6G(IMT-2030)標準化ロードマップ:要件・仕様・実装の最新動向

6G(国際移動体通信2020年以降:IMT-2030)は、2030年前後の実用化を目指し、要件→仕様→実装のロードマップ上で開発が進んでいます。3GPPはリリース20/21において2029年提案・2030年までに仕様完成を計画し、ITUも2027~2029年に技術提案の募集を行い2030年商用化を見込んでいます。技術要件は5Gの延長ではなく、超高速・大容量通信に加え、統合センシング、AIネイティブ、超低遅延、非地上系(衛星/高高度プラットフォーム)とのシームレス連携などが求められています。これらは安全・環境配慮も志向され、社会課題解決や経済成長への貢献が期待されています。本記事では、世界各国の標準化動向と技術開発、国内の政策・事例、経済社会への影響と課題を整理します。

6G(IMT-2030)とは?

6G(第6世代移動通信)は2030年頃の実用化を目指す移動通信システムの総称で、ITUが「IMT-2030」として位置付けています。通信速度は5Gの10倍以上(数百Gbps)となり、端末~コアネットでサブミリ秒遅延を実現する設計です。ただし6Gは単なる速度向上に留まらず、新機能・新用途を柱としています。具体的には、

  • 高没入型通信(Immersive)
    XRやホログラフィック、遠隔多感覚伝送など、マルチメディア・多種センサデータを同期伝送する用途。
  • 超信頼・超低遅延通信(HRLLC)
    産業自動化や緊急医療などミッションクリティカル用途に向け、5G URLLCを超える信頼性と遅延保証を提供する。
  • 大規模接続(Massive IoT)
    何億ものIoTデバイスを低電力で接続し、農業や環境モニタリングなど多種多様な分野を支える。
  • ユビキタス接続(Ubiquitous)
    都市部だけでなく、未カバー地域や衛星・高高度プラットフォーム網との協調で全地球的な通信を目指す。
  • AIネイティブ通信
    ネットワーク内でAI処理・分散学習を実行し、端末・ネットワーク双方で知能化を進める枠組み。
  • 通信とセンシングの融合
    6G基地局・端末がレーダーのように環境・物体をセンシングし、その情報を通信と組み合わせて高度なサービス(自動運転、デジタルツイン、ジェスチャ認識など)を提供する。

これらはITU-R勧告M.2160-0で整理されており、6Gは拡張イマーシブ、超信頼低遅延、大規模接続、ユビキタスコネクティビティ、AI統合通信、センシング通信の6つの利用シナリオに対応するとされています。

世界の動向:標準化と研究開発

標準化スケジュール

ITU-Rでは、6G(IMT-2030)向けの技術提案受け入れを第5工作部会が議論しており、2027年2月から2029年2月の間に国際仕様技術(RIT/SRIT)の提出を受け付ける予定です。これに合わせて3GPP(無線・コア両標準組織)は、リリース20(2024~2025年頃)で6G要件検討を始め、リリース21(2027~2028年頃)で第一版仕様をまとめる計画です。ITUもM.2160-0(2023年11月承認)でIMT-2030のフレームワークを示し、豊かな体験やユビキタスカバレッジ、持続可能性達成などの目標を提示しています。

主要国・地域の取り組み

世界各地で6G研究・実装に向けた動きが加速しています。欧州ではSNS JU(Smart Networks & Services)が2025年末までに合計約6億3,000万ユーロを投じ、デバイス開発やAIモデル訓練、国際協力(インド等)を重視する6G研究を推進。また、EU連合ではNokia主導の6G旗艦プロジェクト「Hexa-X」なども展開中です。

米国では2020年にATISが「Call to Action」を発表し、政府・産業を横断する「Next G Alliance」を設立しました。同協議体は米国主導の6Gロードマップ策定や5G/6G商用化加速を目指し、キャリアやIT企業が参画しています。加えて、FCC(米通信委員会)は95GHz~3THz帯の実験ライセンス付与など、テラヘルツ帯域の研究支援も始まっています。

中国は2019年に「IMT-2030推進グループ」を設立し、2022年には欧州SNS JUと連携協定を締結。HuaweiやZTEなどベンダーが積極的に6G研究・特許出願を行い、WIPO調査では中国の6G特許件数が年率約68%で増加していると報告されています。韓国も「2020年戦略」策定のもとSKT、KT、LG U+が6G実証実験や国際標準化に参画しています。その他、インドや日本も参画し、ITU-Rはグローバル協調を促しています。

技術研究の最前線

研究面では、テラヘルツ帯アンテナ・半導体開発、全光ネットワーク、ネットワークのAI自律化、NTN衛星との連携技術などが主要テーマです。ITU Rec. M.2160-0でも、サステナビリティ重視の設計や電力・資源効率の観点が強調されており、業界でも6Gの省電力化が課題視されています。また、Ericssonは6G時代に向けてモバイルデータ量は2024~2030年に2.5倍増の予測を示し、成長を支える基盤整備の必要性を指摘しています。

日本の現状:政策と事例

日本政府は2020年6月にBeyond 5G(6G)推進戦略を公表し、2030年頃の6G導入を前提に基本方針を定めました。超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続に加え、自律性、拡張性、超安全・信頼性、超低消費電力といった機能要件を挙げています。戦略では2021~2025年を先行的取組フェーズ、2025~2030年を加速化フェーズとし、2025年大阪万博で成果を提示してグローバル展開を図る計画です。2024年には環境変化を受け「Beyond 5G推進戦略2.0」が策定され、AI時代のインフラ整備に重点を置く方針に更新されました。同2.0では、次世代テラヘルツ波・光通信・量子技術など日本の強み分野に資源投入する戦略や、全光ネットワーク(APN)推進による遅延削減などが打ち出されています。

国家プロジェクトとしては、国立研究開発法人NICTが主導する「Beyond 5G/6G研究開発プロジェクト」や、ポスト5G関連技術開発事業(経産省)などが進行中です。また、2020年末には産官学連携組織のBeyond 5G推進コンソーシアムが発足し、企業や大学の共同研究・実証を支援しています。2025年以降の日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、NEC、シャープなど大手企業や研究機関が参画し、積極的な実証実験が行われています。例えば2025年7月、ソフトバンクとノキアは7.125~8.4GHz帯(いわゆるCentimeter波)を使った屋外試験を東京で実施し、5Gとのカバレッジ比較を行いました。同時期にKDDI研究所とSamsungはAI活用によるD-MIMO技術の共同開発協定を結び、将来の高速・広帯域化に向けた取り組みを加速しています。これらの事例から、日本は世界と連携しつつ6G技術の研究開発・社会実装を推進していることが分かります。

経済・社会への影響

6Gの普及は、通信事業者だけでなく社会全体に大きな影響をもたらす可能性があります。ITUはIMT-2030を次世代産業の基盤と位置付け、デジタル経済の成長や社会課題解決を支援すると見ています。具体的には、遠隔医療や自動運転、スマートシティの高度化、教育・労働のデジタル化、農業や環境モニタリングの効率化などが想定されます。6Gによって社会のデジタル包摂(誰一人取り残さない社会)が進み、リモートエリアでも高速通信が利用可能になることで地域格差是正が期待されます。加えて、マクロ経済的には通信インフラの強靱化による産業競争力向上効果、デジタルサービス市場の拡大による雇用創出などが見込まれ、企業・政府はそれらの潜在的経済効果を注視しています。

一方で課題も多くあります。高周波数帯(テラヘルツ帯)の活用には新たな基地局インフラや半導体技術が必要で、設備投資が膨大になります。また、膨大な接続機器やデータ増に対応するにはサーバやネットワークの電力消費・CO2排出も増加する恐れがあり、6G設計には省エネ・環境負荷低減が強く求められています。さらに、新周波数の国際調整(WRC-27でのIMT議題)や規格・製品の国際標準化、プライバシー・安全性への対応も今後の重要課題です。

今後の課題と展望(Q&A形式)

Q1: 6Gは本当に必要か? 既存5Gでは賄えないのか?
A1: 6Gでは特に通信とセンシングの融合や大規模AI処理の統合といった新たな機能が想定されています。しかし、これら技術要件をどこまで商用ユースケースとして育てられるかはまだ不透明で、産業界からは6G時期のユースケースはまだ見えないという意見もあります。一方で、テラヘルツ帯通信や衛星結合通信などは5G Advancedで対応困難であり、新産業創出のためには6Gが必要になるとの見方もあります。今後は研究実証と規格調整を通じて、5G/5G-Advancedの延長線上では難しい革新的用途(例:大規模デジタルツイン、リアルタイム自動車間通信ネットワーク、低軌道衛星網との統合など)が実証されるかが注目点です。

Q2: 実用化スケジュールは?
A2: 3GPPとITUのロードマップでは、6G技術提案は2027~2029年にまとめられ、標準化は2028年頃までに完了する見込みです。商用化は2030年頃と予想されており、検証試験や一部局所導入は2025年以降から始まります。日本では2025年の大阪万博や30年度中の実証試験で成果発表を目標としています。ただし計画は流動的で、国際会議の進捗や技術成熟度によって前倒し・後ろ倒しもあり得ます。

Q3: 6G整備のボトルネックは?
A3: 最大の課題は周波数確保と機器コストです。ITUは5G帯域を超えて100GHz以上(ミリ波・テラヘルツ帯域)も6Gで利用することを視野に入れていますが、高帯域は減衰が大きく基地局密度も増えるため、コストや消費電力面での効率化が求められます。欧米や中国は早くから実験ライセンスを取得し試験を進めていますが、周波数調整は各国・地域で進めねばならず、通信事業者の投資負担も課題です。また、端末や基地局の電力効率も6Gでは死活問題です。ITUも最小限のエネルギーで最大効果を強調しており、AI処理の省電力化やアクティブ/スリープ切り替え技術が必須となります。

Q4: 日本企業の立場は?
A4: 通信機器のグローバルシェアで日本企業は低めですが、半導体素材や光技術では強みがあります。日本政府は標準化での存在感確保を目指し、NICTの公的研究を通じて技術主導権獲得を図っています。企業はNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが海外ベンダーと連携し国際標準化での技術提案を強化しています。特に、6Gの鍵となるTERAHERTZ半導体材料や光通信技術では国内メーカーが世界をリードする可能性があります。6G時代では、産官学連携で要素技術を磨きつつ、海外標準化会議で技術貢献する姿勢が重要となるでしょう。

Q5: 未来像と読者への提言は?
A5: 6GはSociety5.0の実現に向けた基盤技術として位置づけられ、誰もが高度ICTサービスを享受できる社会づくりを支援する期待があります。読者の皆さんにできることは、身近なデジタル化と課題(例えばリモート医療、防災、教育)の状況を注視し、6Gで何が実現できるかを思い描くことです。現状では未確定要素も多いため、報道や解説を鵜呑みにせず、例えば政府広報や総務省資料(Beyond 5G推進戦略等)を参考にしながら情報をアップデートしてください。また、通信サービス利用者の視点からは、省エネ機能の活用や6G期待値の共有を進めることで、技術開発の社会要望を支えることができます。

結論

6G(IMT-2030)は、2030年前後の商用化を見据え、既に「要件→仕様→実装」の計画が始まっています。超高速だけでなく、通信とセンシングの融合、AI統合、超低遅延、衛星連携など新たな機能による産業革新が目指されます。各国とも標準化・研究開発を競う中、日本は独自の技術で世界に貢献する姿勢を取っています。読者の皆さんは、この先端テーマを理解し将来のIT社会をどう使うか考えることで、社会実装に向けた環境づくりの一助となり得ます。Beyond 5G/6G推進戦略や各企業の動向を参考に、最新情報にアンテナを張ってください。

参考

  • 3GPP (2024) Release 20 – 3rd Generation Partnership Project. 3gpp.org (参照2026-02-20).
  • ITU-R (2023) Recommendation ITU-R M.2160-0: Framework and overall objectives for the future development of IMT for 2030 and beyond (IMT-2030). ITU Radiocommunication Sector (参照2026-02-20).
  • Smart Networks and Services Joint Undertaking (SNS JU) (2025) SNS JU R&I Work Programme 2026 Released. EU Commission News (参照2026-02-20).
  • IEEE ComSoc Technology Blog (2026) IMT-2030 (6G)提案に向けたITU-Rの評価枠組み・要件ガイドライン(仮訳). IEEE ComSoc TechBlog (参照2026-02-20).
  • Impress SmartGridForum (2023) 日本における6Gの取り組み. Impress (参照2026-02-20).
  • T&Mコーポレーション (2024) Beyond 5G推進戦略2.0. 技術資料 (参照2026-02-20).
  • Ericsson AB (2023) 6G – Follow the journey to the next generation networks. Ericsson.com (参照2026-02-20).
  • Telecom Review Asia (2025) Japan’s Telecom Strategies for a Connected Future. Telecom Review Asia (参照2026-02-20).

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