この記事で紹介したゆったり深く+飲まない旅の関連銘柄を探してみました。
旅行はゆったり深く+飲まない旅へ|スロートラベル×ノンアル旅の世界潮流と経済影響のメモ | ブルの道、馬の蹄跡
本記事は情報提供であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。最終的な投資判断は、読者ご自身の目的・許容リスク・最新開示の確認に基づいて行ってください。
- エイチ・アイ・エス(9603)
- ANAホールディングス(9202)
- 日本航空(9201)
エイチ・アイ・エス(9603)
HISは「旅行代理店」ではなく、旅行(送客)×ホテル(滞在)×交通(回遊)まで持つ企業構造ゆえに、旅行の価値観が速くたくさんから遅く深くへ移る局面で、旅の中身を作り替えて収益化できるかが問われる関連銘柄となります。
どんな会社?
旅行会社のイメージが強いですが、実態は旅行×宿泊×地域交通をまたぐ観光コングロマリット寄りの会社です。
有価証券報告書ベースでは、HISグループは大きく3つで構成されています。
- 旅行事業:海外・国内旅行の手配/企画/販売+付帯事業
- ホテル事業:日本・台湾・米国・インドネシア等でホテル運営+付帯事業
- 九州産交グループ:九州産業交通ホールディングス株式会社を持株会社とするグループで、自動車運送(バス等)・不動産賃貸など
つまりHISは「送客(旅行)」「滞在(ホテル)」「域内移動(交通)」まで触れる、観光消費の面を押さえやすい立ち位置にいます。
なぜ関連銘柄?
今回のテーマでは旅行の価値観が
- 短期・詰め込み → 長期・滞在型(遅く深く)へ
- 飲酒前提の旅 → 飲まない旅(健康・ウェルビーイング/宗教・ライフスタイル配慮)へ
この変化は、HISにとって 「商品設計」「収益の取り方」「地域連携」を作り替える圧力であり、同時に機会でもあります。
- 遅く深くは、旅行会社の単発手数料モデルを揺さぶる
詰め込み型が減ると、典型的には取扱件数は減りやすい一方、滞在が長くなるほど 宿泊・体験・域内移動・ガイド等の付加価値を束ねて単価を上げる設計が重要になります。
ここでHISは、旅行だけでなくホテル事業と地域交通(九州産交)まで持つので、滞在や域内回遊に寄せた再設計がしやすい構造です。さらに、HIS自身が長期滞在型の商品を打ち出している点は、テーマとの接続が強いです(例:長期滞在・暮らすように旅する文脈の企画)。 - 飲まない旅は、観光消費の中身を作り替える
飲酒が主役の夜型消費(バー、深夜の移動、二次会ノリのツアー等)が弱まると、その分昼間体験/ウェルネス/食(ノンアル・ペアリング)/文化体験へ再配分されやすい。
HISは旅行商品の編集者なので、飲まない前提で満足度が上がる旅程を作れるかが勝負になります(これは客層拡張にもつながる。健康志向、家族旅行、宗教的に飲酒しない層、出張者のアフター飲み会回避など)。
結論:HISはこのテーマに対し、旅行需要の量だけでなく中身の設計で勝負する側=関連銘柄として語りやすい会社です。
注目ポイント
- 地方・滞在型に振った地域活性の動きが増えている
HISは地方創生系の取り組みを明確に増やしています。たとえば、株式会社さとゆめへの追加出資を通じ、自治体連携や新しい目的地づくり(Destination Create Project等)に触れています。遅く深くの旅は、結局地域側の受け皿(体験/人材/交通/宿)がないと成立しないので、ここに張りに行くのは筋が良いです。 - ホテル事業がある=飲まない旅の受け皿を作れる側
報告セグメントとしてホテル事業を持つのは大きいです。
飲まない旅は、飲食店だけでなく宿の設計(ウェルネス、睡眠、朝食、スパ、ナイトコンテンツ等)で差が出るので、旅行会社単体より実装まで踏み込みやすいです。 - 移動そのものの再編集(滞在×回遊)に賭けられるカードが多い
キャンピングカー系のレンタル販売提携など、移動と滞在が一体になった旅の取り込み(遅い旅への親和性が高い)。株式会社AirXとの提携で、観光地コンテンツ開発を狙う動き。スピード旅行から体験編集へ軸足を移す時、こういうカードが有効になってきます。 - サステナ×旅の言い訳を公式に取りに行っている
HISはカーボンニュートラル目標(FY2030でScope1-2実質ゼロ、FY2050でScope1-3実質ゼロ)を掲げています。遅く深くは、移動回数を減らし、滞在消費を厚くするという意味で、サステナ文脈と相性がいい。ここを企業側がどう商品に落とすかは、今後の差別化ポイントになり得ます。
注意点
- コンプラ/ガバナンスは実害が出た(ブランド毀損リスク)
HISは雇用調整助成金を巡る問題で、子会社で不正受給が認定された件や、返還・処分等を開示しています。東京労働局の調査・判断に関する記述もあります。
旅行は信用産業なので、炎上・信頼低下が予約に波及しやすい点は、テーマに関係なく押さえるべきリスクです。 - 旅行会社の構造リスク
為替、燃油、地政学、感染症、航空座席供給、規制などで需要が急変する。OTAs(オンライン旅行代理店)や直販が強く、中間マージンが圧迫されやすい。など、遅く深くシフトは追い風になり得ますが、需要総量が弱い局面では効きにくい(単価を上げても母数が減る)という現実もあります。 - 飲まない旅は作れば売れる、ではない
飲酒の有無は価値観に直結するので、雑に扱うと逆効果。
ノンアル対応はメニューを増やすだけでなく、コミュニティ圧(飲め圧)を排除した運営、食・体験の再設計、ガイド教育など面倒で大事な実装が多い。ここをやり切れるかは未知数です。
銘柄分析
エイチ・アイ・エス(HIS、9603)は、主力の旅行事業に加えてホテル事業、九州産交グループ(交通・不動産など)も抱える複合観光・サービス型の会社です。足元は旅行需要の回復が続く一方、為替・地政学・航空座席供給など外部変数が大きく、業績のブレも出やすい局面です。ここでは、決算短信・決算説明資料などのIR一次情報を中心に、直近実績→来期計画→財務・還元→株価/バリュエーション→リスクまでを整理します。
銘柄概要:事業内容・主要セグメント・業界での立ち位置
事業内容
HISグループは主に以下の4部門で構成され、決算短信のセグメント区分とも対応しています。
- 旅行事業:海外旅行・国内旅行の手配/企画/販売と付帯事業
- ホテル事業:日本・台湾・米国・トルコ等でホテル運営(付帯含む)
- 九州産交グループ:自動車運送、不動産賃貸等
- その他:テーマパーク運営(例:ラグーナテンボス)、旅行保険、予約システム等
競争優位性(商品造成力と需要の波の取り込み力)
IRの説明から読み取れるHISの強みは、
- アウトバウンド(海外旅行)で方面別・商材別に伸び筋を作る商品設計(欧州/中近東方面、添乗員付き、AIR+ホテルなど)
- インバウンド/海外現地法人ネットワークによる受客(海外拠点のインバウンド取扱高などを開示)
- ホテル事業の高稼働・高単価化(マルチブランド、コラボルーム等)
あたりです。逆に、外部環境の振れ(為替・航空・地政学)が直撃しやすい点は構造的な弱みでもあります。
直近業績:2025年10月期(通期)実績のポイント
連結業績(売上・利益の着地)
2025年10月期は、
- 売上高:373,106百万円(前年差 +8.7%)
- 営業利益:11,627百万円(前年差 +7.1%)
- 経常利益:11,381百万円(前年差 +8.9%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:4,719百万円(前年差 ▲45.9%)
となりました。売上・営業利益は増収増益ですが、最終利益は落ちています。
なぜ最終利益が伸びなかったのか(特別損失が重い)
会社説明では、トルコ法人の事業縮小に関連する引当や、ホテル事業での減損などが最終利益を押し下げた、とされています。
実際に適時開示では、減損損失 3,774百万円、事業整理損失 2,445百万円などの特別損失計上が示されています。
セグメント別(どこが稼いだ/伸びた?)
2025年10月期のセグメント概況は以下(売上高→営業利益)。
- 旅行事業:316,006百万円 → 10,592百万円
- ホテル事業:25,244百万円 → 3,618百万円
- 九州産交グループ:25,381百万円 → 806百万円
- その他:12,377百万円 → 231百万円
補足すると、決算説明資料では
- 旅行事業:欧州方面や添乗員付きツアーが回復を牽引、一方で海外法人(カナダ/トルコ等)の苦戦要因も言及
- ホテル事業:国内ホテルの高稼働・高単価、マルチブランド/コラボルーム施策が寄与
といった増減要因が整理されています。
通期計画と進捗:2026年10月期の会社計画と、足元のヒント
会社計画(2026年10月期予想)
会社予想は、下記を掲げています。
- 売上高:420,000百万円
- 営業利益:14,000百万円
- 経常利益:14,000百万円
- 親会社株主に帰属する当期純利益:9,600百万円
この予想が意味するのは、最終利益の大幅な回復(前年差で約2倍)を織り込む計画という点です。背景には、前年差で重かった特別損失の剥落(または縮小)も含まれる可能性があります(来期は平常運転に寄せる設計)。
進捗について(注意:現時点で四半期実績は未公表タイミング)
IRカレンダー上、2026年10月期の第1四半期決算発表は2026/03/13予定となっており、この記事作成時点では通期計画に対する正式な進捗率はまだ評価しづらいです。
その代わりに先行指標として、HISは月次の旅行取扱高を開示しています。例えば2025年12月(日本国内)合計取扱高は前年同月比109.3%、海外旅行は111.2%など、需要の底堅さが読み取れます(ただし取扱高=売上ではありません)。
経営戦略・取り組み(IRで明示されている重点)
決算説明資料では、下記の論点が明示されています。
- 旅行:方面/商材の強い領域(例:欧州方面、添乗員付き、AIR+ホテル)を伸ばす
- ホテル:マルチブランド戦略、コラボルーム展開などで単価を引き上げる
- 海外:一部地域での不振要因(カナダ景気減速、トルコの構造改革等)への対応
財務面・株主還元:健全性と戻ってきた配当、優待の設計
財務健全性(自己資本・負債・収益性)
2025年10月末の財務指標は、
- 総資産:369,671百万円
- 純資産:54,360百万円
- 自己資本比率:14.7%
- ROE:7.0%(会社開示)
負債サイドでは、貸借対照表に下記が確認できます。
- 短期借入金:22,562百万円
- 長期借入金:138,979百万円
- 社債/転換社債:5,000百万円
- リース債務:41,657百万円
- 現金及び預金:123,909百万円
ここから機械的に試算すると(概算):
- 有利子負債(借入+社債+リース)≒ 208,198百万円
- ネット有利子負債(上記−現金)≒ 84,289百万円
となり、財務レバレッジは依然軽くはない部類です(ホテル等の固定費/投資もあるため、景気後退局面では注意)。
キャッシュフロー(稼ぐ力が戻っているか)
2025年10月期の連結CFは、下記です。
- 営業CF:13,602百万円
- 投資CF:▲8,679百万円
- 財務CF:▲2,230百万円
- 現金及び現金同等物期末残高:106,364百万円
株主還元:配当・優待
- 2025年10月期の年間配当:20円(復配)
- 2026年10月期の会社予想配当:25円
株主優待(公式)は、毎年4月末・10月末に100株以上で、下記です。
- HIS株主優待券(保有株数に応じて2,000円相当〜)
- ラグーナテンボス入園割引券(100株以上一律)
株価とバリュエーション:いま市場は何を織り込んでいる?
株価推移(高値・安値・直近水準)
Yahoo!ファイナンスの表示では、直近株価は1,289円(2026/02/16記事作成時点)、年初来高値は1,762円(2025/04/22)、年初来安値は1,217円(2025/12/03)です。
PER・PBR・配当利回り(予想PERが低い理由に注意)
同じくYahoo!ファイナンスでは、下記が表示されています。
- 予想PER:10.70倍
- 実績PBR:1.73倍
- 予想配当利回り:1.94%
一方、2025年10月期の実績EPS(62.78円)で単純計算すると、株価1,289円は実績PER約20.5倍に相当します(予想PERの低さは来期の利益回復計画を前提にした見え方)。
市場平均との比較(東証プライム)
JPX公表の「規模別・業種別 PER/PBR(2026年1月末、連結ベース)」では、下記です。
- 東証プライム(総合)加重平均PER:19.8倍 / PBR:1.7倍
- 東証プライム(サービス業)加重平均PER:30.8倍 / PBR:1.6倍
HISは、PBRは概ね市場並み〜やや高め、PERは予想ベースでは低く見える一方で実績ベースでは市場並みという、ちょっとクセのある位置づけになります。
業界動向・競合比較:成長性と、勝ち筋/負け筋
業界の追い風:需要回復は継続。ただし価格と供給がカギ
HIS自身も、為替動向、燃油価格、航空座席など外部要因の影響を繰り返し言及しています。旅行は需要が戻っても、供給制約(航空便)やコスト(燃油・人件費)で利益が圧縮されやすい。
月次取扱高の開示を見ると、年末年始など季節要因も含みつつ、海外旅行は伸びが確認できます(例:2025年12月の海外旅行取扱高は前年同月比111.2%)。
競合環境:オンライン勢×大手旅行会社×専門領域の三つ巴
上場企業に限っても、オンライン旅行(OTA)や航空券比較、体験予約などが競合軸になります。HISは店舗/オンライン/法人などチャネル別の取扱高も開示しており、複数チャネルで需要を拾う設計が特徴です。
HISの強み:商品造成(方面・付加価値)+海外ネットワーク+ホテル収益の上積み
HISの弱み:外部環境に利益が振られやすい/海外拠点の当たり外れ(例:カナダ・トルコの課題言及)
リスクと今後の見通し:株価に出やすい地雷と伸びしろ
主なリスク(業績・株価への影響が大きい順)
- 為替(円安):需要にはプラス/マイナス両面だが、海外旅行コストや旅行者心理に直撃しやすい
- 地政学・感染症・災害:旅行需要の急減リスク(旅行業の宿命)
- 航空供給・燃油・人件費:売上が戻っても利益が戻らない局面が起こる
- 海外法人の不確実性:地域ごとの景気/規制で業績差が出やすい
- 財務レバレッジ:自己資本比率は14%台で高くはない(景気後退局面の耐性に注意)
ガバナンス/コンプライアンス(過去事案の再発防止)
HISは再発防止策の実施状況報告を公表しており、ガバナンス体制の強化を進めています。投資家としては実装が続くか、運用が形骸化しないかを定点観測する論点になります。
今後の成長ドライバー
- 来期計画どおりの最終利益回復(9,600百万円予想)が達成できるか
- 旅行:高付加価値領域(欧州方面・添乗員付き等)の伸長が継続するか
- ホテル:高稼働・高単価の維持、海外ホテルの改善(グアム等の課題含む)
- 月次取扱高のトレンドが、四半期決算にどこまで売上・利益として落ちるか
まとめ
- 2025年10月期は増収増益だが、特別損失で最終利益は大きく減少。
- 2026年10月期は最終利益の大幅回復を計画しており、予想PERが低く見えるのはこの前提があるため。
- 財務は回復途上で、自己資本比率は14%台。需要が崩れた局面の耐性チェックは必須。
- 配当は復配(年20円)→来期25円予想、株主優待も継続。
- 旅行は外部変数が巨大なので、月次取扱高→四半期決算(利益)へのつながりを追うのが実務的。
ANAホールディングス(9202)
ANAホールディングス(9202)はスロートラベルと飲まない旅が進むほど移動を売るから旅の質を設計するへ航空会社の役割が変わる局面で、インバウンド需要・ブランド設計・脱炭素対応・貨物強化まで含めて影響を受ける関連銘柄です。
どんな会社?
航空を中核に、LCC・旅行・空港地上支援・物販まで抱える航空グループです。
事業セグメントはエアライン(旅客・貨物)に加え、航空関連(空港ハンドリング等)、旅行、商社・リテール等を持つ、という区分で開示されています。
なぜ関連銘柄?
- 速くたくさん→遅く深く(スロートラベル)
これは航空会社にとって、単純に旅行回数が減るリスクと、1回あたりの滞在・消費が厚くなる機会が同居します。需要の中心が移動の効率→滞在の質へ寄ると、航空は旅の入口として、旅程の柔軟性(乗継・オープンジョー・ストップオーバー的な使われ方)、観光地の分散(混雑回避)に合わせた路線・供給、旅行商品(航空+宿+体験)の編集力が価値になります。ANAグループは、航空だけでなく旅行(ダイナミックパッケージ等)にも触っていて、投資家向け説明でも旅行セグメントの動きが語られています。 - 飲まない旅(sober travel)
飲酒が旅の主役でない人が増えると、観光消費は夜のアルコール中心→昼の体験・健康・睡眠・食の質へ寄りやすい。ここで航空会社は、機内・ラウンジ体験の設計(飲酒前提からの脱却、ノンアル選択肢の拡張)、ウェルネス寄りの旅程(移動の疲労を減らす、食事・睡眠の満足度を上げる)が、ブランド価値や単価(プレミアム需要)に直結します。実例として、ANAの機内ドリンクメニュー(路線・時期ごとにPDFで公開されるもの)には「Non-alcohol Drinks(ノンアルコールドリンク)」の区分があり、ノンアル選択肢を設計要素として扱っているのが確認できます。また、羽田の国内線ANAラウンジでノンアル飲料を期間限定提供した事例も報じられています(ノンアル6種類など具体名あり)。つまりANAは、旅の入口の移動だけでなく、飲まない人を含む体験の標準化が競争要因になっていく局面で、影響を受けやすく・打ち手も持ちやすい銘柄です。
注目ポイント
- インバウンド回復を取り込み、国際旅客が伸びている
FY2025(2025年3月期)決算で、ANAホールディングスは売上高2兆2,618億円(過去最高)、国際旅客収入が8055億円(訪日需要が強く過去最高)などを公表しています。
遅く深くの旅行は、特に国際線だとせっかく行くなら長く滞在になりやすく、高単価の余地が残ります。 - LCC・新ブランドで旅の多様化を受け止められる
スロートラベルは必ずしも豪華旅ではなく、節約しつつ長く滞在する方向もあります。その受け皿として、グループがフルサービス+LCC+新ブランドを持つのは構造的に強い(需要の温度差を取り込める)。 - 貨物の強化で旅以外の稼ぎも伸ばしやすい
旅の価値観が揺れて旅客が読みにくいほど、貨物の存在感が増します。ANAは Nippon Cargo Airlines の買収を進め、2025年8月に完了予定(規制当局の承認報道あり)で、国際貨物の強化を狙っています。 - 脱炭素対応はスロートラベルと相性が良い
スロートラベルは、社会的には移動の意味が問われやすい潮流でもあります。ANAグループは2050年カーボンニュートラルを掲げ、2030年のCO2削減目標や、SAF(持続可能な航空燃料)を中核にする移行戦略を更新したと発表しています。
環境対応はコスト要因である一方、企業顧客・高付加価値層にとっては選好要因になり得ます。
注意点
- 外部ショック耐性が弱い
為替、燃油、地政学、感染症、空港制約、機材トラブルなどで業績が大きく振れます。ANA自身もマクロ要因を注視しつつコスト管理、と決算資料で言及しています。 - 遅く深くは便数や短期往復に逆風にもなりうる
スロートラベルが広がるほど、理屈の上では旅行回数(搭乗回数)は減りやすい。単価や高付加価値で補えるかが勝負で、ここが読み違えると伸び悩みます。 - 脱炭素は対応しないコストと対応するコストの両方が重い
SAF調達や排出枠・規制対応は、短中期の収益を圧迫し得ます。一方で対応が遅れると法人需要や規制面で不利になり得る、という二重拘束。ANAもCORSIA等の制度環境を踏まえた戦略更新を明示しています。 - 競争環境(LCC・他社・直販強化)
国内はもちろん、国際線も競争が激しく、需給が緩むと運賃が下がりやすい。グループ内でブランドを分ける戦略自体が強みでもあり、同時に棲み分けの難しさもあります。
銘柄分析
ANAホールディングス(9202)は、国内最大級の航空グループとして、航空(国際・国内)を中核に、旅行、商社などを束ねます。足元は需要回復の追い風が続く一方、燃油・為替・人件費、機材制約といった航空会社あるあるの不確実性も大きい局面です。ここでは、決算短信・IR資料の数字をもとに、直近業績→通期見通し→財務と還元→株価評価→業界比較→リスクまでを整理します。
銘柄概要:事業内容・セグメント・競争優位性
事業の骨格(何で儲ける会社か)
ANAHDの報告セグメントは「航空事業」「航空関連事業」「旅行事業」「商社事業」で、航空が利益の柱です。
主要セグメント
- 航空事業:国際線・国内線の旅客/貨物。需要と運賃(イールド)、燃油、為替、供給(機材・人員)でブレます。
- 貨物:景気循環の影響を受けつつ、需給や高付加価値貨物で収益機会。今後はNCA(日本貨物航空)統合のシナジーを掲げています。
- 旅行/航空関連/商社:航空の周辺で収益を補完(景気・訪日需要に連動しやすい)。
競争優位性・業界での位置付け
- 国際需要の取り込み余地:IRでは、世界の需要増や訪日増(2025年の訪日外国人旅行者数が過去最高更新と明記)を前提に、国際旅客を成長ドライバーに据えています。
- 成田・羽田を軸にしたハブ競争:2029年の成田空港拡張(発着回数増)を大きな機会として戦略に織り込んでいます。
- ブランド/品質評価の蓄積:決算短信内で、SKYTRAX評価やCDP評価について触れています(定量的優位というより選好率の下支え要因)。
直近業績:2026年3月期 第3四半期(累計)の実績と要因
主要指標(連結)
- 売上高:1,984,684百万円
- 営業利益:156,301百万円
- 経常利益:185,835百万円
- 親会社株主に帰属する四半期純利益:139,235百万円
要因は何か(会社コメントの要旨)
- 国際旅客の回復:国際線旅客数は前年同期比で増加(会社は旅客数増に加え単価上昇が寄与と説明)。
- 国内旅客の積み上がり:国内線も旅客数増・単価上昇を説明。
- 貨物:輸送量は増加も、単価(イールド)は低下と説明(需給・市況の影響が出やすい部分)。
セグメント別(累計、外部売上/利益)
- 航空事業:売上 1,764,464百万円/利益 204,347百万円
- 航空関連事業:売上 138,577百万円/利益 15,776百万円
- 旅行事業:売上 125,251百万円/利益 11,527百万円
- 商社事業:売上 240,438百万円/利益 10,583百万円
- その他:売上 68,374百万円/利益 2,394百万円
見方:利益の大半が航空事業に集中しており、国際旅客の需給・運賃と燃油・為替の影響が、結局いちばん株価に影響しやすい構造です。
通期計画と進捗:会社予想・戦略のポイント
2026年3月期(通期)会社予想(連結)
- 売上高:2,480,000百万円
- 営業利益:200,000百万円
- 経常利益:194,000百万円
- 親会社株主に帰属する当期純利益:145,000百万円
進捗(第3四半期累計 → 通期予想に対して)
実績から単純計算すると、下記の通りとなります。(計算:第3四半期累計÷通期予想)
- 売上進捗:約80.0%
- 営業利益進捗:約78.2%
- 経常利益進捗:約95.8%
- 純利益進捗:約96.0%
経営戦略(直近IRで強調されている論点)
2026-2028年度の中期戦略では、下記の方向性を提示しています。
- 国際旅客・貨物を成長ドライバーに据える
- NCA統合でシナジー効果300億円を掲げる
- 今後5年間で2.7兆円(航空機・DX等)という過去最大規模の投資
- 2028年度に営業利益2,500億円、2030年度に3,100億円(営業利益率10%)を目指す
財務面・株主還元:健全性と還元姿勢
財務の現状(直近:第3四半期末)
- 総資産:3,579,485百万円
- 純資産:1,315,471百万円
- 自己資本比率:37.7%
航空は資産(機材)と負債(借入・リース)が大きくなりやすい業態なので、自己資本比率は安全域を見る目安になります。
キャッシュフロー(直近通期:2025年3月期)
- 営業CF:373,034百万円
- 投資CF:▲343,656百万円
- 財務CF:▲170,154百万円
- 現金及び現金同等物 期末残高:862,718百万円
営業で稼いだキャッシュを、投資(機材等)と財務(返済・還元等)に回す回復局面の航空会社らしい形です。
収益性の参考指標(2025年3月期)
会社資料では、2025年3月期の自己資本当期純利益率(ROEに相当)が14.1%と示されています。
配当・自社株買い・優待
- 年間配当:2025年3月期 60円、2026年3月期(予想)60円。
- 株主還元方針(中期):配当性向20%程度を基本に、機動的な自己株式取得で還元拡充、中間配当制度の導入予定、株主優待は2026年6月以降に刷新・拡充予定と明記。
- 現行の株主優待(公式案内):国内線の株主優待制度に関する告知(有効期間延長等)を案内。
- 株主優待割引の割引率(公式運賃案内):株主優待割引は50%相当の割引と記載。
株価とバリュエーション:いま何倍まで買われているか
株価水準(例:直近終値)
直近の株価例として、株探では2026/2/13時点で3,345円などが確認できます。
バリュエーション指標(PER・PBR・利回り)
- 指標例(2026/2/13時点の表示例):PER 10.27倍、PBR 1.43倍、配当利回り 1.79%。
- 別サイトの表示例でも、PER 約10倍、PBR 約1.2倍、利回り 約1.5%といったレンジ。
市場平均(TOPIX等)との比較
東証プライム全体の目安として、PER 約20倍、PBR 約1.9倍、配当利回り 約2.0%といった水準が示されています(同資料の「計」行)。
※航空株は景気循環・燃油・為替・地政学で利益が振れやすく、TOPIX平均と単純比較すると低PERが常態に見えることがあります。見るべきは、需要が強い局面で利益の質(運賃・搭乗率・コスト)が改善しているか、そして次の景気後退に耐える財務です。
業界動向・競合比較:成長性と、ANAの強み/弱み
業界の追い風
ANAの中期戦略は、世界の航空需要増と訪日需要の増加、そして成田拡張を成長機会として織り込んでいます。
競合(JAL)との簡易比較(数字の前提に注意)
JAL(9201)はIFRS、ANA(9202)は決算短信上は日本基準で開示されており、会計基準の違いに注意が必要です。
それでも規模感と収益トレンドの参考として、第3四半期累計(4-12月)で見ると、
- JAL:売上収益 1,513,758百万円、営業利益 174,323百万円。
- ANA:売上高 1,984,684百万円、営業利益 156,301百万円。
配当の見え方も違いがあり、JALは2026年3月期の年間配当予想を92円(中間46円・期末46円)と明記しています。
ANAは2026年3月期(予想)60円の記載です。
ANAの強み/弱み(現時点の整理)
- 強み:国際旅客を成長ドライバーに据え、成田拡張を見据えた投資・ネットワーク強化を明確化。貨物ではNCA統合でシナジー目標を提示。
- 弱み(構造):レバレッジが大きくなりやすい業態で、燃油・為替・需給に利益が左右される。自己資本比率は第3四半期末で37.7%。
リスクと今後の見通し:業績・株価に影響する論点
主なリスク
- 燃油価格:コストの大物。急騰局面では収益圧迫要因。
- 為替(円安/円高):燃油・機材・整備など外貨コストと、国際需要の獲得環境の双方に影響。
- 供給制約(機材・人員):需要があっても供給できないと取り逃がす。中期では大規模投資(2.7兆円)を掲げる一方、投資回収の不確実性も増える。
- 地政学・感染症・規制:需要が突然蒸発する尾のリスク。
- 環境対応コスト:GX戦略としてSAF導入促進等を掲げるが、コストと価格転嫁の綱引きが続きます。
成長ドライバー
- 国際旅客の事業規模拡大(座席キロ1.3倍等の方向性)
- 貨物の拡大とNCA統合(シナジー300億円)
- DX投資(5年で2,700億円規模)と生産性向上
- 成田拡張をにらんだハブ競争力強化
まとめ
- 直近(2026年3月期3Q累計)は、売上 1,984,684百万円・営業利益 156,301百万円と航空事業中心に利益を稼ぐ構造が確認できます。
- 通期予想に対する進捗は、利益(特に経常・純利益)が高めに見える一方、燃油・為替などブレ要因の存在は常に意識が必要です。
- 中期では「国際旅客×貨物」を成長ドライバーに、NCA統合(シナジー300億円)と過去最大規模の投資(5年2.7兆円)を掲げています。
- 株主還元は、配当性向20%程度+機動的な自己株取得、中間配当導入予定、優待刷新(2026年6月以降)など拡充姿勢が明記されています。
- バリュエーションは(表示例ベースで)PER約10倍・PBR約1.2〜1.4倍レンジで、TOPIX平均(PER約20倍)より低めに見えますが、航空は循環・レバレッジを織り込む業種なので、景気後退でも耐える財務とコスト構造の確認が重要です。
日本航空(9201)
JALは、旅の入口(航空)だけでなく、旅の中身(地域回遊・二次交通・体験設計)と、飲まない人を含む標準の上質体験を作りに行く航空会社です。ノンアルを概念ごと機内サービスに書いてしまうあたり、時代の空気に敏感で面白い存在です。
どんな会社?
空の移動を中核にしつつ、LCC・貨物・マイル/生活サービスまで広げている航空グループです。
さらに投資家向けには、事業領域を「FSC(フルサービス)/LCC/貨物・郵便/マイレージ・ライフスタイル・インフラ」などのドメインで整理して示しています。
なぜ関連銘柄?
このテーマは旅行消費の形が変わる話で、航空はその入口=需要の温度変化が最初に出やすい業種です。その上でJALは、変化に合わせて飛行機以外も組み合わせて稼ぎに行く設計が見えるため、関連銘柄として語りやすいです。
- 速くたくさん→遅く深く(スロートラベル)との接点
スロートラベルが進むと、旅行回数や短期往復は伸びにくい一方で、二次交通(空港から先)や地域回遊を整える側が強くなります。JALは地域の移動課題(空港からの足、地域内交通、予約・手配の分断)に対し、空港前後の移動をワンストップ化する「JAL MaaS」を掲げ、地上交通の予約・購入やクーポン提供まで含めた設計を説明しています。さらに具体例として、2025年夏に「オホーツク観光MaaSプロジェクト」で電子チケットを展開し、女満別空港から知床方面までの広域二次交通をまとめる取り組みを公表しています。地域と深く関わる旅という方向性は、ワーケーション等を通じた新しい旅のスタイル提案など、JALの地域プラットフォーム側の説明とも噛み合います。要するに、スロートラベルは飛行機でどこへ行くかだけでなく降りてからどう滞在し、どう回遊するかが主戦場になりやすく、JALはそこに商品・仕組み側から踏み込み始めている、という関係です。 - 飲まない旅(ソバー)との接点
飲まない旅は、夜の飲酒中心から体験・睡眠・健康・食の質へ価値軸が移る話です。JALはこの潮流を、プロダクトへ織り込んでいます。国内線ファーストクラスの飲み物ページで、「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という概念を解説し、ALC.0.00%の飲料を用意している旨を明記しています。国際線プレミアムエコノミー等でも、Non-alcoholic beerをメニューとして掲示しています。ラウンジでもノンアルビール/ノンアルワイン提供開始が報じられています(対象ラウンジ・銘柄の具体記述あり)。つまりJALは、飲む/飲まないの選択が当たり前になる世界で、機内・空港体験を飲酒前提から組み替える当事者です。
注目ポイント
- インバウンド回復+国際需要を取り込み、業績が強い局面にある
2025年3月期(FY2024)通期で、売上収益 1兆8,440億円、EBIT 1,724億円、純利益 1,070億円(再上場後の過去最高売上)と公表。
2026年3月期1Qでも、増収・EBIT大幅増(前年同期比で倍増など)と開示されています。 - 航空以外を太くする設計
JALはマイル・生活サービス側で、搭乗だけでなく日常利用でもステータスが積み上がるLife Status Programを前面に出しています。スロートラベルの時代は年に何回も飛ぶ人だけが主役ではなくなるので、飛ばなくても関係が続く仕組みは、旅行回数の伸び悩みリスクを緩和しやすいです。 - LCCを抱えて旅の多様化を取りに行ける
LCC領域では、ZIPAIRやSPRING JAPANについて、ネットワーク拡大やインバウンド需要獲得の狙いを決算リリース内で説明しています。長く滞在するから移動コストは抑えたい層にも刺さる余地があるため、スロートラベルと相性が良いカードです。 - 脱炭素(SAF)で航空の正当性を守りに行っている
JALは「2030年度に燃料の10%をSAFに置換」「2050年ネットゼロ」を目標として掲げ、次世代SAFの投資ファンド参画も発表しています。
また国産原料・サプライチェーン構築の文脈でも、SAF目標に触れる外部発表が出ています。
スロートラベルが広がるほど移動の環境負荷が語られやすくなるので、ここは中長期で避けて通れない注目点です。
注意点
- 外部環境で利益が振れやすい
通期でも円安等が費用を押し上げた要因として言及され、四半期でも燃油価格や為替の影響に触れています。航空はどうしてもマクロの波を正面から食らう業種です。 - スロートラベルは便数・搭乗回数に逆風になり得る
これは構造的な話で、旅行が年に何回も短期でから回数は減って滞在が伸びるへ寄ると、航空会社は単価(高付加価値)や非航空収益で補えるかが勝負になります。JALは対策カードを持つ一方、トレンドが急に進むと読み違いが痛い領域です(ここは推論です)。 - SAFは必要だが手に入らない/高い問題が残る
SAFは供給制約とコスト高が世界的なボトルネックで、業界全体として目標達成が簡単ではない、という厳しい見方が報じられています。JAL単独の努力だけで解決しづらい=コスト・供給・制度の三重苦がリスクです。 - 2010年の破綻という記憶
JAL自身の投資家向け説明でも、2010年の破綻からの教訓に言及があります。
今の財務がどうこうというより、航空は一回の外部ショックでバランスが崩れることを市場が学習済み、という意味で無視できない注意点です。
銘柄分析
日本航空(JAL)は、国際旅客の回復(インバウンド需要)と、国内旅客の取り込み、貨物の下支え、そしてマイル/金融・コマースといった非航空寄り収益を組み合わせて稼ぐ航空グループです。直近は第3四半期累計で過去最高益(EBIT)を更新しています。
銘柄概要:事業内容・主要セグメント・業界での位置づけ
事業内容(JALグループの稼ぎ方)
JALは決算説明資料上、収益を大きく次の領域で説明しています。
- フルサービスキャリア(FSC):国際旅客/国内旅客/貨物郵便(主力)
- LCC:ZIPAIR等(需要に合わせた運航・路線戦略)
- マイル/金融・コマース:マイルを起点にした決済・金融・物販等(利益貢献が大きい領域)
- その他(旅行・受託等):旅行・受託など
競争優位性・業界内の位置づけ
- 国内線・国際線のネットワーク×ブランドで高付加価値需要を取り込みやすい(FSCが稼ぎ頭)。
- 航空需要は景気・燃油・為替で揺れる一方、マイル/金融・コマースは航空以外の稼ぎとして利益の安定化に寄与しやすい、という構造が読み取れます(後述)。
直近業績:主要指標の推移と増益要因
2026年3月期 第3四半期累計(2025/4/1–12/31)
会社資料ベースの主要数値(累計)は以下です(単位:億円)。
- 売上収益:15,137億円(前年差 +9.2%)
- EBIT:1,791億円(前年差 +24.2%)
- 純利益:1,137億円(前年差 +24.9%)
増益の骨格は「収入の伸び>費用増」です。累計で売上収益は+1,278億円、営業費用は+1,051億円で、差し引きEBITが伸びています。
どこが伸びた?(売上の内訳:累計)
同じく会社資料の科目別内訳では、旅客・貨物・非航空がそろって増収です。
- 国際旅客収入:5,657億円(前年差 +9.1%)
- 国内旅客収入:4,654億円(前年差 +7.3%)
- 貨物郵便収入:1,437億円(前年差 +14.9%)
- LCC旅客収入:739億円(前年差 +12.9%)
- マイル/金融・コマース:1,106億円(前年差 +11.6%)
- その他(旅行・受託等):1,399億円(前年差 +8.1%)
市況(燃油・為替)の影響:航空株の宿命パラメータ
会社は燃油・為替の実績も併記しており、当該期間の指標例として下記が示されています。
- シンガポール・ケロシン、ドバイ原油、為替(円/USD)
通期計画と進捗:会社計画との比較、戦略のポイント
通期会社計画(2026年3月期)と進捗率
会社計画(通期予想)は、売上収益・利益・配当を示しています。
- 通期予想:売上収益 1兆9,770億円/EBIT 2,000億円/純利益 1,150億円
- 年間配当予想:1株92円(中間46円)
第3四半期累計の実績から機械的に進捗率を計算すると(計算式:進捗=累計実績/通期計画):
- 売上収益:15,137 / 19,770 ≒ 76.6%
- EBIT:1,791 / 2,000 ≒ 89.6%
- 純利益:1,137 / 1,150 ≒ 98.8%
経営戦略・取り組みで押さえる点(資料から読める範囲)
- 国際旅客の堅調と、国内旅客の取り込みが継続見込み。
- 一方で第4四半期はインフレ影響等で費用増や、マイル収入の会計要因による調整に言及があります(利益の伸びが鈍る可能性の“伏線”)。
財務面・株主還元:健全性、配当・自社株買い・優待
財務健全性(ざっくり手元現金 vs 借金)
TDnet掲載の要約財務諸表(IFRS)から、代表的なBS項目は以下です(単位:百万円)。
- 現金及び現金同等物:900,238
- 有利子負債:短期141,141 + 長期725,506 = 866,647
- 資本合計:1,267,520、資産合計:3,038,821
ここから単純に
- ネット現金(概算)=現金等 − 有利子負債=約+33,591百万円(約+336億円)
となり、ほぼネットキャッシュ圏です(※有利子負債にリース負債が含まれるか等、定義差でブレます)。
補足:Yahoo!ファイナンスの参考指標では、自己資本比率(実績)34.9%、ROE(実績)11.36%と表示されています(算定定義が会社BSの「資本合計」と異なるため、値がズレ得ます)。
株主還元(配当・自社株買い)
- 年間配当予想 92円(中間46円)
- 自己株式取得:合計200億円を実施(株主還元の一環として明記)
株主優待制度
Yahoo!ファイナンスの優待情報では、国内線50%割引の株主割引券(3月末・9月末)と、旅行商品割引券(7%または5%)が示されています(保有株数により枚数が増加)。
株価とバリュエーション:株価推移、PER・PBR・利回りの水準感
株価推移(年初来レンジ)
2026-02-16のYahoo!ファイナンス表示では、
- 株価:3,128円(15:30)
- 年初来高値:3,257円(25/09/09)
- 年初来安値:2,205円(25/04/07)
バリュエーション(会社予想PER・実績PBR・配当利回り)
同じくYahoo!表示(2026-02-16 15:30)では、
- PER(会社予想):11.86倍
- PBR(実績):1.29倍
- 配当利回り(会社予想):2.94%(1株配当 92円)
市場平均・業種平均との比較(JPX統計)
JPX公表の「規模別・業種別PER・PBR(連結)」2026年1月のデータでは、東証プライムの加重平均は下記の通り。
- PER 19.8倍 / PBR 1.7倍
空運業(プライム)の加重平均は
- PER 10.5倍 / PBR 1.3倍
このため、JAL(PER 11.86倍 / PBR 1.29倍)は、
- 市場平均(プライム全体)よりは割安寄り
- 同業平均(空運業)とはPERがやや高め・PBRは概ね同水準
という位置づけになります。
競合(ANAホールディングス:9202)との比較
同日のYahoo!表示ではANAは、株価3,328円、PER 10.75倍、PBR 1.25倍、配当利回り1.80%。
JALは利回りが高い一方、PERはANAよりわずかに高め、という見え方です(ただし両社とも航空特有の変動要因が大きい点は共通)。
業界動向・競合比較:成長性、競争環境、JALの強み/弱み
業界の見取り図(航空は景気×燃油×為替の三体問題)
会社資料でも燃油・為替の実績が提示されている通り、航空は外生変数に振られます。
その上で足元は、会社資料の説明では国際旅客需要が好調で、国内も取り込みを継続している、という局面です。
競合状況
- 国内FSCの主戦場はJALとANA。加えてLCC(グループ内外)が価格帯を分断。
- 需要回復局面では供給(便数)も増やしやすく、同時に人件費・整備費・空港費なども増えやすい。JAL資料でも累計で燃油費以外の費用増が示されています。
JALの強み・弱み
強み
- 国際・国内旅客に加え、貨物郵便や非航空(マイル/金融・コマース、旅行・受託等)まで増収の柱が複数ある。
- 第3四半期累計でEBITが過去最高益(会社説明)=収益力が回復局面にある。
弱み
- 航空事業の比重が大きい以上、燃油・為替・需要ショックの影響は避けにくい(会社も市況前提を開示)。
リスクと今後の見通し:株価・業績に影響する論点
主なリスク
- 燃油価格の上振れ/円安進行(費用増・需要影響の両面)
- 需要ショック(感染症、地政学、災害、景気後退)
- コストインフレ(人件費・整備費・空港関連費の上昇)—会社も費用増要因に言及
- 会計要因:マイル収入の調整見込み(第4四半期の注意点として言及)
- 安全運航・品質(航空株の信頼リスクは一撃が重い)
成長ドライバー
- 国際旅客の継続的な単価・搭乗率の推移(会社資料でKPIとして提示)
- 貨物郵便の伸び(前年差 +14.9%の増収)
- マイル/金融・コマースの利益貢献(累計でEBIT計上を明記)
- 株主還元の実行:配当92円見通し+自己株式取得200億円(実行進捗の追跡が重要)
まとめ
- 第3四半期累計は売上15,137億円・EBIT1,791億円・純利益1,137億円で、会社資料上過去最高益の局面。
- 通期計画(EBIT2,000億円・純利益1,150億円)に対し、進捗は利益面で高い水準(ただし第4四半期は費用増やマイル会計調整に言及)。
- 株価指標はPER 11.86倍 / PBR 1.29倍 / 予想利回り 2.94%。市場平均(プライム)より割安寄り、同業平均とは近い水準。
- 株主還元は配当92円見通し+自己株式取得200億円が明示されており、実行度合いが株価の下支え要因になり得る。
- いちばん効くリスクは、結局いつも通り燃油・為替・需要ショック(航空株の宿命)。会社が示す市況前提・費用増の記述を定点観測したい。

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