しています。
なぜ関連銘柄?
バッテリーパスポート/DPPの本丸は、サプライチェーンを跨いで「必要なデータだけを」「改ざん困難に」「相互運用できる形で」やり取りすることです。つまり勝負所は、電池そのものというよりはデータ連携インフラです。
- グループ中核(旧NTTデータグループ)が、ウラノスの1stユースケースとしてバッテリートレーサビリティプラットフォームを商用化
電動車バッテリーのCFP集計や、リサイクル・リユース情報の可視化などを、企業間でデータ主権を確保しながら流通させる仕組みを提供開始しています。 - 日欧接続(Catena-X)まで踏み込んでいる
バッテリートレーサビリティ基盤と欧州Catena-Xの相互接続実証で、双方向のCFPデータ交換を行い、アーキテクチャ差分を吸収する中間層アプローチの有効性も示しています。国境を越えるDPPではここが重要となります。
なお、これらの中身を担っていたNTTデータグループは2025年9月26日に上場廃止となっており(完全子会社化の手続き)、上場銘柄としては親のNTT(9432)が実質的な受け皿になります。
注目ポイント
- 規制対応を超えた需要を取りにいける位置
バッテリーパスポートはEU規制起点でも、実務は「取引先からデータ提出を求められる」「国際で相互運用が必要」へと拡大します。ウラノスのユースケースとしての商用サービス開始は、国内実装の土台になり得ます。 - 国際相互運用の現場知見(Catena-X接続PoC)
認証方式・プロトコル・データモデル差を現実にどう吸収するかは、DPPの成否を左右します。相互接続実証の成功は、単なる概念実証より一段重い材料となります。 - NTT自身も企業間データ連携(データスペース)を重点テーマとして整理
NTTが公開したホワイトペーパーや研究資料では、コネクタ・認証認可・カタログ等の機能でデータ主権を確保した安全なデータ交換を実現する構造を示しています。DPP系の横展開(電池→化学→製造…)を狙うならこの思想が有効です。 - グループ総力戦が取りやすい
通信・クラウド/データセンター・セキュリティ・SIまで抱えるので、DPPで要求される「接続」「運用」「セキュリティ」「監査耐性」をワンストップに近い形で組みやすい(顧客の導入障壁を下げられる)という強みが出ます。
注意点
- 「普及=自動で儲かる」ではない(ネットワーク効果まで時間がかかる)
企業間データ連携は、参加企業が増えるほど価値が出ますが、立ち上がりは遅くなりがちです。参加には法務・取引先調整・データ品質整備が必要で、業界の足並みに左右されます。 - 標準・制度・運用が動く(改修コストが継続しやすい)
DPP/バッテリーパスポートは、規制詳細や業界標準の更新に追随し続ける必要があります。Catena-X接続でも制度・運用面の課題を継続的に扱う必要がある旨が示されています。 - 競合が強い領域(欧州のデータスペース、グローバルIT/クラウド、業界コンソーシアム)
データ連携の覇権は各陣営が狙う場所で、勝ち筋は技術だけでなくガバナンス(誰がルールを握るか)にも依存します。NTTは有力候補ですが、単独勝利が約束されるタイプの市場ではありません。
銘柄分析
NTT(9432)は、ドコモ(モバイル)を中核に、東西の固定通信網、法人・海外IT(NTTデータなど)、不動産まで抱える通信インフラ持株です。収益は月額課金のストック型が分厚く、景気敏感株ほど業績が振れにくい一方で、見どころは増配+自己株買いを淡々と積むかに寄りやすいタイプ。
直近の会社計画(2026年3月期=2025年度)は営業収益 14,190,000百万円/営業利益 1,770,000百万円を掲げています。上期(4〜9月)実績は営業収益 6,772,713百万円(前年差+2.8%)/営業利益 945,029百万円(同+2.7%)と堅調で、通期達成には下期も大崩れしない運営が焦点になりそうです。
財務は、上期末で 総資産 33,452,790百万円、一方で 株主資本比率 27.5% と前年差で低下しており(M&A/再編の影響を受けやすい局面は要注意)、ここはディフェンシブ銘柄らしさを確認したいポイントです。株主還元は、配当が 年5.30円(会社予想)。配当利回りは約3.37%です(株価・利回りは日々変動)。自己株買いも進んでいて、2000億円・上限15億株(2025/5/12〜2026/3/31) の枠に対し、2025年12月末までの累計で 989,292,600株/153,838,873,670円 を取得しています。
まとめるとNTTは「ストック型の大型ディフェンシブ+還元(配当/自己株買い)でじわっと回収する銘柄」で、見るべきポイントは
①ドコモの競争環境(料金・解約/獲得)
②グローバルIT(※NTTデータは2025/9末に完全子会社化)での採算改善
③財務レバレッジ(自己資本比率の戻り)
④配当と自己株買い実行の継続
⑤制度・規制(通信政策)
あたりです。
デンソー(6902)
会社HP:https://www.denso.com/jp/ja/
どんな会社?
世界の自動車メーカーに部品・システムを供給するTier1(一次サプライヤー)の代表格で、事業領域は「電動化(エレクトリフィケーション)」「パワートレイン」「サーマル(熱マネジメント)」「モビリティエレクトロニクス(車載電子・通信・ADAS等)」「先進デバイス」など、車の中枢を幅広く押さえています。
今回のテーマに関わってくるのは、モノづくり側なのにデータの識別・連携側も持っている点です。非車載領域で、ハンディターミナル、QR、RFID等の認識ソリューションも手掛けており(ID付与・読み取り・現場実装に強い)、パスポートの実装と相性が良いです。
なぜ関連銘柄?
- QRコード×ブロックチェーンで電池のトレーサビリティを実現する「バッテリーパスポート」を自社で開発(トレースIDを付与し、工程情報やCO₂排出量、リサイクル材含有率などを紐づける設計)
- Catena-XのEcoPass認定を日本本社企業として初取得。Catena-X準拠のDPP(デジタル製品パスポート)アプリが、ルールに沿って安全にデータ交換できることを示した。
- 日本側では経産省主導のウラノス・エコシステム(Ouranos)が2023年4月に始動し、デンソーは自動車産業でのデータ連携に関する課題整理・要件検討を推進してきた。
- NTTデータと共同で、秘匿データを守りつつ必要データだけ流通させる、電動車バッテリーの業界横断エコシステム構築に着手(2022年~)
注目ポイント
- 「EcoPass(Catena-X準拠)」を取った意味が大きい
DPPアプリがCatena-Xルールに適合し、承認された関係者間で安全にデータ交換できる、という位置づけです。欧州サプライチェーン接続の通行証になり得ます。 - 2027年2月のDPP初ユースケースを強く意識している
デンソー自身が、欧州電池規則の文脈で2027年2月からバッテリーパスポート導入が義務化見込みである点に触れ、バッテリーパスポート用アプリ開発とサプライチェーン提供まで言及しています。 - 第三者認証(TÜV Rheinland)まで視野に入れている
デンソーはTÜV Rheinland Japanと、DPP/バッテリーパスポート推進での連携(検証・認証サービス、技術文書作成、顧客支援など)を明確化しています。 - 「攻めと守り」を明言
規制対応(守り)だけでなく、標準化やエコシステム構築(攻め)で日本の競争力を高める、という語り口です。単なるコンプライアンス対応屋で終わらせない意志が見えます。
注意点
- 実装難度とコストが高い
法規制対応はコストがかかり、サプライチェーン横断トレーサビリティは「広範なデータ収集」と「複雑なシステム構築」が必要で難易度が高い、という問題認識が示されています。 - 自社だけでは完結しない
原料→材料→セル→パック→車両→二次利用→リサイクルまで、データの持ち主が分散しています。普及には、取引先・業界団体・海外データスペースとの継続調整が不可避(スピードが読みづらい)です。 - 国内(Ouranos/ABtC)と欧州(Catena-X)の二正面
どちらも重要ですが、仕様更新・相互運用・ガバナンスの変化に追随する体力が要ります。なおABtC関連では、NEDO採択事業への協力参画が決定した旨も出ています。
銘柄分析
デンソー(6902)は、サーマルシステム/パワトレイン/モビリティエレクトロニクス/電動化など、自動車向け部品・システムを幅広く手がける世界的サプライヤーです。
直近(2026年3月期の上期=2025/4–9)は、売上収益 3,590,467百万円(3兆5,905億円、前年差+3.3%)と増収だった一方、営業利益 211,417百万円(2,114億円、前年差-15.8%)と減益でした。会社側は、合理化努力や操業度差益があるものの、品質引当・研究開発費・関税等が利益を押し下げた旨を説明しています。
会社計画(通期、2026年3月期)は、売上収益 7,240,000百万円/営業利益 651,000百万円(10/31に業績予想を修正)で、為替前提は1USD=145円、1EUR=170円(第3四半期以降)です。
上期実績から単純計算すると、通期計画達成には下期で営業利益 439,583百万円(約4,396億円)が必要です(=651,000−211,417)。前年差で見ると、前期下期の営業利益(518,953−251,227=267,726百万円)をかなり上回る水準が必要で、「品質費用の収束+利益率の巻き返し」が最大の見どころになりそうです。
財務面は総じて厚めです。たとえば有報(2025/3期)では、現金及び現金同等物の期末残高 986,531百万円、営業CF 758,743百万円が開示されています。
また、2025/9/30時点の要約B/Sでは、社債及び借入金(流動)480,051百万円/(非流動)377,868百万円(合計約857,919百万円)などが示されています(IFRS16のリース負債は、表示上「その他の金融負債」側に含まれる可能性があるため、厳密な内訳は注記確認が必要)。
株主還元も自己株買い:2024/10/31決議の枠(上限4,500億円)について、累計221,716,900株・取得総額449,999,924,450円で完了しています。さらに自己株式の公開買付け:上限184,897,756株、上限価格2,209円、取得総額上限408,439,143,004円などが示され、開始時期は2026/4/28予定の通期決算公表以降に変更されています。
配当は、2026/3期予想で年64円(中間32円+期末32円)が示されています。
まとめると、デンソーは「自動車サプライヤーのど真ん中で、電動化・ソフト領域に投資しつつ資本政策も積極的」な銘柄で、見るべきポイントは
①品質費用の収束と利益率の戻り(下期の数字が主戦場)
②為替前提(USD/JPYなど)の感応度
③関税・自動車生産の変動
④自己株買い/公開買付けの実行度
⑤(予定される)2030中期経営計画の開示内容
あたりです。
パナソニック ホールディングス(6752)
会社HP:https://holdings.panasonic/jp/
どんな会社?
パナソニックHDは持株会社で、事業会社の集合体です。今回テーマ(バッテリーパスポート/DPP)に直結するのは、グループの電池中核であるパナソニック エナジー。EV向けを中心に、車載用円筒形リチウムイオン電池や、インフラ向け二次電池、乾電池まで幅広く扱います。
パナソニック エナジーは2022年4月設立で、一次電池から車載用円筒形LiB、産業・民生用LiB、蓄電モジュール/システムなどを事業範囲に置いています。
(EV電池の量産プレイヤーとして、サプライチェーン上の責任ある調達・環境情報の提示が避けて通れない立場です。)
なぜ関連銘柄?
パナソニックHDは自社のサステナビリティ開示の中で、EU電池規則(2023/1542)の発効を受け、電池サプライチェーンの環境・社会リスクについてデュー・ディリジェンスに取り組んでいると明記しています。また、パナソニック エナジー側でも、人権デュー・ディリジェンスとしてCSR実地監査(2023年度から開始、2024年度も継続)などを掲げています。
さらに国際連携面では、Global Battery Alliance(GBA)のSupporters一覧にPanasonic ENERGY Co., Ltdが掲載されており、バッテリーパスポートを推進する国際枠組みに接続しています。
注目ポイント
- 「EU対応=取引条件」になりやすい領域の当事者
バッテリーパスポートは制度・標準・調達が絡む取引の前提条件になりやすいです。電池メーカーは、顧客(OEM等)からの要請に合わせて、CO2、材料、調達、人権、リサイクル等のデータを揃える必要が出ます(バリューチェーン全体の設計問題)。 - 人権・環境DDを回す会社へ寄せている
EU電池規則のデュー・ディリジェンス要件を意識した取り組みをHDとして明記しています。さらにエナジー側で、リスクマッピング→高リスク購買先へのCSR実地監査の継続まで書いているのは、パスポート時代に強いです。 - GBA(Battery Passport推進の中心格)に名前がある
GBAは2023/2024のBattery Passport pilotsなどを進め、2027年に向けた枠組みづくりをしているプレイヤーです。そこにPanasonic EnergyがSupportersとして載っているのは、制度が来た後に慌てて追随するのではなく、国際エコシステム側の空気を吸える位置にいる材料になります。 - EV電池の供給プレイヤーとしての現場性
例として、Tesla向けに円筒形セルを供給する合意(Gigafactory)など、EV電池の量産・供給チェーンで動いてきた履歴があり、今後のパスポート要件を机上ではなく量産の現場で処理する側です。最近の動きとしても、Panasonic EnergyがZoox向けに2170電池を供給する契約を発表した、とReutersが報じています。
注意点
- パスポートはデータを出せば終わりではない
GBAの文脈でも、データ収集・スコア化・検証の方法が統一されていない/比較可能性に限界がある、など実務の泥沼が示唆されています。要求仕様や検証の作法が動けば、現場の追加コストと改修が増えます。 - EU規制の適用タイミングの揺れ・段階適用
たとえば第三者機関の整理では、2027年2月18日からEV電池等でバッテリーパスポートの義務化、など段階的な施行が語られます。実務は期限に合わせて逆算なので、解釈や実装ガイドの更新に振り回されるリスクは常にあります。 - サプライチェーンの上流に行くほど難易度が跳ね上がる
電池は原材料(重要鉱物)側のデータがボトルネックになりやすく、DDやトレーサビリティは、取引先の協力・監査・証憑の整備が必要です。パナソニック側も、リスクマッピングや監査で対応していると書いていますが、サプライヤー全体を巻き込む運用は簡単ではありません。
銘柄分析
直近では下記の記事で分析しているので参照してください。
Sensory Design(感覚デザイン)関連銘柄:積水ハウス・パナソニックHD・ダイキン【五感×住環境】 | ブルの道、馬の蹄跡

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