最新研究が発見したFXのチャートパターンMIDDAMパターンとは?(Minimal Difference in shadow for Directional Analytical Movement)

背景:従来のローソク足パターンと課題

外国為替(FX)のトレードでは、昔からローソク足の形を利用したパターン分析が行われてきました。例えば「十字線(ドージ)」と呼ばれる実体が極めて小さいローソク足は、市場の迷いを示す典型であり、株式市場などではトレンド転換のシグナルになると広く信じられてきました。しかし、24時間連続して動くFX市場においては、こうした伝統的パターンの有効性に疑問も呈されています。実際、2025年に発表された最新の研究では、ドージパターンはFXでの反転予測には信頼性が低いことが明らかにされています。この研究では、過去13年間の主要通貨ペアのデータを解析し、有名なローソク足パターンの精度を検証しました。その結果、従来「典型的な反転シグナル」と見做されてきたドージであっても、為替相場では予測精度が低く、単独では頼りにならないことが示されたのです。

こうした背景を踏まえ、その研究では新たなパターンの模索が行われました。そして導入されたのが、「MIDDAM(ミッダム)」と名付けられた全く新しいローソク足パターンです。MIDDAMは“Minimal Difference in shadow for Directional Analytical Movement”(方向性分析のためのヒゲの差の最小化)という英語の略称で、上ヒゲと下ヒゲの差が極めて小さい特殊なローソク足の形状に着目したものです。名前の由来もユニークで、「ミッダム」はタイ語で「ナイフを深く突き刺す」という意味の言葉にインスパイアされています。ヒゲ(ローソク足の先端の影)がほとんど出ない鋭い形状をナイフになぞらえ、相場の急所を突く鋭い洞察という願いが込められたネーミングになっています。従来のローソク足パターンとは異なる発想で生み出されたMIDDAMは、上昇局面・下降局面のどちらでも機能するよう設計されており、予測精度の大幅な向上が報告されています。

MIDDAMパターンの概要と特徴

MIDDAMパターンは単一のローソク足によって定義され、上昇シグナルとなる「MIDDAM Up」と下降シグナルとなる「MIDDAM Down」の2種類があります。名前こそ「Up」「Down」と付いていますが、これはそのパターンが示唆する次の価格変動の方向を意味しています。実際のローソク足自体は、MIDDAM Upの場合は大きな陰線(価格が下がって終わるローソク足)、MIDDAM Downの場合は大きな陽線(価格が上がって終わるローソク足)になります。

図1 MIDDAM Up(上段)と MIDDAM Down(下段)のチャート例。

それぞれ「赤三兵(3本の連続陽線)後のMIDDAM Up」と「黒三兵(3本の連続陰線)後のMIDDAM Down」を示しています。上段では左から3本の緑のローソク足が3本連続の陽線(Three White Soldiers)を形成した後、4本目に大陰線(赤色のMIDDAM Up)が出現しています。そのMIDDAM陰線は上下のヒゲが極めて短く、実体がほぼローソク足全体を占めています。研究によれば、このようなローソク足パターン(MIDDAM Up)の後は次の足で価格が上昇に転じる可能性が高いことが確認されています。実際、図の例でもMIDDAM出現後の次の足は反発して陽線となっており、上昇継続のシナリオを示唆しています。

一方、下段では3本の赤いローソク足が3本連続の陰線(Three Black Crows、黒三兵)となった後、4本目に大陽線(緑色のMIDDAM Down)が出現しています。こちらのMIDDAM陽線も上下のヒゲがほとんどなく非常に長い実体を持っています。研究では、このMIDDAM Downパターンの出現後には次の足で価格が下落に転じる傾向が強いと報告されています。図のシナリオでも、大陽線(MIDDAM Down)の後に相場が反落し、下降トレンドが継続する様子が示されています。

パターン形状のポイント

MIDDAM UpとDownはいずれも「上下のヒゲの長さがほぼ等しく、かつ非常に短い」ことがポイントです。言い換えると、ローソク足の始値と高値が近く(上ヒゲが短い)、終値と安値も近い(下ヒゲが短い)という形になります。結果として、ローソク足全体の中で実体(四角い部分)が占める割合が非常に大きく、上下の細いヒゲ部分はごくわずかしかありません。完全にヒゲが無いローソク足は大陽線・大陰線(丸坊主)と呼ばれますが、MIDDAMパターンでは上下両端にごく小さなヒゲを持つ点が特徴です。ヒゲが全く無い場合も含め、上下ヒゲの差が最小という名前の通り上下のヒゲがほぼ存在しないか、あっても僅かである状態といえます。(条件の詳細は論文を参照してください。例)MIDDAM Up は OpenP≥30% & CloseP≤20%、MIDDAM Down は OpenP≤70% & CloseP≥80%))

もう一つ重要なのはローソク足の色と位置関係です。MIDDAM Upの場合は陰線であり、始値が比較的高い位置、終値がローソク足レンジの下部(低い位置)で引けています。具体的には、研究では「始値がその足の安値から数えて30%以上上の位置にあり、終値が20%以下の位置にある」という条件でMIDDAM Upを定義しています。簡単に言えば、始値がローソク足全体の上の方で、終値が下の方に位置する陰線ということです。逆にMIDDAM Downは陽線で、始値がローソク足レンジの下寄り、終値が上寄りで引ける形です(※論文では対称的なパーセンテージ基準で定義)。このような極端に片側に寄った長いローソク足が出現した場合に、それをMIDDAMパターンとして注目します。

従来パターンとの違いと統計的優位性

上述のように、MIDDAMはこれまでの伝統的パターンとは発想も形状も異なるものです。研究を行ったタイのDPU大学のチームは、何百万本ものローソク足データを解析する中で、ローソク足の形状(実体とヒゲの割合)と次の値動きとの関連を網羅的に調べました。その結果浮かび上がったのが、先述した上下端に位置するパターン──すなわちMIDDAM Up/Downの形状だったのです。

興味深いことに、この研究では従来有名なローソク足パターンの多くが必ずしも期待通りの結果を示していないことも報告されています。例えば、投資家の間で強気のサインと考えられている「トンボ型の十字線(Dragonfly Doji)」や「ハンマー(Hammer)」の出現後には、次のローソク足がむしろ陰線(下落)となる傾向が強いことがデータから示されています。逆に、弱気のシグナルとされる「墓石型の十字線(Gravestone Doji)」や「流れ星(Shooting Star)」の後では、次に陽線(上昇)が出やすいという、従来のセオリーとは反する結果も見られました。これらは意外な発見ですが、統計的にはFX市場では単一の伝統的パターンで相場を当てるのは難しいことを物語っています。

こうした中で、MIDDAM UpおよびMIDDAM Downは一貫して次の値動きと強い相関を示すパターンとして浮上しました。研究チームは「ローソク足の開閉位置が極端に片寄ったもの(=上下の端に実体が位置するもの)」に注目することで、市場の次の動きをより正確に予測できることを発見したのです。その統計的優位性は顕著で、MIDDAMパターン出現後は次のローソク足が高い確率で特定方向(MIDDAM Upなら上昇、MIDDAM Downなら下落)に動くことが確認されています。

さらに特筆すべきは、MIDDAMパターンの出現頻度と精度の両面での優位性です。他の有名な単一ローソク足パターン(例えばハンマーやドージ)と比べても、MIDDAMははるかに頻繁に現れます。論文によれば、MIDDAM Up/Downの出現率はハンマーの約8~10倍、標準的なドージの約90倍にも達しました。つまり、非常に稀な局面でしか出ないパターンではなく、日常的な値動きの中でも比較的よく姿を現すパターンなのです。これは実用面でも大きな利点で、トレーダーにとってチャンスの数が増えることを意味します。

加えて、頻度が高いだけでなくシグナルの精度も高いことが統計上示されています。研究では各パターンについて「次の足が上昇する確率 – 下落する確率」(pcell値と呼ばれています)が計算されていますが、MIDDAM Up/Downはいずれもこの値が他のどの単一ローソク足パターンより顕著に良好(上昇ならプラス、大幅上昇側に偏る)だったと報告されています。要するに、MIDDAMパターンは他のローソク足パターンよりも当たりやすく、なおかつ出現も多い、理想的なシグナルだということです。

この新パターンの有効性は大規模なシミュレーション取引でも裏付けられました。先の研究では、8つの主要通貨ペアについて13年分・合計3800万本以上の1分足データを使い、MIDDAMパターンと他のパターンのトレード成績を比較しています。その結果、4本パターン戦略のMIDDAMパターンを利用した場合の利益は、従来のドージパターン利用時のなんと138倍にも達したと報告されています。そして8通貨ペア中、累積損益がプラスのペア:マイナスのペアが6:2(ただしトレード勝率は約51.3%)。この数値は、単にチャート上の理論に留まらず、実際の市場データでMIDDAMが卓越したパフォーマンスを発揮したことを示しています。

以下は、研究で示されたMIDDAMパターンの主な成果をまとめたものです。

  • ドージでは稼げない?
    ドージパターン単独では勝率50%程度・利益も僅少でしたが、4本パターン戦略のMIDDAMパターンはその138倍の累積利益をもたらしました。
  • 高い勝率
    MIDDAMパターン出現時にパターン方向へエントリーすると、勝率75%(6勝2敗の割合)という高い成功率が得られました。
  • シグナル頻度
    MIDDAMはハンマーの8~10倍、ドージの90倍も多く出現し、ほぼ毎日のようにチャンスを提供しました。(※対照的にドージで同程度の条件を満たす反転シグナルは、数ヶ月に1回程度しか出現しなかったとも報告されています。)
  • 時間軸を問わず有効
    5分足や15分足など短期から、日足など長期まで、様々な時間枠でMIDDAMパターンは似た傾向を示し、一貫して有効性が確認されています。
  • 市場環境への適応
    トレンド相場・レンジ相場、ボラティリティの高低など、市場環境が異なる状況でもMIDDAMパターンの勝率は大きく崩れず、安定したパフォーマンスを維持しました。(研究者らはこれを「パターンのロバスト性」と呼んでいます。)

以上のように、統計とシミュレーションの両面からMIDDAMパターンの有効性が示されたことで、FXにおけるテクニカル分析の新たな一手として注目を集めつつあります。

トレードへの応用:使い方と注意点

新しく提案されたMIDDAMパターンは、一般トレーダーにとっても非常に興味深いツールとなり得ます。その基本的な売買シグナルの解釈はシンプルです。

  • 3本連続陽線(赤三兵)の後にMIDDAM Up(大陰線型)が出現したら、次のローソク足で上昇に転じる可能性が高いと予想できます。
  • 3本連続陰線(黒三兵)の後にMIDDAM Down(大陽線型)が出現したら、次のローソク足で下降に転じる可能性が高いと予想できます。

もっとも、どんなシグナルも過信は禁物です。研究チーム自身も述べているように、単一のローソク足だけで安易に売買しても安定した利益は得られないことは肝に銘じる必要があります。MIDDAMパターンは統計的には有望ですが、常に100%当たるわけではありません。実際のトレードに活用する際は、他のテクニカル指標や相場環境の分析と併用して確認するとより安全です。例えば、MIDDAM Upが出現したからといって即座に飛び乗るのではなく、直後のローソク足や出来高の動き、サポートラインの存在などを確認してからエントリーする、といった慎重さが求められます。また、ストップロス(損切り)の設定など適切なリスク管理も不可欠です。先述の研究でも、複数のローソク足を組み合わせたパターンで予測精度をさらに高める試みが紹介されており(例:三兵+MIDDAMのパターン)、MIDDAMも他の分析手法と組み合わせることで一層効果を発揮する可能性があります。

実用面で言えば、MIDDAMパターンはアルゴリズム取引や自動売買システムへの応用にも向いています。定量的な定義(ヒゲの割合など)が明確なため、プログラムで検出しやすく、研究者たちも実際に売買ルールとしてコード化しバックテストを行っています。もちろん裁量トレーダーにとっても、チャート上でMIDDAMの形を見つけたら一つの強力なシグナルとして活用できるでしょう。特に、ドージなど従来パターンに頼っていた方にとっては、新しい武器を手に入れる感覚かもしれません。

おわりに

MIDDAMパターンは、最新の学術研究から生まれたFXチャート分析の新潮流と言えます。科学的なデータ分析に裏打ちされたテクニカル手法であり、従来の経験則に基づくパターン分析とは一線を画すアプローチです。その高い勝率や収益性は非常に魅力的で、今後トレーダーの間で注目が高まっていく可能性があります。現時点では研究者以外にはほとんど知られていない手法ですが、だからこそ先行者利益も見込めるでしょう。実際、SNS上でもまだMIDDAMに関する言及は少なく、多くのトレーダーにとって未知の概念です。しかし本記事で紹介したように、その内容は決して難解なものではなく、ローソク足の形に着目して次の一手を読むという伝統的な手法の延長線上にあります。違いはそれをビッグデータ解析によって洗練させた点にあります。

最後に強調したいのは、MIDDAMパターンが示すのは相場のクセだということです。FX市場では、一見ランダムに見える値動きの中にも、人間の心理やアルゴリズムの挙動が反映されたパターン(クセ)が存在すると考えられます。MIDDAMはその一つを切り取ったものに過ぎませんが、その裏にはなぜ大きな陰線(陽線)の後に反転が起きやすいのか?という市場の力学的な理由があるはずです。例えば、MIDDAM Upであれば大陰線による投げ売りのピークアウト、MIDDAM Downであれば大陽線による買い一巡(ショートカバー完了)など、参加者の心理転換点が示唆されているのかもしれません。このように考えると、MIDDAMパターンは単なる統計上の産物ではなく、市場参加者の行動原理を映し出す指標とも言えるでしょう。

まとめますと, MIDDAMはヒゲの短い大陽線・大陰線に着目した最新のFXチャートパターンです。そのシンプルな形状にもかかわらず、高度なデータ分析によって有効性が示されており、FXトレードの世界に新風を吹き込む可能性を秘めています。まだ実践例は多くありませんが、興味を持たれた方は是非ご自身のチャートで過去のMIDDAM出現箇所を確認してみてください。驚くほどその後の値動きと合致している場面が見つかるかもしれません。そして今後リアルタイムでこのパターンに遭遇した際には、本記事の内容を思い出しつつ、慎重にトレード戦略に取り入れてみるのも面白いでしょう。MIDDAMパターンが皆様のトレード分析の一助となれば幸いです。今後さらに研究や実践を通じてブラッシュアップされていく可能性もあり、引き続き注目していきたい話題です。

参考文献・情報ソース

本記事は主にPempeeorn Wangchailert氏らによる学術論文および関連する最新記事を参照して作成しました。専門的な内容を一般向けに平易に説明するよう努めましたが、詳しく知りたい方は論文「Enhancing FOREX Market Predictions: A Comparative Study of Candlestick Patterns and the MIDDAM Patterns」をご覧になると良いでしょう。そこにはMIDDAMパターン発見の経緯や詳細なデータ分析結果が掲載されています。今後も最新の研究動向をウォッチし、面白いトピックがあればまた紹介していきます。皆さんのトレードのヒントになれば幸いです。

<Enhancing FOREX Market Predictions: A Comparative Study of Candlestick Patterns and The MIDDAM Patterns | PDF | Foreign Exchange Market | Financial Markets>
https://www.scribd.com/document/872181901/256994
<Piercing Line Pattern in Forex: Reliability, Rules & Algorithmic Data>
https://volity.io/forex/piercing-line-pattern/
<Enhancing FOREX Market Predictions: A Comparative Study of Candlestick Patterns and the MIDDAM Patterns | ECTI Transactions on Computer and Information Technology (ECTI-CIT)>
https://ph01.tci-thaijo.org/index.php/ecticit/article/view/256994

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