下記の記事で紹介したアンチ・アルゴリズムについての関連銘柄を探してみました。
アンチ・アルゴリズムとは何か:SNS・検索の推薦・規制と広告経済の最前線メモ | ブルの道、馬の蹄跡
この会社も!というのがあればコメント欄にお願いします。
LINEヤフー(4689)
会社HP:https://www.lycorp.co.jp/ja/
どんな会社?
LINEヤフーは、2023年10月の再編で誕生した日本最大級のテックカンパニーで、検索・ポータル、メッセンジャー、広告、ECなど生活導線のど真ん中を複数握るプレイヤーです。
公式の会社概要では、主な事業をインターネット広告/Eコマース/会員サービス等とし、グループ経営管理も担うとしています。資本金や子会社数などの規模感も公開されています。
なぜ関連銘柄?
アンチ・アルゴリズムは要するに、「おすすめ」「検索順位」「ニュース面の見え方」がブラックボックス化し、社会・経済に影響することへの反発です。LINEヤフーはこの論点の当事者そのものとなります。
- 検索:Yahoo!検索のランキングや表示、AI回答など(アルゴリズムの設計がUXと広告に直結)
- ニュース/ポータル:Yahoo!ニュース等の配信・推薦(見せ方が世論・分断・誤情報の疑念と結びつく)
- SNS/コミュニケーション:LINE内の各種フィード/動画面など(推薦とエンゲージメント設計の是非)
- 広告:ターゲティングや最適化がアルゴリズムで動くため、反発や規制が強まるほど有効性と計測がぐらつく
つまり、アルゴリズムへの不信(社会)→透明性/選択権(制度)→広告の前提(経済)という連鎖の中心にいます。
注目ポイント
- 広告の中身が変化している
同社の開示資料では、メディア事業の内訳として、検索広告が前年同期比マイナスである一方、アカウント広告やディスプレイ広告が伸びる構図が示されています(例:検索広告 -13.2%、アカウント広告 +16.1% など)。
アンチ・アルゴリズムの圧力が強まると、一般にプロファイリングへの嫌悪、時系列表示回帰、ターゲティング制限などが起きやすいので、広告ポートフォリオ転換は守りと攻めの両面で重要になります。 - 生成AI×検索体験が検索広告の前提を揺らす
決算説明会の質疑応答要旨では、Yahoo!検索でのAI検索比率や、AI回答が広告に結びつきにくいクエリがあることなど、検索広告の構造課題が語られています。
ロイターも、生成AI普及で検索体験が変わり、広告表示機会が減る懸念を報じています。
アンチ・アルゴリズムは推薦の透明性だけでなく、AIが答えを先に出す世界での広告の置き場所にも接続します。 - 日本のプラットフォーム責任強化の当事者
日本では、改正法(情報流通プラットフォーム対処法)施行後、大規模プラットフォーム事業者の指定などが進み、運用の透明化や対応迅速化の義務が強まっています。
これは推薦アルゴリズムそのものを直接規制する法律ではないですが、世論が求めるのは同じく説明責任と手続きの見える化で、企業体力とガバナンスが問われる領域です。 - データ/セキュリティ対応は信頼の土台
同社は総務省の行政指導を受けた件について報告書提出などを公表しており、信頼回復を強調しています。
また個人情報保護委員会の勧告等を踏まえた再発防止策(例:二要素認証の適用完了など)も進捗公開しています。
アンチ・アルゴリズムは最終的にデータをどう扱うかへの反発でもあるので、ここは周辺論点ではなく中核です。
注意点
- 透明性要求が強まるほど、推薦ロジックの開示・監査・説明プロセスがコスト化しやすい(秘密と説明責任の綱引きが長期戦)
- ターゲティング忌避(ユーザーの反発)×規制が進むと、広告の最適化・計測が難しくなり、広告の有効性が変わる
- 検索のAI化は、UX改善と引き換えに検索広告の設計を作り替える必要が出る(短期の谷が起きやすい)
- 個人情報・委託先管理・セキュリティは、炎上や行政対応に直結しやすい(信頼毀損はアルゴリズム不信を増幅)
銘柄分析
LINEヤフー(4689)は、「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」を起点に、広告(メディア)/EC(コマース)/Fintech(戦略)を束ねた生活インフラ寄りのネット複合体です(決算期は3月で、4/1〜3/31が通期)。直近の2025年3月期の売上収益は1,917,478百万円で、セグメント別にはメディア(広告等)約7,316億円/コマース(EC等)約8,483億円/戦略(Fintech等)約3,412億円という構成です(※セグメントは調整額等あり、金額は資料表示ベース)。
直近では、2026年3月期の会社計画として「売上収益 2,100,000百万円/調整後EBITDA 500,000〜510,000百万円/調整後EPS 25.9〜26.9円」を掲げています。また配当予想は7.30円へ修正しています。
一方で、2026年3月期の上期(4〜9月)は売上収益995,367百万円、調整後EBITDA251,275百万円で、会社計画に対する進捗は売上で約47%、EBITDAで約49〜50%と、数字だけ見ると悪くない滑り出しです。 ただし中身を見ると、上期は戦略事業(主にPayPay連結の成長)が増収増益を牽引する一方、メディア/コマースはEBITDAが前年同期比で減少しています(メディアは生成AI関連費用の増加、コマースは販促費などが効きやすい局面)。
2025年3月期は通期で、調整後EBITDA470,831百万円、親会社所有者に帰属する当期利益185,028百万円。セグメントEBITDAは、メディア224,663百万円/コマース111,945百万円/戦略51,523百万円で、稼ぐ柱は依然としてメディアが太い構造です。
財務面は、現金及び現金同等物が2025年3月末で1,043,944百万円、2025年9月末で1,041,056百万円と水準は大きく崩れていません。 一方で同社は銀行・カード等も連結しているためB/Sが大きく、2025年9月末時点で銀行事業の預金 2,481,196百万円/有利子負債 1,958,799百万円など、金融ビジネス特有の膨らみが出ます(単純なネットキャッシュ判定はミスりやすいので注意)。 自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は2025年3月末 32.7% → 2025年9月末 27.8%です。
株主還元は、会社予想配当が7.30円(2026年3月期)で、配当利回りは概ね約1.85%です(株価・利回りは日々変動します)。 なお、上期の決算短信では発行済株式数の減少も確認でき、自己株買いを含む資本政策は引き続き見どころになります。
足元のイベントとしては、2026/1/30に飲食店向け予約管理SaaS「トレタ」の株式取得(子会社化を目指す)を公表しており、LINE公式アカウント起点の業種特化SaaSを強化する流れが見えます(中期の収益ドライバーになり得る一方、立ち上がりはコスト先行になりやすい点は要ウォッチ)。 さらに、PayPayについては米国での上場に向けた届出書(Form F-1)のドラフトを秘密裏に提出した旨の開示もあり、資本市場イベントとしてはオプション価値になり得ます(時期・条件は不確実)。
まとめると、LINEヤフーは広告×EC×Fintechをクロスユースで回す構造で、見るべきポイントは以下の通りです。
① メディア(広告):アカウント広告の成長継続と、生成AI関連費用を含むコストコントロール
② コマース(EC):増収を保ちつつ、販促費・ミックスでEBITDAが戻るか(ZOZO/アスクル等の動きも含む)
③ 戦略(Fintech):PayPay連結成長が続くか、利益の質(与信・金融規制・競争)まで踏み込んで確認
④ 信頼(セキュリティ/個人情報):過去の行政指導等を踏まえた再発防止と運用強化の進捗
⑤ 資本政策とB/S:配当(7.30円)+自己株買い、自己資本比率の推移(金融連結の癖も含めて)
サイバーエージェント(4751)
会社HP:https://www.cyberagent.co.jp/
どんな会社?
サイバーエージェントは、事業として大きく メディア&IP/インターネット広告/ゲーム/投資育成を掲げる、渋谷発のインターネット企業です。公式の会社概要でもこの4本柱が明記されています。中でも祖業のインターネット広告事業は、同社自身が国内トップクラスの規模と表現し、広告効果最大化(運用型広告の最適化)と、AI/CG等を使った制作・DX支援までを領域として説明しています。また、同社はAI研究開発組織「AI Lab」を2016年に設立し、研究成果を広告プロダクトに実装している点を、IRの競争優位性ページで強調しています(例:生成AIを用いた「極予測」シリーズ)。
なぜ関連銘柄?
アンチ・アルゴリズムの本質は、表示順位・推薦がブラックボックス化して社会と経済(広告・メディア収益・行動誘導)を動かすことへの反発です。サイバーエージェントはこのテーマに、少なくとも2つの顔で深く関わります。
- アルゴリズムの上で稼ぐ側(広告)
SNS/検索のアルゴリズム(配信最適化・推薦・ランキング)に依存する広告市場で、同社は運用・制作・計測の実務側を大きく担うプレイヤーです。運用型広告での強みや、主要媒体での実績を同社は自社発信で説明しています。 - アルゴリズムを自分でも持つ側(メディア)
ABEMAのようなサービスは、まさに推薦システムがUXと滞在時間を左右します。同社の技術ブログでも、ABEMAのレコメンドがルールベース/機械学習/バンディット(探索と活用を両立する手法)など複数ロジックの組み合わせであることが具体的に書かれています。
つまりアルゴリズムを巡る社会的反発が強まるほど、広告(稼ぎ方)とメディア(見せ方)の両側で設計変更・説明責任がのしかかる構造です。
注目ポイント
- アルゴリズム反発は、広告の前提(データ・ターゲティング)を直撃する
近年のプライバシー保護の潮流で、3rd Party Cookieやデータ収集規制が強まり、広告の常識が崩れて再設計局面にある──という問題意識を、同社の開発者ブログ自身がかなり踏み込んで語っています。
この流れはアンチ・アルゴリズムの世論(プロファイリング嫌悪・透明性要求)とも同根なので、同社にとっては一過性の炎上ネタではなく構造変化です。 - AIで広告を作る・配るが強みとして組み込まれている
同社はIR資料で、生成AIを用いた広告プロダクト(極予測)や、AI活用での生産性向上を中期の競争力として明示しています。
さらに2025年の同社調査でも、広告主側の生成AI活用が進み、今後は動画・バナーでAI主体化が進む見通しが示されています。
アルゴリズムが嫌われる局面でも、広告は消えないので、透明性・同意・ブランド安全性を満たした上での効率化が武器になりやすいです。 - ABEMAの推薦は説明責任の試金石になりやすい
ABEMAの推薦ロジックが多層であることが公開されているのは、技術的には強みですが、社会的にはなぜそれが出るのか?の説明が求められやすい構造でもあります。
アンチ・アルゴリズムの圧力が強まるほど、ユーザーに選択肢(時系列・非パーソナライズ等)や、推薦理由の透明化が競争条件になります。
注意点
- 外部アルゴリズムへの依存
広告はGoogle/Meta等の仕様変更・配信ロジック変更の影響を強く受けます。運用力で吸収できる面もある一方、ルール変更が急なほどコストが跳ねます。 - プライバシー・同意設計の重み
Cookie制限や個人情報規制の強化は、ターゲティング・計測・最適化の前提を変える(広告の効き方が変わる)。 - 生成AI活用の副作用
制作効率が上がるほど、著作権・虚偽表現・審査体制(ブランド安全性)など事故コストも増えやすい。同社も審査AI導入などを語っていますが、運用の巧拙が問われる領域です。 - メディア側の透明性要求
ABEMAの推薦が社会的議論の対象になるほど、説明可能性(説明できる仕組み・監査・異議申し立て対応)の整備が必要になります。
銘柄分析
サイバーエージェント(4751)は、①インターネット広告、②「ABEMA」を核にしたメディア&IP、③ゲーム(Cygames等)、④投資育成(ベンチャー投資)の4本柱で成長してきたネット企業グループです(決算期は9月、10/1〜9/30)。直近の2025年9月期の売上高は874,030百万円で、セグメント別にはメディア&IP 217,164百万円/インターネット広告 438,811百万円/ゲーム 216,391百万円/投資育成 1,663百万円という構成です。利益面では、連結の営業利益 71,702百万円/経常利益 71,743百万円/親会社株主に帰属する当期純利益 31,667百万円でした。
直近では、2026年9月期の会社見通しとして、連結売上高は8,800億円(=880,000百万円)を想定する一方、連結営業利益は500〜600億円(=50,000〜60,000百万円)のレンジ提示になっています(経常利益も同レンジ、純利益は250〜300億円)。会社側の説明としては、特にゲーム事業は変動要因が大きいためレンジにしている、という整理です。
(読み替えるとFY2025はゲームの利益寄与が大きかった反動で、FY2026は保守的な置き方に見えやすいタイプのガイダンスです、というのが自然な解釈です※仮説)
2025年9月期の中身をざっくり分解すると、見どころはメディア&IPの黒字化とゲームの利益の跳ねです。
- メディア&IP:売上 217,164百万円、セグメント利益 7,291百万円(前期はセグメント損失)=赤字→黒字に転換
- インターネット広告:売上 438,811百万円、セグメント利益 17,602百万円(前年差では減益)
- ゲーム:売上 216,391百万円、セグメント利益 60,063百万円(前年差で大幅増)
- 投資育成:売上 1,663百万円、セグメント損失 △1,515百万円(規模は小さいが、評価損益でブレやすい領域)
財務面は、ネット企業らしく現金が厚いが第一印象です。2025年9月末の現金及び預金は229,849百万円、現金及び現金同等物は226,151百万円。一方で長期借入金52,418百万円、転換社債40,353百万円などもあり、会社資料ではネットキャッシュ 129,801百万円(約1,298億円)と整理されています。キャッシュフローは営業CF +79,518百万円に対し、投資CF △30,825百万円、財務CF △33,860百万円で、財務CFの悪化要因として転換社債の償還等が挙げられています。
株主還元は、配当を軸に設計されています。2026年9月期の配当予想は19円で、予想配当利回りは約1.4%です。会社はFY2017以降の目安としてDOE(純資産配当率)5%以上を掲げています。
自己株買いについては、IRページ上過去に4回の取得・消却と整理されており、直近は2013年まで遡ります(常態的に自己株買いで需給を作るタイプではない)。
まとめると、サイバーエージェントは広告×メディア×ゲームの当たり外れ(分散されてるが消えない)をどう評価するかの銘柄で、見るべきポイントは以下の通りです。
① インターネット広告:売上成長の継続と、利益率(AI関連の先行投資・コスト増の吸収力)
② メディア&IP(ABEMA等):黒字の定着と、コンテンツ投資の増減(利益が戻る/削れるの分岐)
③ ゲーム:大型タイトルのヒット/運営の確度。FY2026ガイダンスがレンジなのはここが主因になりやすい
④ 投資育成:規模は小さくても、評価損益やEXITで利益がブレる可能性(サプライズの源泉)
⑤ キャッシュの使い道:ネットキャッシュを厚く保つのか、成長投資を加速するのか、還元を増やすのか(資本配分)
⑥ 直近イベント:2026年9月期 1Q決算発表は2/6(15:30)予定で、ガイダンスレンジの進捗の出方が最初の論点になりやすい
電通グループ(4324)
会社HP:https://www.group.dentsu.com/jp/
どんな会社?
電通グループは、日本発で現在は約120カ国に展開し、約68,000人規模の人材を抱えるグローバル企業グループです。
提供価値としては、広告代理の枠を超えた Integrated Growth Solutions(統合成長ソリューション) を掲げ、マーケティング/テクノロジー/コンサルティング等を統合して顧客の成長を支援する方針を明示しています。
また、業界の基準資料として日本の広告費を毎年公表している点も、同社の市場ポジションを象徴します。
なぜ関連銘柄?
アンチ・アルゴリズムは、簡単に言えばプラットフォームのアルゴリズムが情報の流れとお金の流れ(広告)を握ることへの反発です。電通は、この構造の中心にいます。
- 電通自身が統合レポートでアルゴリズム時代を明確に言語化し、プラットフォームのAIアルゴリズムを前提に、広告・クリエイティブ・計測を最適化する戦略を説明しています(Algorithm the Masteringなど)。
- 世論・規制・ユーザー行動の変化でターゲティングや推薦のやり方が揺れると、広告主が求める配信・計測・ブランド安全性の再設計が必要になり、そこに強く関わる立場です。
注目ポイント
- クッキーレス/計測再設計は、電通の主戦場になっている
アンチ・アルゴリズムの裏側には、プロファイリング忌避やプライバシー規制強化があり、結果として広告計測が難しくなります。
電通デジタルは、Cookieに依存しない計測基盤 「X-Stack Connect」 を展開し、サーバーサイド計測(アクセスログ等)と各社Conversion APIを組み合わせることで、Google/Metaに加え、LINE・X・TikTokなど複数プラットフォーム対応を進めています。
→ アルゴリズム反発が強まるほど計測の信頼性は差別化要素になりやすいです。 - ブランド毀損(違法サイト・アドフラウド)対策がテーマと直結
アンチ・アルゴリズムは有害コンテンツに広告が載る、機械的最適化が炎上を増幅する問題とも近いです。
電通デジタルは、違法サイトへの意図しない広告掲載やアドフラウド等の広告価値毀損への対応(アドベリフィケーション)を明示しています。
→ アルゴリズムに任せっぱなしが批判される局面ほど、安全性・説明可能性が商品になります。 - データ&ID基盤をグローバル戦略の核に置いている
統合レポートでは、Global Data & Identity Spine(データとIDの基盤)を掲げ、オーディエンス設計、計測、最適化などを支えるプラットフォーム構想を説明しています。
→ ターゲティングのやり方が変わる(個人追跡→同意・ID・文脈へ)時代に、広告主が必要とする土台側の話。 - アルゴリズム時代の人間行動を研究として出している
電通グループは、2026年メディアトレンド調査として 「Human Truths in the Algorithmic Era」 を公表し、アルゴリズム影響が強まる環境でのブランド成長の指針を提示しています。
→ 世論が反アルゴリズムに振れても、広告は消えない。残るのは人間行動に沿った設計で、ここを調査と実装で語れるのは強いです。
注意点
- プラットフォーム依存リスク
広告の配信・計測はGoogle/Meta等の仕様変更や規制の影響を強く受け、運用・計測の再設計が継続コスト化しやすい(アルゴリズムの気分が外生変数)。 - 透明性要求の上昇
説明責任が強まるほど、広告主側もなぜこの配信?なぜこの結果?の監査・証跡が必要になり、対応できない領域は仕事として成立しにくくなる。 - 広告市場の構造変化の荒波
日本でもインターネット広告が巨大化(2024年3.6517兆円、構成比47.6%)しており、ここでルールが変わると影響範囲が大きい。 - 信頼が毀損するとテーマ直撃
アンチ・アルゴリズムは結局のところ、信頼の危機なので、広告の透明性や安全性での失点は、同社の提供価値に直結しやすい。
銘柄分析
電通グループ(4324)は、広告・マーケティングを核に、企業のDX/データ活用、顧客体験(CXM)、クリエイティブ、メディア運用などをグローバルに提供するサービス企業です(決算期は12月で、1/1〜12/31が通期)。同社は総額の売上(収益)だけでなく、媒体費などのパススルーを差し引いた売上総利益や、一時要因を除いた調整後営業利益を重要KPIとして開示しています。
直近の2024年12月期は、収益 1,410,961百万円/売上総利益 1,201,647百万円/調整後営業利益 176,233百万円と、KPIベースでは増収増益でした。一方で制度会計(IFRSの営業利益)は△124,992百万円(営業赤字)、親会社帰属当期利益も△192,172百万円と大幅赤字で、減損などの一時要因が業績の見え方を大きく歪めています。セグメント(地域)別にみると、2024年は日本(売上総利益 466,746百万円/調整後営業利益 114,184百万円)が高収益を維持しつつ、海外はAmericas 334,642/75,161、EMEA 269,254/38,466、APAC 116,413/1,050(各:百万円)という構図です(APACは利益が薄い)。
2025年12月期の会社計画は、年内に形が変わったのが最大のポイントです。
- 期初(2月時点)は 収益 1,494,000百万円/調整後営業利益 146,000百万円/営業利益 66,000百万円/親会社帰属当期利益 10,000百万円を見込んでいました。
- しかし8/14に下方修正し、のれん減損 860億円等を織り込んで、営業利益 △3,500百万円/親会社帰属当期利益 △75,400百万円へ。あわせて、個別決算(日本基準)で関係会社株式評価損 1,681億円を計上したことを理由に、中間配当を見送り(0円)・期末配当は未定へ変更しました。
- その後11/14に再修正(利益側は上方)。調整後営業利益 161,200百万円/営業利益 17,600百万円/親会社帰属当期利益 △52,900百万円と、営業は黒字見込みに戻した一方、最終損益は赤字見通しを維持。期末配当は未定継続です。
進捗面では、2025年上期(中間期)はKPIと制度会計がねじれて見えます。上期の実績は収益 683,904百万円/売上総利益 561,994百万円(前年差△3.4%)に対して、営業利益 △36,545百万円と赤字。ただし調整後営業利益は 67,526百万円(+7.2%)で、マージンも12.0%へ改善しています。
地域別には、上期は日本が好調(売上総利益 236,708/調整後営業利益 58,328)、米州は売上総利益減でも利益は粘る(153,847/33,342)一方、EMEAの利益減(121,299/5,697)とAPACの赤字拡大(47,171/△4,191)が重石でした(各:百万円)。
さらに第3四半期累計(9M)では、売上総利益 851,332百万円(△1.7%)/調整後営業利益 110,975百万円(+14.1%)まで伸びた一方、制度会計は営業利益 △7,447百万円、親会社帰属は△61,531百万円です。
財務面は、現金は厚いが、負債もそれなりのバランスです。2024年末時点で現金及び現金同等物 371,989百万円、親会社所有者帰属持分比率 19.9%。営業CFは59,984百万円とプラスを維持しています。
一方で、B/S上の社債及び借入金は合計で547,273百万円(流動 173,646+非流動 373,627)。加えてその他の金融負債 288,152百万円があり(IFRSではリース負債等がここに含まれるケースも多い)、レバレッジは軽くありません。
株主還元は、2024年は年間 139.50円(中間 69.75+期末 69.75)を実施しましたが、前述のとおり2025年は中間0円・期末未定へ変更され、その後も未定が続いています。
電通Gは、日本は堅調・海外がまだらという地域ミックスの中で、2025年は調整後は改善しているのに、減損等で制度会計が赤字という年になりやすい構図です。見るべきポイントは下記のとおりです。
①海外のオーガニック成長率とCXMの回復(失注・予算縮小の反転が見えるか)
②調整後営業利益とマージン(12%→13%台の実現性)(コスト削減が持続するか)
③減損・一時要因の追加リスク(制度会計の赤字がどこまで尾を引くか)
④配当(期末未定の解除)と資産売却の進捗(還元の見通しが立つか)
⑤APACの赤字縮小(構造問題か、景気・案件要因かの見極め)

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