円に戻していない外貨でも、税金の話が出ることがあります。2026年6月16日の最高裁判決は、外貨を使って別の外貨や外貨建て有価証券を取得した時点で、為替差益が所得として課税対象になり得ると判断しました。外貨預金、米国株、外貨建MMF、外国債券を使っている個人投資家にとって、「円転していないからセーフ」とは言い切れないことを示した判決です。この記事では、判決の事案、争点、結論、実務上の注意点を、一次情報を中心に初心者向けに整理します。
この記事の要点
最高裁は、外貨を円に戻していなくても、外貨を使って別の外貨や外貨建て有価証券を取得した時点で、為替差益が所得として課税対象になり得ると判断しました。これは、単に外貨を保有している場合とは区別して考えるべきだという整理です。とくに、外貨決済での米国株購入、外貨建MMF、外国債券、海外口座、投資一任運用では注意が必要です。ただし、どの取引がどの年分でどう計算されるかは個別事情に左右されるため、一般論としての理解と個別確認を分けることが大切です。
結論として何が変わったのか
円に戻していないから課税されない、とは限らないということです。最高裁は、外貨を使って別の外貨や同一通貨建ての有価証券を取得すると、その外貨の円ベースでの経済的価値が別資産の価値として固定化され、取得時の価値を上回る部分が「実現した利得」になり得ると整理しました。
一方で、この判決は外貨を持っているだけで毎年課税されると述べたものではありません。最高裁と最高裁広報資料が直接扱ったのは、保有外貨を使って別外貨や有価証券を取得した取引です。単純な保有評価と、別資産への交換・取得は分けて考える必要があります。
事案の内容
事実関係を時系列で整理すると、居住者である納税者は2014年5月、スイス連邦に本店を置く金融機関の自分名義口座へ合計105億円を送金し、同年7月にその運用を一任しました。その後、2014年7月から2015年12月までの間に、運用対象資産に属する外国通貨を使って、他の種類の外国通貨や外国通貨建て有価証券を取得する取引が行われました。
納税者は、これらの取引から所得は生じない前提で2014年分・2015年分の所得税等を申告しました。しかし渋谷税務署長は、各取引により為替差損益に係る雑所得が生じているとして、2018年9月26日付で更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を行いました。再調査では2015年分の一部取消しがありましたが、納税者はなお不服として取消訴訟を提起しました。
下級審の流れは、東京地裁が2022年8月31日に請求を棄却し、東京高裁が2023年5月24日に控訴を棄却、そして最高裁が2026年6月16日に上告を棄却した、というものです。つまり、結論としては一審から最高裁まで納税者側の主張は採用されませんでした。
争点は何だったのか
納税者側の中心的な主張は、外貨を別外貨や外貨建て有価証券に替えても、なお為替変動リスクが残る以上、利益はまだ確定していないというものでした。円に戻していないのだから、未確定・未実現の利益に課税するのはおかしい、という主張です。これは「円転しない限り、為替差益は実現しないのではないか」という多くの個人投資家の感覚とも重なります。
これに対し、国側と原審が採った考え方は、所得税法は所得を円で把握することを前提としており、外貨を使って別資産を取得した時点で、その外貨の円換算上の価値の上昇が具体的な形で固定化される、というものでした。高裁は、取引前に保有していた外貨Aの一部が、別の外貨Bや有価証券に置き換わり、その後は外貨A自体の為替変動リスクの影響を受けない価値として確定すると整理しています。
最高裁は何を認めたのか
最高裁の主文は「本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。」でした。つまり、為替差益に係る所得が生じているとした原審の結論を維持しました。
判決理由で重要なのは、最高裁が所得税法について、原則として収入の形で実現した利得のみを課税対象とし、収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算する建前を採っていると整理した点です。さらに、所得税法は各種控除額や所得計算を円単位で行うことを前提としており、外貨建取引を行った場合にはその取引時の為替相場で円換算して所得計算をすべきだとする57条の3第1項などから、所得の把握自体も円ベースで行う予定をしていると述べました。
その上で最高裁は、ある外国通貨で他の種類の外国通貨または同一の外国通貨建て有価証券を取得する取引では、変動していたその外貨の経済的価値が、別の外国通貨や有価証券の経済的価値として固定化され、その結果、外貨取得時の経済的価値を上回る部分が実現した利得になると判示しました。そして、その時点における別外貨の金額または有価証券の価額の円換算額が、所得税法36条1項の「収入すべき金額」になるとしました。さらに、そこから支払に用いた外国通貨を得るのに要した金額等を控除した額が、その取引に係る所得の金額になると述べています。
ここで整理しておきたいのは、最高裁が直接判断した射程です。広報資料が明示する争点は、第一に「外国通貨で他の種類の外国通貨を取得する取引」、第二に「外国通貨で同一通貨建ての有価証券を取得する取引」です。言い換えれば、判決文と広報資料から直接読み取れるのは、この二類型です。外貨預金から外貨建MMFへ、外貨で外国債券へ、外貨で米国株へ、という実務上の類似場面はありますが、商品性や口座構造が違えば確認すべき点も残ります。
数字例で理解する
理解しやすいように、単純化した例で考えます。1ドル100円のときに1万ドルを取得したなら、取得コストは100万円です。次に、1ドル150円になった時点で、その1万ドルを使って米国株を買ったとします。このとき、使った1万ドルの円換算価値は150万円です。100万円で取得したドルを、150万円相当の資産購入に使った形になるので、その差額50万円が為替差益として問題になり得ます。これは、最高裁広報資料の別紙例2が示す発想を、100円から150円に置き換えて単純化したものです。
大事なのは、ここで問題になっている50万円は、米国株そのものの値上がり益ではないという点です。あくまで「保有していたドルを使った時点」で、そのドルの円ベースの値上がりが所得として問題になり得る、という話です。その後、その米国株を売って利益や損失が出れば、それは別途、有価証券の譲渡損益として考える必要があります。両者を一つの利益として混同すると、取引記録の整理も税務判断もずれてしまいます。
もちろん、上の例は仕組み理解のための単純化です。実際には、外貨を複数回に分けて取得していることが多く、手数料、取得単価の算定方法、口座ごとの記録方式、同一年内の反復取引などによって計算は複雑になります。国税庁の質疑応答事例でも、建物購入に充てた外国通貨の取得が複数回ある場合の為替差損益計算では、所得税法施行令118条1項の規定に準じて考える旨が示されています。
課税イベントになり得る取引となりにくい取引
外貨取引を一律に語ると誤解しやすいため、一般的な整理としてまとめると次のようになります。
| 取引類型 | 一般的な整理 | 判決・実務との関係 |
|---|---|---|
| 外貨をただ保有しているだけ | それ自体は今回の直接対象外 | 判決は「使って別資産を取得した場面」を扱う |
| 同一通貨の外貨預金を預け替える | 通常は問題になりにくい | 国税庁は「外貨の保有状態に実質的変化がない」と整理 |
| 外貨を円に戻す | 為替差益・差損が問題になり得る | 従来から典型例 |
| 外貨で別の外貨を買う | 問題になり得る | 今回の判決の直接対象 |
| 外貨で同一通貨建て有価証券を買う | 問題になり得る | 今回の判決の直接対象 |
| 外貨預金から外貨建MMFに投資 | 問題になり得る | 国税庁質疑応答事例あり |
| 外貨で買った有価証券を後で売る | 有価証券の譲渡損益が別途問題 | 購入時の為替差益とは別論点 |
※この表は、最高裁判決、最高裁広報資料、国税庁の質疑応答事例を基にした一般的整理です。個別商品の税務処理や口座ごとの帳票反映まで一律に断定するものではありません。
国税庁は、外貨建預貯金の預入・払出について、外貨の保有状態に実質的な変化がない場合には為替差益を認識する必要はないと説明しています。典型例は、同じ通貨をそのまま別の金融機関の外貨預金へ移すようなケースです。これに対し、保有外貨を他の外国通貨に交換したり、外貨建MMFへ投資したりする場合には、外貨建取引として為替差損益が問題になり得るというのが国税庁の整理です。
個人投資家への影響
外貨預金を持っている人は、まず「保有しているだけなのか」「その外貨を使って別資産を買っているのか」を分けて確認するのが出発点です。外貨預金の同一通貨内の預け替えと、外貨預金からMMF・外国債券・外国株へ移る場面は、税務上まったく同じとはいえません。国税庁は、建物購入や外貨建MMF投資では、投資・購入の時点で為替差益を所得として認識する必要があると説明しています。
米国株や外国株を外貨決済で買っている人は、とくに今回の判決を自分ごととして理解しやすい立場にあります。最高裁広報資料の例2自体が、1米ドル100円で取得した1万米ドルを、1米ドル120円のときに1万米ドルの米国株購入に使う場面を図示しています。つまり、少なくとも考え方としては「ドルを使って米国株を買う時点」に為替差益の論点が立つことを、最高裁広報資料がそのまま示しているわけです。
外貨建MMFを待機資金として使っている人も注意が必要です。国税庁は、預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合、その時点で預金に係る為替差益を所得として認識する必要があると説明しています。また、後日MMF自体を譲渡したときの譲渡所得等の計算では、投資時の為替レートによる円換算額をその取得に要した金額とする、と整理しています。購入時の為替差益と、後の譲渡損益は分けて見る必要があります。
外国債券や外貨建て投信についても、今回の判決の直接の争点は「同一通貨建て有価証券を取得する取引」なので、個別商品の法的性質や証券会社の記帳方法は別に見なければならないものの、外貨を使って有価証券を取得する時点の為替差益という考え方自体は無関係とは言えません。税務大学校論叢でも、外貨建債券やMMFのように外貨現預金とは私法上の権利関係が異なるものは、外貨建取引から除かれず、為替差損益が課税対象となるという見解が整理されています。もっとも、これはあくまで論叢の整理であり、最終的な個別判断は口座資料や商品性の確認が必要です。
海外証券口座や海外銀行口座を使っている人、あるいはプライベートバンクや投資一任契約を使っている人は、「自分が直接注文していないから関係ない」とは言い切れません。高裁は、本件外国銀行が行った取引は、納税者から投資判断と執行に必要な権限の委任を受けて行ったものであり、取引の成果は納税者に帰属すると述べました。この点は、投資一任であっても税務上の所得認識は本人に帰属し得ることを示す重要なポイントです。
国内証券会社の特定口座を使っている人は、「特定口座だから全部自動で完結する」と決めつけないことが大切です。国税庁のNo.1900は、確定申告不要制度の対象として「特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの」を挙げていますが、最高裁が問題にしたのは「外貨を使った取引時点の為替差益」です。実務上、証券会社ごとに年間取引報告書や外貨取引報告書の見え方が異なるため、楽天証券やSBI証券も外貨決済の確認方法や外国株特定口座の注意事項を別途案内しています。年間取引報告書と外貨の取引明細の両方を確認する、という姿勢が安全です。
確定申告と雑所得で注意したいこと
本件では、税務署長が「為替差損益に係る雑所得が生じている」として更正処分を行い、最高裁も原審判断を是認しました。雑所得とは、国税庁のタックスアンサーNo.1500によれば、公的年金等、業務に係るもの、そしてその他の雑所得について、総収入金額から必要経費を控除した金額を基礎に計算する所得類型です。外貨取引から生じる為替差損益は、実務上、雑所得として扱われる整理が広く前提とされています。
損失の扱いも重要です。国税庁No.1500は、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできないと明記しています。したがって、「為替差損が出たら給与所得や事業所得と自由に相殺できる」と考えるのは危険です。どの損失が何と通算できるかは、所得区分ごとにルールが違います。
いわゆる給与所得者の「20万円ルール」も、単純化しすぎない方が安全です。国税庁No.1900は、1か所から給与を受け、その給与の全部が源泉徴収の対象である人について、給与・退職所得以外の各種所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要としています。他方で、20万円以下なら何でも完全に終わり、という意味ではありません。住民税の申告は別の扱いになる場合があり、横浜市や大阪市の案内でも、所得税の確定申告をしない場合でも住民税申告が必要になるケースが示されています。
また、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除などの事情で確定申告をする年は、申告書全体の中で他の所得をどう扱うかを含めて確認する必要があります。ここは「外貨の為替差益だけを単独で見る」のではなく、その年の申告全体との関係で整理する必要がある部分です。個別の申告要否や計算方法は、取引履歴や所得状況によって異なるため、税理士等に確認してください。
誤解しやすいポイント
円転していなければ課税されないのか
今回の判決は、その単純な理解を否定しました。外貨を円に戻していなくても、外貨を使って別外貨や外貨建て有価証券を取得した時点で、円ベースの価値上昇が「収入すべき金額」として問題になり得るとしました。
外貨を持っているだけで毎年課税されるのか
少なくとも今回の判決が直接扱ったのはそういう場面ではなく、外貨を使って別資産を取得した場面です。国税庁も、同一通貨の外貨預金の預入・払出のように、外貨の保有状態に実質的変化がない場合は為替差益を認識する必要はないとしています。
米国株は売ったときだけ税金を考えればよいのか
そうとは限りません。ドルで米国株を買った時点の為替差益の論点と、その後に米国株を売ったときの譲渡損益の論点は別です。購入時点と売却時点の税務論点を分けて考える必要があります。
特定口座なら何もしなくてよいのか
特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡所得については、国税庁No.1900に一定の記載がありますが、外貨キャッシュ部分や外貨決済の明細反映は証券会社ごとに確認が必要な場合があります。年間取引報告書だけでなく、外貨の売買・消費の記録も見た方がよいケースがあります。
投資一任なら本人は関係ないのか
本件はまさに「外国銀行に運用を一任していた」事案でしたが、高裁は、銀行が納税者に代わって行った取引の成果は納税者に帰属すると述べました。投資一任であっても、税務上の論点が本人から消えるわけではありません。
今回の判決で今後すべての外貨取引の答えが出たのか
そこまで言うのは早いです。判決と広報資料が直接扱ったのは、別外貨の取得と同一通貨建て有価証券の取得です。特定口座の帳票上の処理、商品ごとの法的性質、複雑なリバランスや海外口座の記録方法など、個別確認が必要な論点は残ります。
補足意見が示した制度上の課題
この判決で見落としたくないのが、林道晴裁判官の補足意見です。補足意見は法廷意見に賛同しつつも、今回の結論は飽くまでも為替差損益課税の明文規定がない現行法を前提にした解釈論にとどまると明言しています。つまり、「課税できる」という結論と、「現行制度が分かりやすく整備されているか」は別問題だ、と最高裁自体が示唆しているわけです。
補足意見はさらに、為替差益に係る所得の実現時期、「収入すべき金額」、必要経費などについて明確な規定を設けず、一般条項の解釈に委ねている現状は、租税法律主義の観点から望ましい状況ではないと指摘しました。そして、所得税独自の観点から、課税の在り方、収入すべき権利、具体的な所得計算方法、例外的取扱いの要件や内容について抜本的に検討し、必要な法的手当てを講じることが強く望まれると述べています。渡辺惠理子裁判官と石兼公博裁判官も、この補足意見に同調しました。
今後確認すべきこと
今後は、国税庁がこの判決を踏まえて、タックスアンサー、質疑応答事例、通達、FAQなどをどう更新するかが重要です。とくに、外貨決済を使う個人投資家に向けた説明がどこまで具体化されるかは実務への影響が大きいでしょう。所得税基本通達の57条の3関係や関連質疑の見直しも注目されます。
同時に、証券会社や銀行の帳票・取引報告書の表示も確認ポイントです。楽天証券やSBI証券、マネックス証券の案内を見ると、外国株取引、外貨決済、特定口座年間取引報告書、外国為替取引の確認方法は一つの画面・一つの帳票で完結しないことがあります。実務では、「自分のドル取得履歴」「外貨の消費時点」「年間取引報告書に載る範囲」を確認することが、今まで以上に重要になりそうです。
まとめ
今回の最高裁判決の本質は、課税関係を「円に戻したかどうか」だけで判断しないと明確にした点にあります。外貨を使って別の外貨や外貨建て有価証券を取得すると、その外貨の取得時からの円ベースの値上がりが、所得として問題になり得ます。
ただし、外貨を単に保有している場合、同一通貨の預け替え、特定口座の帳票反映、複数回取得した外貨の取得費計算などは、一律に言い切れない部分が残ります。だからこそ、今回の判決は「すべての外貨取引に同じ答えを一発で与えた」のではなく、「どの取引で外貨の経済的価値が固定化されたのか」を考える出発点を示した判決として理解するのが適切です。外貨決済・外貨建て商品・海外口座・投資一任運用を使っている人ほど、取引履歴の保存と、必要に応じた専門家確認の重要性が高まったといえます。
よくある疑問Q&A
Q.外貨を円に戻していなくても税金がかかるのですか
可能性があります。最高裁は、外貨を円に戻していなくても、外貨で別の外貨や同一通貨建て有価証券を取得した時点で、為替差益が所得として問題になり得ると判断しました。ただし、どの年分でどう計算するかは個別事情で異なります。
Q.外貨を持っているだけでも課税されますか
今回の判決が直接扱ったのは、外貨を使って別資産を取得した場面です。国税庁も、同一通貨の外貨預金の預入・払出のように、外貨の保有状態に実質的変化がない場合は為替差益を認識する必要はないとしています。
Q.ドルで米国株を買っただけでも為替差益が出るのですか
最高裁広報資料は、米ドルで米国株を取得する例を示し、その時点で為替差益に係る所得が生ずるかが争点だと整理しています。したがって、少なくとも考え方としては、ドルを使って米国株を買う時点で為替差益が問題になり得ます。
Q.特定口座なら申告しなくてよいですか
一概には言えません。国税庁No.1900は、源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡所得について一定の確定申告不要の扱いを示していますが、外貨決済で使った外貨の為替差損益が、常にそれと同じ形で自動処理されるとは限りません。証券会社の年間取引報告書や外貨取引明細の確認が必要な場合があります。
Q.為替差損は他の所得と損益通算できますか
国税庁No.1500は、雑所得の金額の計算上生じた損失は、他の所得の金額と損益通算できないとしています。為替差損益が雑所得として扱われる前提では、給与所得などと自由に通算できるわけではありません。
Q.給与所得者は20万円以下なら申告不要ですか
単純にはいえません。国税庁No.1900は、一定の給与所得者について、給与・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要としていますが、20万円以下でも住民税申告が必要な場合があります。また、他の控除や申告事情がある年は、申告全体として確認が必要です。
Q.今回の判決後、個人投資家は何を確認すべきですか
自分が外貨を「持っているだけ」なのか、「使って別資産を買っている」のかをまず切り分けることが重要です。そのうえで、外貨の取得履歴、取得時レート、使用時レート、手数料、口座種別、年間取引報告書の記載範囲、外貨取引報告書の有無を確認する必要があります。投資一任や海外口座を使っている場合は、本人が直接注文していなくても税務上の所得帰属が問題になり得ます。
Q.外貨預金から外貨建MMFに移しただけでも関係ありますか
国税庁の質疑応答事例では、預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合、その投資時点で預金に係る為替差益を所得として認識する必要があるとされています。したがって、一般論としては関連性が高い取引です。
Q.投資一任契約なら取引の細かい把握ができなくても大丈夫ですか
そうとは限りません。高裁は、本件では外国銀行が納税者に代わって取引をしたものであり、その成果は納税者に帰属すると述べています。実際にどの程度の明細をいつ取得できたかは個別事情によりますが、「一任だから本人の税務と切り離せる」とは考えにくいです。
参考
最高裁判所(2026)「令和5(行ヒ)366 所得税更正処分等取消請求事件」裁判例結果詳細、https://www.courts.go.jp/hanrei/96174/detail2/index.html、閲覧日:2026年06月17日。
最高裁判所(2026)「令和5年(行ヒ)第366号 所得税更正処分等取消請求事件 令和8年6月16日第三小法廷判決」判決全文PDF、https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96174.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
最高裁判所広報課(2026)「所得税更正処分等取消請求事件について」広報資料PDF、https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/jiangaiyou_05_366.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
東京高等裁判所(2023)「税務訴訟資料 第273号 順号13852 所得税更正処分等取消請求控訴事件」PDF、国税庁税務大学校訴訟資料、https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2023/pdf/13852.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
東京地方裁判所(2022)「税務訴訟資料 第272号 順号13749 所得税更正処分等取消請求事件」PDF、国税庁税務大学校訴訟資料、https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2022/pdf/13749.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
e-Gov法令検索(年不詳)「所得税法」https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033、閲覧日:2026年06月17日。
e-Gov法令検索(年不詳)「国税通則法」https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(2025)「No.1500 雑所得」タックスアンサー、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(2025)「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」タックスアンサー、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(年不詳)「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」質疑応答事例、https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(年不詳)「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」質疑応答事例、https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/41.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(年不詳)「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い」質疑応答事例、https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/40.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁(年不詳)「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」質疑応答事例、https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/43.htm、閲覧日:2026年06月17日。
国税庁 税務大学校(2024)上田正勝「個人における為替差損益の認識とその計上時期について」税務大学校論叢第111号、https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/111/02/02.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
横浜市(2026)「市民税・県民税の申告について」https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/kojin-shiminzei-kenminzei/kojin-shiminzei-shosai/shiminzei-shinkoku.html、閲覧日:2026年06月17日。
大阪市(2025)「令和8年度分 市民税・府民税 申告の手引き」PDF、https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/cmsfiles/contents/0000018/18649/R8tebiki.pdf、閲覧日:2026年06月17日。
楽天証券(年不詳)「米国株式 外国為替取引の確定申告時のお取引確認方法」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/support/tax/details/us-exchange/、閲覧日:2026年06月17日。
SBI証券(年不詳)「外国株式特定口座でのお取引のご注意事項」https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/attention/trading/stock_gai_24.html、閲覧日:2026年06月17日。
マネックス証券(年不詳)「確定申告 必要書類」https://info.monex.co.jp/final-return/report.html、閲覧日:2026年06月17日。
共同通信配信記事掲載ページ(2026)「最高裁『為替差益は所得』 外国通貨取引で初判断」nippon.com、https://www.nippon.com/ja/news/kd1439539378640323081/、閲覧日:2026年06月17日。
毎日新聞(2026)「外国通貨同士の為替差益は『課税対象』 最高裁『法的手当てを』」https://mainichi.jp/articles/20260616/k00/00m/040/297000c、閲覧日:2026年06月17日。

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